樫井豹真(かしい ひょうま)から刀根理子(とね りこ)への手紙

文字数 234文字

 ここに、一枚の手紙がある。
 ついさっき、街を去ろうとしているひとりの小柄な少年が、春の朝靄の中で、そんなに背丈の違わないひとりの少女に手渡したものである。
 少年が俯き加減に走り去った後、数寄屋造りの古風な屋敷の娘らしい少女は、鋲を打った大きな門に恐る恐る振り向くや、人通りのないのを確かめながら、手紙の封を切ったのだった。
 その幼さを残した白い指が開いた手紙には、1行だけ、こう書いてあった。
「あいつをどう思ってるか知らないが、いなくなったら一生、後悔する」
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、重大な決断からはつい逃げてしまう。

 しかし、追い詰められたときに発する力は、大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、心のうちには自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いが秘められている。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、年長者にも妥協しない。

 物静かだが。判断は早く、行動力にあふれている。時機を捉えれば、最小限の手間でやるべきことをやり遂げる

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