第10話

文字数 1,042文字

長谷川くんが松本さんとの馴れ初め等を話すのを、米田くんと白川くんは嬉しそうに聞いていました。
特に白川くん。
とてもにこにこしています。

「めっちゃ嬉しそうやねぇ、白川くん。」
「うん!人が幸せになる話、好き。
僕も嬉しくなる。」
「白川くんらしいね。」
「で、昴くんは?」

笑顔で迫ってくる白川くん。

「そうやで昴!俺も話したんやから、
昴の話も聞かせろよ。」
「紗和ちゃん泣かせたらボコボコにするで。」
「う、うん!えっとね…」

東京から帰ったばかりの紗和さんが
チンピラに絡まれているのを助けた事。
どうしてもお礼をしたいとの事で、
三宮案内をお願いした事。
そして…さっき、気持ちを伝えあった事。
2人はニヤニヤしながら聞いていました。
…何故か長谷川くんも。



引越しの準備も殆ど終わり、
後は新しい配属先に向かうだけです。
白川くんと私は同じ隊です。
全員、広島県の呉へ行く事になりました。

出発の10日ほど前、米田くんの提案で
4人で写真を撮ることになりました。
当時の写真は撮影するのに時間がかかり、
じっとしていないといけませんでした。
子供の頃、家族で写真を撮った時、
両親は、うろうろする私と妹を落ち着かせるのに苦労したそうです。

「写真館なんて久し振りだ…!」
「うん、僕も。」
「俺がここに来る前に、家族全員で写真を撮ったんだ。」

長谷川くんと私が懐かしさを感じていると、
米田くんが

「俺、写真館初めてやねん!!
失礼しまーす!!」

米田くんに続き、写真館の中に入りました。



写真の構図は、私と白川くんが椅子に座り、
米田くんと長谷川くんがその後ろに立つ。
と言った感じです。

「はい、めっちゃ良いのが撮れたで!!」
「ありがとうございます!!」

4人で写真館のご主人に感謝の気持ちを伝えました。

「現像するのが楽しみやね!!」

帰り道、私は3人に言いました。

「な〜!!俺、男前に撮れてるやろか。」
「大丈夫。絶対撮れてるよ!!」
「目を瞑ってないかな…」

そして出発の前日に、写真が出来上がりました。私は真っ先に封筒を開けました。

「あれ?1枚多くない?」
「あ、ほんまや。」

米田くんも中身を確認します。
封筒の中には、撮影したはずの無い写真が入っていました。

「あ…」

それは撮影後の笑顔の私達。
年頃の男子らしく、じゃれ合う私達でした。

「凄く良い絵が撮れるって思ってな。
おじちゃんからのサービスや!」
「「ありがとうございます!!」」

ご主人の粋な計らいに感動し、
再び4人で感謝の気持ちを伝えました。

…この写真が、私達4人で撮る
最初で最後の写真となりました。
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