第22話

文字数 955文字

「田中。来週から新しく移動になる者が来る。」

川本曹長に呼び出され、来週から新しく呉に派遣される人物の話を聞きました。

「私の後輩なんだが、田中は確か…
兵庫出身だったか。」
「はい。」
「それなら、同じ関西人同士、気が合うかも知れんな。
あいつは真珠湾攻撃で大活躍した、
とても優秀なパイロットだ。
沢山学べる事があるだろう。」

一体どんな人なんでしょうか。

そして、その日が来た。

「この度、呉に配属された高橋翔吾だ。
階級は軍曹。」
「田中昴です。階級は兵長です。
よろしくお願いします。」
「お前か?ミッドウェー海戦で奇跡の生還を果たしたパイロットは。」
「そんな風に言われてるんですか?」

いつの間にか他の基地でも有名になっていたらしいです。

「いやぁ、あの状況で生き延びるとは
ほんま凄いわぁ。」
「運が良かっただけですよ。」
「運も実力のうちや!胸張り。」
「あ…、ありがとうございます。」

何でしょうか…
初めて会ったのに、高橋軍曹と一緒にいると、気持ちが明るくなります。

「いやぁそれにしても。」
「?」
「川本曹長から聞いたんやけど、田中。
お前も関西出身なんやってな!」
「はい。兵庫です。」
「見知らぬ土地にいきなり配属になって、
どうなるもんかと心配やったけど、
ちょっと安心したわ。ありがとうなぁ!!」
「こちらこそ!」



私は、白川くんのお墓に向かいました。
遅くなりましたが、昇進の報告をする為にです。
それと、直属の上司の報告としないといけませんね。

「あれ?」

白川くんのお墓には、既に人がいました。

「松本さん?」

松本さんが、白川くんのお墓にお花をお供えしてくれていました。

「田中さん!」
「お花をお供えしてくれたんや。」
「うん。何色が好きか分からへんかったから、白川さんの苗字から、白色の花にしてん。」
「そうかぁ。…うん、白川くん、すっごく喜んでるよ!」

松本さんは、空いた時間を使って、
亡くなった兵士のお墓の掃除やお花のお供え等をしている様です。

「皆さんが、天国で安らかに過ごす事が出来ます様に…って願いを込めているの。」
「その願い、絶対届いているよ。」

「所で田中さんも白川さんのお墓に用があったん?」
「あぁ、うん。報告したい事があってな。」
「嬉しい報告?」
「そう、やね。」

2人で手を合わせます。

「(白川くん。僕達の事、見守っていてね。)」
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