第30話

文字数 944文字

「昴は、ほんまに良い家族に愛されて育ったんやな。」

米田くんは、優しいけれど、少し寂しそうな目で、私達を見ていました。

「だから、お前も優しくてええ奴なんやな。」
「優しい…かな?」
「優しいよ。優しくて、強い。」

私からすると、米田くんの方が優しくて強いと思うのですが…。
でも、自分の事は自分では分からないし
優しいと言ってくれるのは、素直に嬉しいです。

「ご飯出来たで。」
「お待たせ!!」

久し振りの母の料理。
いつも少ない食料で、いかに美味しく
空腹を満たせるかを考えてくれている料理。
今日は私の久し振りの帰省や、ご近所さんからのお裾分けもあったので、
豪華な食卓になっています。

「「いただきます!!」」

「んっ、うま!!」

米田くんも気に入ってくれたみたいで、
とても嬉しいです。

「めちゃくちゃ美味しいです!!」
「お代わりあるから、沢山食べて頂戴ね。」

「「ご馳走様でした!!」」

沢山あった料理は、綺麗に無くなりました。

「すみません。こんな食料不足のご時世に、沢山ご馳走して頂いて…。」
「気にせんとって。気持ち良い食べっぷりを見せてくれて、おばちゃん嬉しいわぁ。」

晴子もにこにこしています。



「それじゃあ昴。後で三宮で合流しような。」
「うん。」

私は実家で2泊し、それから三宮で1泊する事になりました。

「おばさん、晴子ちゃん、今日は本当にありがとうございました。」
「こちらこそ。」
「米田さん!」

晴子が米田くんに何かを渡しました。

「これ…良かったら!!」
「!」

晴子が米田くんに渡したのは、腕輪でした。

「ありがとう晴子ちゃん。
大切にする。」

晴子は顔を赤らめて微笑んでいました。



晴子は先に眠りにつき、私は母とのんびり過ごしていました。

「昴、あんたもしかして恋してるん?」
「!!!?」

紗和さんの事は何も話していないのに
言い当てられて、心臓が飛び出そうな程驚きました。

「なっ、何で分かったん!!?」
「そりゃあ母親やもん。
息子の変化にはすぐに気付くわ。」
「変化?」
「顔付きが全然違う。
軍隊で厳しい訓練をして来たんやろうけど、それとはまた違う…守りたい、大切な人がいる男の顔をしている。」

母は、私の頭を撫でながら言いました。

「昴。立派になったなぁ…!」
「母さん…。」

紗和さんへの思いが、私を成長させてくれていたのですね。
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