第40話
文字数 1,085文字
米田くんと長谷川くんが私の部屋に引越してから、松本さんも時々私の部屋に来る事になりました。
長谷川くんの怪我は、ほぼ寛解してはいますが、念の為様子を見るために…。
と言うのは表向きの理由で、
本当は少しでも長く、長谷川くんと一緒にいたいのでしょう。
気持ちはとても分かります。
「浩二くんも田中さんも、体調が悪かったり怪我をしたりしたら言ってね!」
「ありがとう。」
「頼りにしてるで!!」
◇
今日、私が所属している部隊に、
新しい兵士が来ました。
「本日よりここに配属になりました。
甲斐恭介です。
階級は一等兵であります。」
甲斐くん。歳は私より3つ歳下でした。
それぞれ自己紹介を終え、高橋曹長が甲斐くんに尋ねました。
「甲斐。お前もしかして、“宗介”って兄貴がおったりせんか?」
「高橋曹長、甲斐くんと知り合いなんですか?」
「俺の友人に甲斐伍長と言う、とても優秀なパイロットがおったんや。
雰囲気が似ている気がしてな…。」
「はい。甲斐宗介は僕の兄です。
真珠湾攻撃で、立派に戦い、亡くなりました。
まさか兄の事を知っている方とお会い出来るとは。」
「甲斐一等兵。あまり負担になり過ぎる事は言いたくないが、お前には期待している。
精一杯励む様に。」
「はっ!!」
甲斐くんの敬礼に、私達は答礼しました。
◇
「田中伍長!休憩中にお時間宜しいでしょうか。」
「構わへんよ。どうしたん?」
休憩中に甲斐くんに声を掛けられました。
「ここに来る前、僕は名古屋の方にいたのですが、田中伍長のお噂はかねがね伺っております。」
「噂?」
「はい。『あの絶体絶命の状態で、殆ど負傷もなく生き残った伝説のパイロット』だと。」
「何それ?そんな伝説があるの?」
高橋曹長もここに来たばかりの時にも似た様な事を言っていました。
まさか甲斐くんまで知っているとは。
「あれは…たまたま味方の船の近くに落ちて、海軍の皆さんが助けてくれたからであって…。」
上田兵曹長、お元気にしているでしょうか…。
あの頃のお礼と、昇進の報告がしたいです。
「ですが、海軍の船の近くに落ちなかったら、助けれるものも助けられない筈です。
歴史上の戦いでも、“たまたま天気が悪かったから敵の攻撃を防げた”
という出来事もありますし。
運が味方してくれた事、もっと誇っても良いのではないでしょうか。」
「そういうもんなんかなぁ。」
「はい!」
自分は然程優秀では無いのに生き残ってしまったパイロットだと思っていたのですが、
甲斐くんの笑顔を見て、
もう少し自分の実力に自信を持っても良いのかな。
と思える様になりました。
それに、自分がやった事で、誰かが笑顔になるのなら、それはとても嬉しい事ですもんね。
長谷川くんの怪我は、ほぼ寛解してはいますが、念の為様子を見るために…。
と言うのは表向きの理由で、
本当は少しでも長く、長谷川くんと一緒にいたいのでしょう。
気持ちはとても分かります。
「浩二くんも田中さんも、体調が悪かったり怪我をしたりしたら言ってね!」
「ありがとう。」
「頼りにしてるで!!」
◇
今日、私が所属している部隊に、
新しい兵士が来ました。
「本日よりここに配属になりました。
甲斐恭介です。
階級は一等兵であります。」
甲斐くん。歳は私より3つ歳下でした。
それぞれ自己紹介を終え、高橋曹長が甲斐くんに尋ねました。
「甲斐。お前もしかして、“宗介”って兄貴がおったりせんか?」
「高橋曹長、甲斐くんと知り合いなんですか?」
「俺の友人に甲斐伍長と言う、とても優秀なパイロットがおったんや。
雰囲気が似ている気がしてな…。」
「はい。甲斐宗介は僕の兄です。
真珠湾攻撃で、立派に戦い、亡くなりました。
まさか兄の事を知っている方とお会い出来るとは。」
「甲斐一等兵。あまり負担になり過ぎる事は言いたくないが、お前には期待している。
精一杯励む様に。」
「はっ!!」
甲斐くんの敬礼に、私達は答礼しました。
◇
「田中伍長!休憩中にお時間宜しいでしょうか。」
「構わへんよ。どうしたん?」
休憩中に甲斐くんに声を掛けられました。
「ここに来る前、僕は名古屋の方にいたのですが、田中伍長のお噂はかねがね伺っております。」
「噂?」
「はい。『あの絶体絶命の状態で、殆ど負傷もなく生き残った伝説のパイロット』だと。」
「何それ?そんな伝説があるの?」
高橋曹長もここに来たばかりの時にも似た様な事を言っていました。
まさか甲斐くんまで知っているとは。
「あれは…たまたま味方の船の近くに落ちて、海軍の皆さんが助けてくれたからであって…。」
上田兵曹長、お元気にしているでしょうか…。
あの頃のお礼と、昇進の報告がしたいです。
「ですが、海軍の船の近くに落ちなかったら、助けれるものも助けられない筈です。
歴史上の戦いでも、“たまたま天気が悪かったから敵の攻撃を防げた”
という出来事もありますし。
運が味方してくれた事、もっと誇っても良いのではないでしょうか。」
「そういうもんなんかなぁ。」
「はい!」
自分は然程優秀では無いのに生き残ってしまったパイロットだと思っていたのですが、
甲斐くんの笑顔を見て、
もう少し自分の実力に自信を持っても良いのかな。
と思える様になりました。
それに、自分がやった事で、誰かが笑顔になるのなら、それはとても嬉しい事ですもんね。