少女の抱える哀しみ
文字数 599文字
止せばいいのに、身内の気安さで、つい余計なことを言ってしまいました。
「来年は有馬に来るんじゃない?」
樫井豹真は急に背中を向けて言いました。
「刀根理子の親父は勿来高校の理事だぞ、どうでもいいが」
僕は「へえ」というしかありませんでした。本当にどうでもいいことだったのです。むしろ、続く言葉のほうが問題でした。
「くれぐれも言っとくが俺たちの力は、隠すことなんかない。見るに堪えないから止めてやったけど、次はやれよ」
さらに、公民館の戸に手を掛けながら付け加えたのは、これです。
「こないだ持ってた入学案内見たら、県庁所在地にある進学校のだったぞ」
そこで入れ替わりに理子さんがやってきたので僕たちの会話は途切れましたが、あの後に掛け合いをやってみたんでしたね。
もちろん、さんざんだったと思っています。
「早うやって早う終わっとくれん? 受験生やもん、私」
町内会長さんにそう言っていた理子さんですが、僕が大人から何度ダメ出しをされても、自分の番が来ないことに表情も変えず、ずっと同じところに立っていましたが、余計なことは何一つ、冗談はおろか不平不満さえも言いませんでした。
お囃子のCDを流すプレイヤーのボタンを押す樫井豹真はと見れば、その指にムダな力が入り、デッキを壊すのではないかとさえ思われました。
始めさもらへ、始めさもらへ、日御子の宣らしたまふや、汝 ……
「来年は有馬に来るんじゃない?」
樫井豹真は急に背中を向けて言いました。
「刀根理子の親父は勿来高校の理事だぞ、どうでもいいが」
僕は「へえ」というしかありませんでした。本当にどうでもいいことだったのです。むしろ、続く言葉のほうが問題でした。
「くれぐれも言っとくが俺たちの力は、隠すことなんかない。見るに堪えないから止めてやったけど、次はやれよ」
さらに、公民館の戸に手を掛けながら付け加えたのは、これです。
「こないだ持ってた入学案内見たら、県庁所在地にある進学校のだったぞ」
そこで入れ替わりに理子さんがやってきたので僕たちの会話は途切れましたが、あの後に掛け合いをやってみたんでしたね。
もちろん、さんざんだったと思っています。
「早うやって早う終わっとくれん? 受験生やもん、私」
町内会長さんにそう言っていた理子さんですが、僕が大人から何度ダメ出しをされても、自分の番が来ないことに表情も変えず、ずっと同じところに立っていましたが、余計なことは何一つ、冗談はおろか不平不満さえも言いませんでした。
お囃子のCDを流すプレイヤーのボタンを押す樫井豹真はと見れば、その指にムダな力が入り、デッキを壊すのではないかとさえ思われました。
始めさもらへ、始めさもらへ、日御子の宣らしたまふや、