第60話

文字数 842文字

米田くんと長谷川くんが、三宮から戻って来ました。
そして今週末、長谷川くんは一足先に知覧に行きます。

「昴、浩二。お願いがある。」
「?」
「どうしたん?」
「ここで過ごす最後の日は、莉子と2人きり過ごしたい。」
「せやな。莉子ちゃんと過ごしたって。」

私も、最後の日は松本さんとゆっくり過ごして欲しい。と心から思います。

「ありがとう…!!」
「でもどこで過ごすん?2人きりで一晩過ごせる場所って無くないか?」
「あっ」
「??昴?」

この時、以前高橋曹長が言っていた
“物置以外の使い方”がわかったかも知れません。

「最近、物置の管理を任されたんよ。」

落ちない様にしっかりと服に付けていた鍵を取り出します。

「これ、当日長谷川くんに渡すね。
2人が帰省している間に掃除したから、
埃っぽさはあまりないと思う。見に行く?」
「ああ。」

3人で物置がある場所に向かいました。

「ちょっと狭いと思うけど、2人で寝る場所は作れそうかな。」
「ここなら、あんまり人は通らないやろうし、ゆっくり過ごせるんちゃう?」
「せやね。ちょっと物を移動させて、
布団を敷く場所を作るわ。」
「俺もやる。」

ふと振り返ると、長谷川くんが涙を堪えていました。

「長谷川くん?」
「…っ、ありがとう…!俺達の為に、ここまでしてくれて…っ!!」
「そんなん、当たり前やん!」

米田くんが、長谷川くんの肩に腕を回しました。

「そうだよ!親友やもん。
願いを叶えてあげたいのは当たり前だよ!」
「昴…浩二…!!」

長谷川くんは、私と米田くんを抱き締めました。

「ありがとう…っ、ありがとう…!!」

私と米田くんも、長谷川くんを抱き締めました。涙脆い私は、思わず貰い泣きしてしまいました。

「…すまない。作業を始めようか。」



そして、知覧に行く前日の夜。
長谷川くんに鍵を渡しました。

「部屋に戻って来た時に返してね。」
「ああ。ありがとう…!」
「田中さん、浩二くん。本当にありがとう…!!」
「じゃあ、行こうか。莉子」
「うん。」

長谷川くんは松本さんの肩を抱き、
2人は物置の中に入って行きました。
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