第17話

文字数 894文字

早速紗和さんに返事を書くことにしました。
当時の手紙は“検閲”で中身を見られ、
文字の大きさ等も指定されていました。
書いてはいけない事が定められており、
どうやって上手く誤魔化すか...
と、奮闘したものです。


『伊藤紗和様

貴女からの便りを読み、とても安心しました。私も貴女を思わない日はありません。
毎日空を見上げ、貴女も同じ空の下にいるのだと思い、日々を生きております。
どうかお身体を大切に。
おかみさんにもよろしくお伝え下さい。

田中昴』


紗和さんは絵がとても上手いので、
主に花の絵を送ってくれました。
幼い頃、母から花言葉を教わったので、
花言葉から紗和さんのメッセージを読み取りました。
分からない所は本で調べたりしました。
私も紗和さんの真似をして
花の絵を描いてみました。
あまり出来に自信が無かったので、
横に“アネモネ”と書いたりしたものです。



川本軍曹から、私を含めた新兵に呼び出しがかかりました。
“防空壕を作れ”
との事でした。
空襲の時の避難所です。
ここもいずれ狙われるでしょう。

「しっかりしたものを作る様に。」
「「はっ!!」」

必死で穴を掘りました。
でも、中にはサボる奴がいます。
サボる奴がいたら、連帯責任です。

「なぁ、君。ちゃんと掘りぃや。」
「あ?」

私が注意すると、二等兵の1人が突っかかって来ました。

「君がちゃんとやらんと、僕らも体罰くらうねん。」
「知らねぇよ」
「昴、そんな奴は無視でええねん。
体力の無駄や。」

米田くんは黙々と穴を掘りながら言いました。

「お前みたいな奴、いざと言う時に逃げきれず敵にやられられるで。」

「...っ!!偉そうに!!」

腕を振り上げて来たけど、
米田くんは殴られる前に腕を掴みました。

「余計な体力使わせるなよ。」
「......ちっ」

そいつは防空壕を作る作業に戻りました。



結局、あの二等兵がサボっていた事は、
軍曹達にバレていました。

「任務をサボるな!!大馬鹿者が!!」

全裸にされ、冷たい水を掛けられたり、
複数人で蹴られたりしていました。
それを見せられるのです。

「.........」

“サボったり、逆らったりすると、
お前達もこうなるぞ”
と言った、見せしめなのでしょう。
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