第33話 魔術師としての研鑽(II)

文字数 1,473文字

 次の日、冒険者ギルドに魔大モグラを買取に出した。あまりの大きさに買取担当のトーマスが驚いていた。残念ながら肉は食用にはならず、皮、爪、魔石である。

 魔大モグラ (ランクC+) 個数1 計 5金貨 (50万円相当)
 皮:  2金貨 
 爪:  1金貨 (2個で)
 魔石: 2金貨

  ギルドのカードに入金を済ませると、隣の魔術師ギルドへと向かう。
 今日は風魔法の研鑽である。担当師匠はドロシー。郊外の草原で魔物との実戦に出かけるのだ。

 今回は馬車ではなくて、街の門を出てしばらくしたところから、巨大化した神獣フェンリルのブランカに二人乗りである。その方がはるかに早い。

 あっという間に2時間程で、以前ゴブリン征伐をした大草原についた。前は2日掛けて進んだ道だが、ブランカは鳥が飛ぶくらいの速さで走ることが出来るのだ。

 大草原の中をさらに森の方へ進んでいくと、のんびりと牛や羊が放牧されている。そこへ、獲物を攫いにワイバーンが飛んできた。森の奥の岩山に巣があるようで、時々出てきては牛など家畜を襲うので地元では大きな脅威になっていた。

 大きさは半端なく、7メトルを超す巨大な飛竜である。鋭い爪で大きな牛を引っさらっていく。下手をすると人間でも攫われてしまうらしい。

 ドロシーは、風魔法でウインドスラッシュを仕掛けるが、遠くて届かないようだ。こちらに気がついたワイバーンは大きな奇声をあげると、巨大な牙と爪をたてて空から襲ってきた。

 俺は、切断の片手剣を収納から出すと、ワイバーンに振りかざしたが、翼の風圧で近づけない。逆に、鋭い牙が俺の体をかすめた。体捌きで辛うじて躱したが、危ないところだった。数分間、ワイバーンからの一方的な攻撃が続いた。体力は無限のようにあるので俺の身のこなしは鈍らない。しかし、このままでは埒が明かない。

 俺の体にまたあの感覚が芽生えてきた。丹田に力を入れて、腕から指先へと湧いてきたエネルギーを集中させた。脳裏には巨大なかまいたちのイメージが浮かんだ。エネルギーを指先から解放すると、ウインドスラッシュが勢いよく飛び出して、ワイバーンの首を切り裂いた。

 青い光が魔物の体から出て、俺に吸い込まれた。ワイバーンの巨体は地面に墜落したので、収納へ格納した。

」と機械音。

 膨大な風魔法の魔力に触発されたのか、草原の向こうには、雲が浮かび、その上に、魔神のジンが立っていた。アラジンの魔法のランプに出てくるようなターバンを巻いている。これはやばい奴だ、倒せるレベルではないかもしれない、確か世界最強の魔神とのキャッチフレーズだった。俺は、急いで使役魔法の呪文を唱えた。

 すると青い光が俺の指先から魔神ジンへと向かい、その体を包んだ。魔神ジンの体が見る間に縮んで、最後には消えた。残ったのは古いランプが一つ。

 念話らしい声が頭に響いた。

「我は風の大精霊シルフの縁者。しかしこれからは(あるじ)に仕えることにもなる。風の吹くところでは常に主とともにある。」

 驚いたことに、魔神ジンは俺に使役されてランプの精になったようだ。また、必要なときには、擦ると顕在化することも念話で伝えてきた。俺がランプを持つとさらに形が変わって、銀色の指輪となって俺の指に嵌った。指輪を擦るとジンが出現するようだ。これではランプの精ではなくて指輪の精だろう。

 名前をつけて欲しいと念話で言ってきたので、ジミーと名付けた(決して、あの青いジーニーではないのだ)。でも空飛ぶ絨毯を出して貰えれば、空も飛べるはずだ。


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