第63話

文字数 693文字

「松本の顔を見てみろ。今まで色んな人の死に顔を見て来たが、ここまで穏やかなのは初めてかも知れん。」
「はい…本当に…。莉子ちゃん…!」

明日の命が保証されないこの世の中。
自分が望む生き方と死に方が出来る事は幸せなのかも知れません。
きっと今頃、長谷川くんと天国で再会しているのでしょう。

「?」

ふと目をやると、足元に彼女が大事に持っていた箱が、蓋が開いた状態で落ちていました。

「(多分、あの時長谷川くんが松本さんに渡した物って、遺品ではなく手榴弾だったんかな…。)」

綺麗に梱包されていたから、気が付きませんでした。

「…甲斐くん、担架を取りに行こう。」
「はい。」



長谷川くんと松本さんを同時に失って、
私も米田くんも気持ちが沈み、口数が減っていました。

「……」

米田くんは、呉に向かう前に撮った写真と、絵を見詰めていました。

「米田くん、その絵は…」
「8歳ぐらいの頃に紗和ちゃんが描いてくれた絵や。」

画用紙には、笑っている子供が3人います。
右から紗和さん、米田くん、松本さんでしょう。
紗和さん…。やはり子供の頃から絵がとても上手です。

「実はな、莉子ちゃんに進の訃報を黙っておこうと思ったりもしてん。」
「うん…」
「でもな、例え俺があそこで黙ってたとしても、どこかで絶対情報が入ると思ってん。」
「せやね…。それに、米田くんを信頼しているから、お願いしたんやと思うよ。」
「そう、かな…。いや、俺もそう思う。」
「米田くん。今日はもう休もう。」
「…ああ。そうするわ…。」

大切な友人を2人同時に失った日の夜は、
中々寝つけませんでした。

「……」

米田くんも、何度も寝返りを打っています。
彼も中々寝付けないのでしょう。
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