第15話

文字数 1,098文字

【紗和目線の物語④】

莉子ちゃんもどうやら、呉に派遣される事になったそうです。

「進さん達は知ってるん?」
「進さんだけは知ってる。」
「そう…。」
「進さん、最初は微妙な顔をしていた。
『莉子が危険な所に行くのは嫌だ』
って。でも、私も進さんみたいにお国の為に戦いたいの。
軍人にはなれないから、看護婦として。」
「莉子ちゃん…。」
「そしたらね、『俺達は、似た者同士だな』
って、進さんが笑っててん。」

姉弟の様に育った浩二くん
親友の莉子ちゃん
そして…
初めて心から好きになった昴さん。
みんな戦争に行ってしまう…!
戦争は、私の大切な人達を奪ってしまう…!!

「じゃあ、準備もあるし、そろそろ行くね。」
「…うん…。」



「莉子。気を付けて行って来るんやで…!!」

莉子ちゃんが出発する当日。
私は莉子ちゃんのお母さんと、
お見送りをする事にしました。

「分かったよ。お母さん。」
「莉子ちゃん、絶対帰って来てね…!!」
「うん!」

莉子ちゃんは汽車に乗りましまた。
私は、汽車が見えなくなるまで、ずっと汽車を見つめていました。



莉子ちゃんを見送った後、次は昴さん達の番です。
昴さんは私に、出発の1時間前に
秘密の場所に来てと言われました。

「紗和さん、来てくれてありがとう。」
「うん。…」
「出発前に、どうしても2人きりになりたかってん。」


昴さんは、可愛らしい男の子のぬいぐるみをくれた。

「これ…、昴さんが作ったの?」
「うん。」
「可愛い…。」
「このぬいぐるみを僕だと思って欲しい。」

昴さんにちょっと似ているぬいぐるみを、
ギュッと抱き締めた。

「昴さん、私のお願いを聞いてくれる…?」
「聞けることなら。」
「口付けを、して欲しいの。」
「…うん。」

昴さんの唇が、そっと重なります。
本来ドキドキする事なのに、今は悲しくて仕方がないです。

「………」

唇を離すと、昴さんも涙を流していました。

「紗和さん、どうか…
どうか、お元気で…!」


「ねぇ昴さん。これから言うことは、
私の独り言やから。」
「うん」
「昴さん、私、ずっと待ってるから…。
だから、生きて帰って来て…。」
「………」
昴さんは何も言わず、ただ私を抱き締めました。



とうとう、出発の時間となってしまいました。
軍人さんがズラっと並んでいます。

「紗和、辛いけど、泣いたらアカンで。」
「………うん…。」

「よし、では出発!!」

「(昴さん!!)」

昴さんを見付けて、旭日旗を振ります。

「!!」

私に気が付いてくれました。
旗を振る私に、敬礼で返してくれました。

昴さんの背中を見ながら、私は思いました。
昴さんと離れ離れになるのは戦争が原因なのに、戦争があったから、昴さんと出会えただなんて。
あぁ…。何て皮肉なんでしょう…。
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