第6話 再び戦う前に(鏡の小部屋)

文字数 805文字

 しばらく通路を進むとまた壁の色が変わったところがあった。壁の低い位置に”

”という箇所が見つかった。強く押すと、ゴゴッと音がして小さな扉が横に開いた。ようやく体が入るような隙間が空いたので中に入った。

 また小部屋であった。空気は少し湿っていて山や湖のような自然の香りがする。灯を照らすと部屋の4辺の壁には造付けの巨大な鏡があり、俺の姿が映っていた。鏡はかなり古いもので、遺跡といってもよいくらいだ。

 壁の鏡に映っていた俺の姿は小学生の高学年くらい。童顔だが目鼻立ちはっきりで女性受けがとてもよいような可愛い顔をしている。体型は子供体型だが、手足とも不思議と筋肉はよくついているようだ。

 鏡を見ていると、鏡の奥に仄かに人影が見えた。4辺が鏡なので昔みた香港カンフー映画のシーンのように自分の分身が重なって見えているのかと思ったが違うようだ。

 試しに、手足を動かしてみても、鏡の中の人影は動かないでじっと俺をみつめているようだ。突然頭に”挨拶を”との言葉が響いた。俺は訳がわからなかったが、とりあえず、会釈をして少し微笑んでみた。

 すると、鏡の中の人影は4つの男女に分かれて、向こうからも会釈をし、名乗ってきた。

一人目の女は”私は水の民、ウンディーネ” 水のあるところではまたお目にかかれるでしょう。

二人目の男は”わしは火の民、ザラマンデル” 火の燃えるところではわしのことを思い出してくれ。

三人目の女は”私は風の民、シルフ” 風の吹くところではいつも貴方とともにおります。

四人目の男は”おれは山の民、グノーム” 土と大地の続くところ、またお会いできるじゃろう。

 この世界に来て何らかの面通しなのだろうか。精霊や妖精と契約する話は昔からあるが、何かしらの試練を伴うものと記憶している。多分出会っただけの挨拶なのだろうと思っていると、不思議なことに小部屋から押し出されて元の通路に戻っていた。


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