第16話
文字数 1,305文字
広島県呉市。軍港と呼ばれる場所です。
何故軍港と呼ばれたのかと言うと、
“守りやすい地形だった”からです。
日本人なら誰もが知っているでしょう、
“戦艦大和”を作った場所は、
ここ呉なのです。
私は海軍では無いので、戦艦大和に乗ることはありませんでしたが。
◇
「ゲホッゲホッ...」
「大丈夫?」
呉に来てから、白川くんが咳き込む事が多くなりました。
「大丈夫!情けない事にさ、僕、
昔から新しい環境になると咳き込むねん。
何でやろうねぇ。」
「何やろう...空気...とか...?」
「まぁ、直ぐに慣れるって!
心配掛けてごめんなぁ。」
物凄く心配ですが、本人が大丈夫って言うから、大丈夫...なのかな?
と、あまり気にし過ぎないようにしました。
◇
呉での生活も、相変わらず厳しい物でした。
1番下の階級の二等兵は、
先輩からの体罰が理不尽と言う言葉では表せない物でした。
私達は幸いな事に、学校を卒業したから、
かなりマシな方でした。
...と言いますか、学生時代にしごかれ過ぎて、
感覚が麻痺していたのかもしれません。
「田中さん!!」
呉にたどり着いて2集荷程経った頃、
何だか聞き覚えがある声がしました。
振り返るとそこには
「え、松本さん!!?」
従軍看護婦の制服を着た、松本さんがいました。
「白川さんとは会えたんやけど、田中さんとは中々会えなくて。やっと会えた!!」
「びっくりした...どうしてここに?」
「私、お店の手伝いをしながら、
従軍看護婦の学校に通っててん。」
まさか松本さんがいるとは思わなくて、
まだ心臓がバクバクと音を立てています。
「そうだ。松本洋裁店...経営が苦しくなって、閉店したの。」
「!!!」
「悲しいけど...しゃあないよね。
あの商店街のお店、殆ど畳んじゃったし。」
「そう...なんや...。」
「田中さん」
「??」
松本さんが急に敬礼をしました。
「私、従軍看護婦として、軍人さん達のお役に立てる様、精一杯努めます!!」
私も、迷わず答礼しました。
「お互い、お国の為に立派に戦いましょう!!」
◇
1942年4月18日。
日本本土は初めて空襲に見舞われました。
東京、名古屋、そして神戸が標的となりました。
被害を受けたのは民間でした。
太平洋戦争開戦からわずか4ヶ月で、
米軍は本土を直接攻撃し、とても大きな衝撃を受けました。
「(紗和さん...!!どうか...どうか無事で...!!)」
彼女の無事を、ただ祈るしか出来ませんでした。
◇
「田中」
「はい!」
「お前宛に手紙が届いている」
「!!」
川本軍曹から手紙を手渡されました。
その手紙には“伊藤紗和”と書かれておりました。
「(紗和さん...!!)」
ですが、空襲前に書いた可能性があります。
軍曹が立ち去ったのを確認してから、
手紙を読みました。
『田中昴様。
桜が散り始める季節となりました。
本日はどうしても伝えたい事があり、
筆を取りました。
私は数日、家を空けておりました。
実家は焼けてしまいましたが、私と母は無事です。
毎日昴さんの事を思っております。
伊藤紗和』
「(あぁ...紗和さん。無事で良かった...!!)」
貴女が無事でいてくれた事だけで、
私の生きる活力となるのです。
部屋に戻り、手紙を無くさない様に保管しました。
何故軍港と呼ばれたのかと言うと、
“守りやすい地形だった”からです。
日本人なら誰もが知っているでしょう、
“戦艦大和”を作った場所は、
ここ呉なのです。
私は海軍では無いので、戦艦大和に乗ることはありませんでしたが。
◇
「ゲホッゲホッ...」
「大丈夫?」
呉に来てから、白川くんが咳き込む事が多くなりました。
「大丈夫!情けない事にさ、僕、
昔から新しい環境になると咳き込むねん。
何でやろうねぇ。」
「何やろう...空気...とか...?」
「まぁ、直ぐに慣れるって!
心配掛けてごめんなぁ。」
物凄く心配ですが、本人が大丈夫って言うから、大丈夫...なのかな?
と、あまり気にし過ぎないようにしました。
◇
呉での生活も、相変わらず厳しい物でした。
1番下の階級の二等兵は、
先輩からの体罰が理不尽と言う言葉では表せない物でした。
私達は幸いな事に、学校を卒業したから、
かなりマシな方でした。
...と言いますか、学生時代にしごかれ過ぎて、
感覚が麻痺していたのかもしれません。
「田中さん!!」
呉にたどり着いて2集荷程経った頃、
何だか聞き覚えがある声がしました。
振り返るとそこには
「え、松本さん!!?」
従軍看護婦の制服を着た、松本さんがいました。
「白川さんとは会えたんやけど、田中さんとは中々会えなくて。やっと会えた!!」
「びっくりした...どうしてここに?」
「私、お店の手伝いをしながら、
従軍看護婦の学校に通っててん。」
まさか松本さんがいるとは思わなくて、
まだ心臓がバクバクと音を立てています。
「そうだ。松本洋裁店...経営が苦しくなって、閉店したの。」
「!!!」
「悲しいけど...しゃあないよね。
あの商店街のお店、殆ど畳んじゃったし。」
「そう...なんや...。」
「田中さん」
「??」
松本さんが急に敬礼をしました。
「私、従軍看護婦として、軍人さん達のお役に立てる様、精一杯努めます!!」
私も、迷わず答礼しました。
「お互い、お国の為に立派に戦いましょう!!」
◇
1942年4月18日。
日本本土は初めて空襲に見舞われました。
東京、名古屋、そして神戸が標的となりました。
被害を受けたのは民間でした。
太平洋戦争開戦からわずか4ヶ月で、
米軍は本土を直接攻撃し、とても大きな衝撃を受けました。
「(紗和さん...!!どうか...どうか無事で...!!)」
彼女の無事を、ただ祈るしか出来ませんでした。
◇
「田中」
「はい!」
「お前宛に手紙が届いている」
「!!」
川本軍曹から手紙を手渡されました。
その手紙には“伊藤紗和”と書かれておりました。
「(紗和さん...!!)」
ですが、空襲前に書いた可能性があります。
軍曹が立ち去ったのを確認してから、
手紙を読みました。
『田中昴様。
桜が散り始める季節となりました。
本日はどうしても伝えたい事があり、
筆を取りました。
私は数日、家を空けておりました。
実家は焼けてしまいましたが、私と母は無事です。
毎日昴さんの事を思っております。
伊藤紗和』
「(あぁ...紗和さん。無事で良かった...!!)」
貴女が無事でいてくれた事だけで、
私の生きる活力となるのです。
部屋に戻り、手紙を無くさない様に保管しました。