第20話  酒蔵

文字数 706文字

 その酒蔵には、独特なビールの酵母の匂いが漂っていた。大きな樽にビールらしき液体が溜まっている。ワインも作っているようで、大部屋の奥には酒樽がたくさん並んでいた。

 その前に金髪のシュッとしたイケメン中年の人族、バジルが立っていた。その隣には金髪ミディアム美人妻のモニカが寄り添っている。2人はヨアヒムやディルクとは仲が良いらしく、入り口で声を掛けると直ぐに大部屋に案内してくれた。

 ヨアヒムが持っていた焼酎の瓶をバジルに渡して、

「とっ、とにかく飲んでみてくれ、これと同じ酒を作れんかの?」

 バジルは焼酎を味わうと、かなり驚いた顔をしている。俺はうろ覚えながらも、芋を発酵させて蒸留させることを説明した。ヨアヒムもディルクも期待に満ちた顔をしている。

 俺は、芋だけでなく、果物や麦、米・・・こちらにもあるのだろうか、穀物も原料になることを話した。段々とバジルの顔が輝いてきた。部屋の隅のテーブルで、モニカと相談をはじめた。

 どうやら、この世界には醸造技術はあっても、蒸留の概念はほとんど無いようだ。たしか蒸留用のスチルポットは銅で作ってあったっけ、いやあれはウイスキーだった。

 焼酎の場合はステンレス製だが、昔は木製の蒸し器に傘をつけたような(兜釜)ものだからなんとかなるような気がする。よく祖母の店でお酒に詳しい常連さんから聞かされた話だ。どこで役立つかわからないような雑学だけど、話の長いお年寄りに付き合っていて良かったな。鍛治ギルドで将来ナイフの研究が進めばステンレスのスチルポットもできるかも。

 結局、鍛治ギルドに加えて、俺はこの酒蔵の技術顧問にも就任させられてしまった。顧問料は出世払いになるのだろうか。


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