第31話
文字数 1,053文字
「その子はどんな子なん?」
「優しくてしっかり者で可愛くて…
絵がとても上手で、素敵な女性だよ。」
「そう。」
「いつか彼女と…結婚したいと思ってる。」
「今度、その子を連れて来て頂戴ね。」
「うん。」
◇
翌日、家の手伝いをしながら、
母と妹と一緒に過ごしました。
久し振りにゆっくり休むことが出来た気がします。
そして、今日は三宮に向かいます。
やっと…紗和さんに会う事が出来ます…!!
「昴。どうか気を付けて。」
「うん。」
「お兄ちゃんが留守の間は任せて!!」
「おぉ!頼もしくなったなぁ!晴子!」
「だから安心して行って来てね!!」
「ありがとう。行ってきます!」
◇
三宮に着きました。
「……」
分かっていた事ですが、空襲で多くの家や建物が焼けていました。
私が通っていた学校も焼けてしまっていましたが、他の家や建物に比べると造りが丈夫だったのか、形は残っていました。
手紙によると、以前暮らしていた家は焼けてしまったとの事なので、少し離れた所で暮らしている様ですが…。
「住所によると…ここか。」
何か話し声が聞こえます。
◇
ノックをしても、反応がありません。
「すみません!昴です!!」
呼び掛けると、暫くすると綺麗な着物を着たおかみさんが扉を開けてくれました。
「昴くん、久し振りやね!」
「はい。お久し振りです。
…あの…、何かおめでたい事があったんですか?」
「あぁ…、浩二くんからは聞いてないのね。
その、ね…。」
「??」
「紗和ね、今お見合い中なんよ。」
「!!!」
「だから、ちょっと待っていて頂戴ね。」
「………はい。」
おかみさんに案内された部屋まで、
話し合いの声が聞こえます。
ですが、何を話しているのかまでは聞き取れなくて…
私は聞き耳を立てました。
『私なら、紗和さんの夢を叶えてあげられる。それに私の別荘は兵庫の綺麗な山奥にある。ここにいるよりも、空襲の危険は少ないと思うんだが。』
『…私は、もう夢は諦めました。』
『君の絵を何枚か見せてもらった。
夢を諦めるなんて、勿体ないじゃないか。』
「(確かに、この人の言う通りだ。
でも…)」
『…添い遂げたい相手がいるんだって?
確か彼は軍人だったか。』
『…はい。だから、あなたとは結婚しません。帰って下さい!!』
『せやで兄ちゃん!!紗和ちゃんは最初からあんたと結婚する気は無いって…』
『紗和さん、未亡人にはなりたくないだろう?』
この人は、遠回しに
“そんないつ死ぬか分からない相手より、
自分を選んだ方が良い”
と言いたいのでしょう。
「………」
何も反論出来なくて、悔しくて、
壁を思い切り叩いて部屋を飛び出しました。
「優しくてしっかり者で可愛くて…
絵がとても上手で、素敵な女性だよ。」
「そう。」
「いつか彼女と…結婚したいと思ってる。」
「今度、その子を連れて来て頂戴ね。」
「うん。」
◇
翌日、家の手伝いをしながら、
母と妹と一緒に過ごしました。
久し振りにゆっくり休むことが出来た気がします。
そして、今日は三宮に向かいます。
やっと…紗和さんに会う事が出来ます…!!
「昴。どうか気を付けて。」
「うん。」
「お兄ちゃんが留守の間は任せて!!」
「おぉ!頼もしくなったなぁ!晴子!」
「だから安心して行って来てね!!」
「ありがとう。行ってきます!」
◇
三宮に着きました。
「……」
分かっていた事ですが、空襲で多くの家や建物が焼けていました。
私が通っていた学校も焼けてしまっていましたが、他の家や建物に比べると造りが丈夫だったのか、形は残っていました。
手紙によると、以前暮らしていた家は焼けてしまったとの事なので、少し離れた所で暮らしている様ですが…。
「住所によると…ここか。」
何か話し声が聞こえます。
◇
ノックをしても、反応がありません。
「すみません!昴です!!」
呼び掛けると、暫くすると綺麗な着物を着たおかみさんが扉を開けてくれました。
「昴くん、久し振りやね!」
「はい。お久し振りです。
…あの…、何かおめでたい事があったんですか?」
「あぁ…、浩二くんからは聞いてないのね。
その、ね…。」
「??」
「紗和ね、今お見合い中なんよ。」
「!!!」
「だから、ちょっと待っていて頂戴ね。」
「………はい。」
おかみさんに案内された部屋まで、
話し合いの声が聞こえます。
ですが、何を話しているのかまでは聞き取れなくて…
私は聞き耳を立てました。
『私なら、紗和さんの夢を叶えてあげられる。それに私の別荘は兵庫の綺麗な山奥にある。ここにいるよりも、空襲の危険は少ないと思うんだが。』
『…私は、もう夢は諦めました。』
『君の絵を何枚か見せてもらった。
夢を諦めるなんて、勿体ないじゃないか。』
「(確かに、この人の言う通りだ。
でも…)」
『…添い遂げたい相手がいるんだって?
確か彼は軍人だったか。』
『…はい。だから、あなたとは結婚しません。帰って下さい!!』
『せやで兄ちゃん!!紗和ちゃんは最初からあんたと結婚する気は無いって…』
『紗和さん、未亡人にはなりたくないだろう?』
この人は、遠回しに
“そんないつ死ぬか分からない相手より、
自分を選んだ方が良い”
と言いたいのでしょう。
「………」
何も反論出来なくて、悔しくて、
壁を思い切り叩いて部屋を飛び出しました。