第38話

文字数 979文字

『田中昴様。

あれからいかがお過ごしでしょうか。
私は貴方と過ごしたあの幸せな時間を胸に、毎日を生きております。

さて、今回筆を取ったのは、昴さんに報告したい事が出来たからでございます。
以前、私に求婚してきた華族のご子息の件なのですが、
昨日ご子息ご本人とそのお父上が
我が家に来られたのです。
そして、私と母に謝罪をしました。
「迷惑を掛けて申し訳無い。
どうか、添い遂げたい男性と幸せになって欲しい。」
との事でした。
私も母も、彼を恨んではおりませんので、
直ぐに謝罪を受け入れました。

心配を掛けて申し訳ありません。
浩二くんにもこの件を報告して下さると幸いです。

伊藤紗和』


あぁ、本当に良かった…!
紗和さんが怖い思いをする事なくこの事が解決したみたいで。
早速米田くんに、この事を報告しに行く事にしました。

「そっか。…良かった…!」

米田くんもほっとした表情をしていました。

「でも、何かあった時用の逃げ道は残しておく方が良いかも知れんな。」
「それは大丈夫。
実家には連絡して、了承を得ているから。」
「田中家には、ほんま感謝しかないわ…。」

米田くんは、私に頭を下げました。


「え!?米田くん!?」
「どうか紗和ちゃんに…
俺の姉に何かあった時、よろしくお願いします。」
「そんな、米田くん!頭を上げて!!」
「昴…」
「僕は何も特別な事はしてへんよ!
…あ、そうや。松本さんにも報告せんとね!」
「それは俺に任せてくれ。
丁度莉子ちゃんに用があるねん。」
「そう?じゃあ、よろしくね!!」



「さて、と。」

今日の任務を終え、私は机に向かいました。紗和さんに返事を書く為に。


『伊藤紗和様。

お手紙ありがとうございます。
貴女からの手紙を読んで、安心しました。
米田くんに報告したら、良かったと言っておりました。
松本さんも、紗和さんの事を気にかけていたので、この件を報告致しました。

本当に、貴女が怖い思いをすること無く解決して、私は心から嬉しいです。
ですが、この件以外にも貴女の身に何かありましたら、私の実家を訪ねて下さい。
家族に連絡した所、何時でも来てくれて構わない。との事でした。

私も、貴女と過ごしたあの幸せな日々を胸に、日々を過ごしております。
またお会い出来る日まで。

田中昴』


「よし、明日出そう!」

紗和さんからの手紙を読んで、安心したのか、今日はいつもより早く眠気が来ました。

「おやすみなさい。紗和さん。」
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