檜皮和洋(ひわだ かずひろ)から刀根理子(とね りこ)への手紙

文字数 461文字

拝啓
 桜満開の季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
 先日は何の挨拶もなく四十万(しじま)町と私立勿来(なこそ)高校を離れることになってしまい、本当に申し訳なく思っています。
 それだけに、理子さんの手紙がいかにもラブレターという体裁で(封印にハートのシールというのはベタすぎます)、転学者には不要の学校紹介パンフレットに入っていたことはたいへんに驚きましたが、読んでみて理由がすぐに納得できました。
 お察しのとおり、この僕、檜皮和洋は普通の人間ではありません。
 思えば町内にある私立勿来高校に2年生として転校してきたのは3月の末。それからせいぜい2週間で、一度も登校しないまま再び転校することになったこと自体、まともではありません。(まあ、慣れてはいますが)
 だからこそ、正直に書きます。隠していても仕方ないので。再び会うこともないでしょうから。(手紙でよかった……)
 あなたと過ごしたこの時間を、忘れないでいようと思います。
 たぶん、僕は呑み込みの悪いバカとしか思われていなかったでしょうけど。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、重大な決断からはつい逃げてしまう。

 しかし、追い詰められたときに発する力は、大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、心のうちには自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いが秘められている。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、年長者にも妥協しない。

 物静かだが。判断は早く、行動力にあふれている。時機を捉えれば、最小限の手間でやるべきことをやり遂げる

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