最初の対決
文字数 615文字
僕もすぐに帰ろうかと思ったのですが、そこで声をかけてきたのは、樫井豹真でした。
「ちょっと顔貸せ」
相変わらず、彼はぶすっとしていました。
本当は帰りたかったのですが、ここで断ると後を引きそうだという判断が勝ち、「昼飯前に済む用事なら」と条件を付けて、ついていきました。
着いた先は、公民館からだいぶ離れたところにある、山肌を削った採石場でした。
人家のあるところなどとうになく、あるのは舗装もされていない道と、ごろごろ転がる大きな岩だけです。
どう考えても関係者以外立ち入り禁止の場所です。
うすぼんやりと晴れた空の下で、僕たちは乾いた砂を踏みしめ、向かいあって立ちました。
場所的にも雰囲気的にも、昼食は遅くなりそうでした。
そこで僕は、とりあえず謝っておくことにしたのです。
「悪かったよ、代わってもらって」
しかし、豹真の怒っていたポイントは、そこではありませんでした。
「やれって言ったろう」
僕が祝詞を上げなかったことを言っているのです。
それは無理だ、と僕はさいぜんから言っていることを繰り返しました。
この力を人に知られたら、また引っ越さなければいけません。まるで趣味であるかのように。
父は転職三日目で、辞表を出さなくてはなりません。根性なしの新入社員でもないのに。
しかし、豹真にとってそんなことは知ったことではありません。
彼は、僕に言霊使いのプライドがないと思っているのです。
「ちょっと顔貸せ」
相変わらず、彼はぶすっとしていました。
本当は帰りたかったのですが、ここで断ると後を引きそうだという判断が勝ち、「昼飯前に済む用事なら」と条件を付けて、ついていきました。
着いた先は、公民館からだいぶ離れたところにある、山肌を削った採石場でした。
人家のあるところなどとうになく、あるのは舗装もされていない道と、ごろごろ転がる大きな岩だけです。
どう考えても関係者以外立ち入り禁止の場所です。
うすぼんやりと晴れた空の下で、僕たちは乾いた砂を踏みしめ、向かいあって立ちました。
場所的にも雰囲気的にも、昼食は遅くなりそうでした。
そこで僕は、とりあえず謝っておくことにしたのです。
「悪かったよ、代わってもらって」
しかし、豹真の怒っていたポイントは、そこではありませんでした。
「やれって言ったろう」
僕が祝詞を上げなかったことを言っているのです。
それは無理だ、と僕はさいぜんから言っていることを繰り返しました。
この力を人に知られたら、また引っ越さなければいけません。まるで趣味であるかのように。
父は転職三日目で、辞表を出さなくてはなりません。根性なしの新入社員でもないのに。
しかし、豹真にとってそんなことは知ったことではありません。
彼は、僕に言霊使いのプライドがないと思っているのです。