巫女の哀しみ
文字数 626文字
幼い頃は何とも思いませんでしたが、年月が立つほどに、他の子供たちとの違いを感じるようになりました。
言霊というものを使う人がこの町にいたらしいということも母から聞きましたが、いつのことかも分かりませんでしたし、そもそも互いに関わるものではないと言われてもいたので、気にすることもなく、ひたすら母に従って、この家に伝わる業を学んできたのです。
仲間と遊ぶこともせず、母について山を歩き、川に沿って歩き、たまに海に行けば人目につかないところで水を浴びて天に向かって叫ぶ……。
そうすることで、私の体の中には自然の動きと共にある泣き笑いが生まれてきました。
この町を出て、母から、家から離れれば、そんな思いをしなくても済むかと思うようになりました。それを実現するためには、母に物を言わせるわけにはいきません。
私は、神楽を完全に仕上げて、その上で家を離れるのを主張しようと考えていたのです。
私の、私だけの、かけがえのない心を解き放つために。
想像もつかないことかと思いますが、これは恐ろしいことでもあります。
私が自然と共にあるということは、自然が私と共にあるということでもあるからです。
自然の変化は私の感情を豊かにしてくれますが、私の感情は自然を豊かにはしません。
私が笑えば山も笑い、草花も芽吹くかもしれませんが、怒り、泣けばそれらは枯れ果ててしまうかもしれません。
それに気づいたとき、私は泣き、また笑うことをやめました。
言霊というものを使う人がこの町にいたらしいということも母から聞きましたが、いつのことかも分かりませんでしたし、そもそも互いに関わるものではないと言われてもいたので、気にすることもなく、ひたすら母に従って、この家に伝わる業を学んできたのです。
仲間と遊ぶこともせず、母について山を歩き、川に沿って歩き、たまに海に行けば人目につかないところで水を浴びて天に向かって叫ぶ……。
そうすることで、私の体の中には自然の動きと共にある泣き笑いが生まれてきました。
この町を出て、母から、家から離れれば、そんな思いをしなくても済むかと思うようになりました。それを実現するためには、母に物を言わせるわけにはいきません。
私は、神楽を完全に仕上げて、その上で家を離れるのを主張しようと考えていたのです。
私の、私だけの、かけがえのない心を解き放つために。
想像もつかないことかと思いますが、これは恐ろしいことでもあります。
私が自然と共にあるということは、自然が私と共にあるということでもあるからです。
自然の変化は私の感情を豊かにしてくれますが、私の感情は自然を豊かにはしません。
私が笑えば山も笑い、草花も芽吹くかもしれませんが、怒り、泣けばそれらは枯れ果ててしまうかもしれません。
それに気づいたとき、私は泣き、また笑うことをやめました。