真摯な助言
文字数 593文字
理子さんの言う「特訓」のポイントは、もっともなことでした。相手が僕でなかったら、たいてい上手くいくだろうと思います。
「檜皮さんは、必ず同じ言葉を間違えます。間違えるから、違う言葉でごまかそうとするんですよね」
当たらずとも遠からず、でした。後半だけ当たってましたから。
「私、思うんですけど、その言葉を言おう言おうとして構えるから、かえって間違えちゃうんじゃないでしょうか」
そう受け取られていたなら、たいへん望ましいことです。言霊使いが人の中で生きていくのに肝心なのは、不自然な行動や現象にどうやって理由をつけるかということですから。
さらに、理子さんのアイデアは目の付け所もさるところながら、その方法も独創的でした。
「ですから、その言葉が口グセになればいいんじゃないか、と思うんです。意識するのが原因なんですから、無意識のうちに声が出ればいいんです」
ゆっくり話したのは、僕があまり賢くない、という配慮からだと思います。もしかするとバカにされていたのかもしれませんが、いい思い出のほうを取っておきます。
さて、そこで唐突に理子さんが言い出したのは、これでした。
「どんな曲が好きですか?」
これには僕もちょっと戸惑いました。話が飛躍しすぎていたからです。しかも、声を低めて尋ねられたので、僕が知らないうちに何か悪いことでもしているかのような錯覚にとらわれました。
「檜皮さんは、必ず同じ言葉を間違えます。間違えるから、違う言葉でごまかそうとするんですよね」
当たらずとも遠からず、でした。後半だけ当たってましたから。
「私、思うんですけど、その言葉を言おう言おうとして構えるから、かえって間違えちゃうんじゃないでしょうか」
そう受け取られていたなら、たいへん望ましいことです。言霊使いが人の中で生きていくのに肝心なのは、不自然な行動や現象にどうやって理由をつけるかということですから。
さらに、理子さんのアイデアは目の付け所もさるところながら、その方法も独創的でした。
「ですから、その言葉が口グセになればいいんじゃないか、と思うんです。意識するのが原因なんですから、無意識のうちに声が出ればいいんです」
ゆっくり話したのは、僕があまり賢くない、という配慮からだと思います。もしかするとバカにされていたのかもしれませんが、いい思い出のほうを取っておきます。
さて、そこで唐突に理子さんが言い出したのは、これでした。
「どんな曲が好きですか?」
これには僕もちょっと戸惑いました。話が飛躍しすぎていたからです。しかも、声を低めて尋ねられたので、僕が知らないうちに何か悪いことでもしているかのような錯覚にとらわれました。