第13話
文字数 1,834文字
「怪我はありませんか?」
「は、はい!!あの、ありがとうございます…!!」
「いえ、そんな…。それではお気を付けて。」
【紗和目線の物語②】
軍人さんは、頭を軽く下げてからこの場を去ろうとした。
「軍人さん、お名前を教えて頂けますか!?」
「え?」
私はどうしてもそのまま軍人さんとお別れするのが嫌で、軍人さんを引き止めてしまった。
「どうしてもお礼がしたいのです!!」
勿論、どうしてもお礼がしたいのも本当です。
「田中昴です。」
あぁ…。“昴”さん。
名前もかっこいいなんて…!!
どうしてもお礼がしたい!
とお願いをしたら、昴さんが
“三宮の案内をして欲しい”
と言ってくれました。
三宮は私の庭の様なもの!
喜んで引き受けました。
「僕は陸軍飛行兵学校の、三ノ宮第二寮棟で暮らしています。何かあったらここに…」
「あ!!」
「ど、どうしました?」
「私の実家、その寮の隣です!」
昴さんと色々話していると、歳が同じである事が分かりました。
昴さんが暮らす寮が、私の母が経営する寮だったり…。
もう、これって運命じゃないの!?
と思ってしまう程。
◇
とうとう昴さんに三宮を案内する日が来ました。
私は少しだけお洒落をして、彼を待ちます。
当日は、親友の莉子ちゃんのお店に行って、
それから大好きな駄菓子屋さん、
文房具屋さんなど…。
色んな所へ昴さんに案内しました。
「(もっと昴さんと一緒にいたいなぁ…)」
そう思った私は、彼を秘密の場所へ案内しました。
子供の頃から、1人になりたい時によく来ていたこの場所。
大切なこの場所を昴さんに教えたくなりました。
「うわぁ…」
「昴さんは、パイロットになるんだっけ。」
「うん。」
「そうしたら、海より空の方が好きなんかな?」
「いや、どっちも好き。
でも、山が1番好きかも知れん。」
「山?」
「うん。僕、山奥の村で育ったから。」
「そうなんや!」
昴さんが生まれ育った所って、どんな所なんでしょう。
きっと、素敵な所に違いありませんね。
草むらに腰掛けると、昴さんも隣に座ってくれました。
暫く沈黙が続きましたが、不思議と心地よく…。
「(昴さんと一緒にいると、楽しいな。)」
そう、心から思うのでした。
「昴さん。今日はありがとう。」
「そんな、こちらこそありがとう。」
「昴さん、忙しいやろけど…
また、一緒に出掛けたいな…。」
そう言うと、彼は困ってしまうでしょうか…。
「…せやな。また一緒に出掛けよう。」
「!!」
その言葉が嬉しくて、私はつい、顔がニヤついてしまうのでした。
◇
1941年12月8日。
ラジオから、真珠湾を攻撃したと情報が流れました。
太平洋戦争の開戦です。
「やっぱり、日本は強いんやなぁ!」
私は母と一緒にラジオを聞いていました。
2人で日本軍の戦果に感動したものです。
「きっと、日本軍はすぐに勝つで!」
母の言葉に、私はうんうんと頷きます。
「浩二くんや昴くん達も、いつかはあの兵隊さん達みたいに、立派に戦うんやろうなぁ…。」
「あ…。」
母の言葉で気が付きました。
昴さんと仲良くなれた事で浮かれていたけれど、昴さんは学校を卒業したら、戦争に行かなくては行けないと言う事に。
「紗和?」
「あ、いや…。何でもない!!
私、食堂の掃除して来る!!」
◇
ある日、莉子ちゃんが家に訪ねてきました。
「紗和ちゃん、ちょっと相談があるんやけど…。」
「相談?良いよ。上がって。」
莉子ちゃんにお茶を出しました。
「どうしたの?」
「あの…長谷川進さんっているやん?」
「うん。昴さんや浩二くんとよく一緒におるなぁ。」
「私、長谷川さんの事、好きになってしまったねん!!」
「!!!」
どうやら、昴さんと進さんがお店に来た時に、進さんに一目惚れしてしまったそうです。
「そうだったんやね!」
「どうしてももう一度会いたくて…。
紗和ちゃん、どうにか出来ないかなぁって。」
「そうやなぁ。なんか自然に再会出来たら良いんやけど…。うーん…。」
◇
進さんが帰って来る時間を狙って、
莉子ちゃんに家に来てもらいました。
世間話をしている時に、偶然再会…
を狙う作戦です。
「あ、進さん、帰って来たで!!」
「!!」
良かった。上手く行きました。
私は小声で莉子ちゃんに告げました。
進さんは浩二くんと一緒です。
「浩二くん、進さん、おかえりなさい!!」
「ただいま〜…って莉子ちゃんやん!!
久しぶり!!」
「久しぶり!」
どうにかして、莉子ちゃんと進さんを2人きりにしないと…!
「浩二くん、ちょっとこっち来て。」
「え?」
「良いから!」
浩二くんの腕を引っ張って、寮の中へ連れて行きました。
「は、はい!!あの、ありがとうございます…!!」
「いえ、そんな…。それではお気を付けて。」
【紗和目線の物語②】
軍人さんは、頭を軽く下げてからこの場を去ろうとした。
「軍人さん、お名前を教えて頂けますか!?」
「え?」
私はどうしてもそのまま軍人さんとお別れするのが嫌で、軍人さんを引き止めてしまった。
「どうしてもお礼がしたいのです!!」
勿論、どうしてもお礼がしたいのも本当です。
「田中昴です。」
あぁ…。“昴”さん。
名前もかっこいいなんて…!!
どうしてもお礼がしたい!
とお願いをしたら、昴さんが
“三宮の案内をして欲しい”
と言ってくれました。
三宮は私の庭の様なもの!
喜んで引き受けました。
「僕は陸軍飛行兵学校の、三ノ宮第二寮棟で暮らしています。何かあったらここに…」
「あ!!」
「ど、どうしました?」
「私の実家、その寮の隣です!」
昴さんと色々話していると、歳が同じである事が分かりました。
昴さんが暮らす寮が、私の母が経営する寮だったり…。
もう、これって運命じゃないの!?
と思ってしまう程。
◇
とうとう昴さんに三宮を案内する日が来ました。
私は少しだけお洒落をして、彼を待ちます。
当日は、親友の莉子ちゃんのお店に行って、
それから大好きな駄菓子屋さん、
文房具屋さんなど…。
色んな所へ昴さんに案内しました。
「(もっと昴さんと一緒にいたいなぁ…)」
そう思った私は、彼を秘密の場所へ案内しました。
子供の頃から、1人になりたい時によく来ていたこの場所。
大切なこの場所を昴さんに教えたくなりました。
「うわぁ…」
「昴さんは、パイロットになるんだっけ。」
「うん。」
「そうしたら、海より空の方が好きなんかな?」
「いや、どっちも好き。
でも、山が1番好きかも知れん。」
「山?」
「うん。僕、山奥の村で育ったから。」
「そうなんや!」
昴さんが生まれ育った所って、どんな所なんでしょう。
きっと、素敵な所に違いありませんね。
草むらに腰掛けると、昴さんも隣に座ってくれました。
暫く沈黙が続きましたが、不思議と心地よく…。
「(昴さんと一緒にいると、楽しいな。)」
そう、心から思うのでした。
「昴さん。今日はありがとう。」
「そんな、こちらこそありがとう。」
「昴さん、忙しいやろけど…
また、一緒に出掛けたいな…。」
そう言うと、彼は困ってしまうでしょうか…。
「…せやな。また一緒に出掛けよう。」
「!!」
その言葉が嬉しくて、私はつい、顔がニヤついてしまうのでした。
◇
1941年12月8日。
ラジオから、真珠湾を攻撃したと情報が流れました。
太平洋戦争の開戦です。
「やっぱり、日本は強いんやなぁ!」
私は母と一緒にラジオを聞いていました。
2人で日本軍の戦果に感動したものです。
「きっと、日本軍はすぐに勝つで!」
母の言葉に、私はうんうんと頷きます。
「浩二くんや昴くん達も、いつかはあの兵隊さん達みたいに、立派に戦うんやろうなぁ…。」
「あ…。」
母の言葉で気が付きました。
昴さんと仲良くなれた事で浮かれていたけれど、昴さんは学校を卒業したら、戦争に行かなくては行けないと言う事に。
「紗和?」
「あ、いや…。何でもない!!
私、食堂の掃除して来る!!」
◇
ある日、莉子ちゃんが家に訪ねてきました。
「紗和ちゃん、ちょっと相談があるんやけど…。」
「相談?良いよ。上がって。」
莉子ちゃんにお茶を出しました。
「どうしたの?」
「あの…長谷川進さんっているやん?」
「うん。昴さんや浩二くんとよく一緒におるなぁ。」
「私、長谷川さんの事、好きになってしまったねん!!」
「!!!」
どうやら、昴さんと進さんがお店に来た時に、進さんに一目惚れしてしまったそうです。
「そうだったんやね!」
「どうしてももう一度会いたくて…。
紗和ちゃん、どうにか出来ないかなぁって。」
「そうやなぁ。なんか自然に再会出来たら良いんやけど…。うーん…。」
◇
進さんが帰って来る時間を狙って、
莉子ちゃんに家に来てもらいました。
世間話をしている時に、偶然再会…
を狙う作戦です。
「あ、進さん、帰って来たで!!」
「!!」
良かった。上手く行きました。
私は小声で莉子ちゃんに告げました。
進さんは浩二くんと一緒です。
「浩二くん、進さん、おかえりなさい!!」
「ただいま〜…って莉子ちゃんやん!!
久しぶり!!」
「久しぶり!」
どうにかして、莉子ちゃんと進さんを2人きりにしないと…!
「浩二くん、ちょっとこっち来て。」
「え?」
「良いから!」
浩二くんの腕を引っ張って、寮の中へ連れて行きました。