流浪の宿命

文字数 513文字

 だから、僕たち言霊使いは、雨を操れる人ならばその言葉を避けることができます。ただし、どうしても会話が不自然になったり、無口になったりしがちです。
 それが嫌な人は、敢えて「雨男」の汚名を着て、行楽シーズンなどは爪はじきに甘んずるのですが、それはまだいいほうです。
 湿気を招き寄せたり、風で砂ぼこりや海の波を立てたり、僕のように雷を落としたりと言った人たちは、仮に事故を起こさなくても言葉遣いや立ち居振る舞いを気味悪がられ、転居を余儀なくされるのです。
 とにもかくにも、これで「僕が自分の非を認めて充分に反省した」という状態になりました。僕はこれまでの経験から、父の説教は終わったものと判断し、痺れる足をこらえて立ち上がりましたが、今回の話にははまだ続きがあったのです。
「お前は何も分かっとらん!」
 一喝されて再び着座した僕は、父のまなざしがいつになく厳しいのを感じました。
 こんな目で見つめられるときは、たいてい僕が致命的な失敗をやらかしたときです。
 つまり、言霊で人を傷つけてしまったとき。これは、身体の傷に限りません。心や、立場なども含みます。
 そんなわけで、僕も神妙な気持ちになって父の叱責を待ちました。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、重大な決断からはつい逃げてしまう。

 しかし、追い詰められたときに発する力は、大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、心のうちには自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いが秘められている。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、年長者にも妥協しない。

 物静かだが。判断は早く、行動力にあふれている。時機を捉えれば、最小限の手間でやるべきことをやり遂げる

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