第39話

文字数 1,136文字

1943年、3月頃。
私は再び昇進し、伍長となりました。
高橋軍曹も、曹長へと昇進しました。

「田中、少し相談があるんやけど、良いか?」
「はい。」


高橋曹長に呼び出されました。

「田中、今お前、確かあの部屋を1人で使っとったよな?」
「…はい…。」

白川くんと2人で使っていた部屋で、
私は今、1人で生活をしています。

「同居人が亡くなってから、ずっと1人です…。」
「白川上等兵の事やな。
彼の事は上から聞いている。
ミッドウェー海戦で立派に戦ったパイロットだと。」
「それで、部屋がどうされたんですか?」
「あぁ、そうそう。
新しい兵士が増えるに当たって、部屋が少し足りなくなるねん。
それでな…、お前の部屋に米田と長谷川を
移動させたいんやけど…。」
「!!」

学生の頃、私は米田くんと長谷川くんと白川くんと同じ部屋で2年間を過ごしました。
4人で門限まで色んな事を語ったり、
教官に怒られない様な遊びを考えたり…。

「部屋の移動の話を上としてたんやけど、
3人は呉に配属される前からの仲らしいから、
一緒にするのはどうかと提案したんや。
どうやろうか?」
「是非!!」

またあの頃みたいに過ごせる事が、
心から嬉しかったです。

「(白川くん…。)」

彼がいれば…。2人で喜べたのですが…。

「(また後で、白川くんのお墓参りに行こうかな。)」
「快諾ありがとうなぁ。田中。
米田と長谷川にも話を通しておく。」

「はっ!」



高橋曹長曰く、2人も快諾してくれたとの事でした。

「早速、部屋の掃除をせんとやなぁ…。」
「何や??やらしい本でもあるんか?」
「なっ!?違いますよ!!
恋人が送ってくれた絵を沢山飾ってるから、片付けようと思っただけです!!」
「あー。確かにお前の部屋、絵が沢山あったなぁ。俺も絵が好きで、ちょっとだけ海外行ってた事あるねん。」

紗和さんと話しが合いそうだなぁ。

「引越しは何時になりますか?」
「明日にでも準備を始めて欲しいんやが…。」
「分かりました。」



2人共荷物が少ないので、引越しはあっという間に終わりました。

「学生時代の頃を思い出すわぁ…。」
「あぁ。そうだな。」
「荷物少ないから、荷解きも早よ終わりそうや。」

米田くんと長谷川くんの視線が、
机の上の写真に移動しました。
呉に行く前に、4人で撮った写真。

「稔。見てるか?」

米田くんが話し掛けます。

「俺らな、また同じ部屋で暮らす事になってん。」
「学生の頃を思い出すやろ?
毎日訓練がきつかったが、あの頃は楽しかったな。」

長谷川くんも、白川くんに話し掛けます。

「昴が教官にしばかれる度、
俺と稔が昴の手当をしに行ってたな。」
「そんな事もあったね。」
「そんな昴やけど、何と伍長になったんやで!!」
「おめでとう!昴。」
「ありがとう。」

こうしていると、本当に学生の頃に戻ったみたいです。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み