第35話 魔術師としての研鑽(IV)

文字数 2,798文字

 さて、今日もドロシーと連れ立って魔法の研鑽に郊外へ行く予定だ。

 火→土→風ときたので、残るのは水である。ドロシーと、森の近くの湖へ行くことになった。街の門を出てしばらくすると、神獣フェンリルのブランカに頼んで巨大化してもらい、また二人乗り。2時間程で湖畔に着いた。

 湖は少し霧がかかっているが、とても静かで波一つない。遠くに小さな島が見えた。どこからか、歌声がかすかに聞こえてきた。思わず耳をすませるととても美しい声でなんともいえずに、聞き惚れてしまう。知らず知らずに湖畔の岸から水の中に引き込まれたようだ、気がつくとすでに体の半分まで、水の中に浸かっていた。

 フェンリルのブランカがザブザブと水の中まで入ってきてくれて俺の頬を舐めてくれたので正気になったようだ。俺も、ドロシーも目がとろんとなってすっかり水浸しになっていた。

 前方の島の上には、頭と体は女の人で羽を背負った魔物のセイレーンが手招きをしながら歌い続けていた。

 突然、俺の体にまたあの感覚が芽生えてきた。丹田に力を入れて、腕から指先へと湧いてきたエネルギーを集中させた。脳裏には金属片を切断する工場のウォータージェットのイメージが浮かんだ。エネルギーを指先から解放すると、ウォータースラッシュが勢いよく飛び出してセイレーンの首を切り裂いた。青い光が魔物の体から出て、俺に吸い込まれた。セイレーンの死体は水面に浮かんだので、収納へ格納した。

」と機械音。

 セイレーンの精神魔法で危うく溺れそうになった俺は最後でなんとか持ち堪えて、セイレーン(Cランク)を倒した。知らずと水魔法(ウォータースラッシュ)を使えるようになっていた。

 水面には膨大な水魔法の魔力に触発されたのか、水の精のアプサラスが立っていた。前の世界ではインドの水の精でかなり強くまた男を堕落させる力も持っている。じと目でこちらを睨んでいるようだ。

 これまた、やばい奴だ、到底倒せるレベルではないかもしれない。俺は急いで使役魔法の呪文を唱えた。

 すると青い光が俺の指先からアプサラスへと向かい、その体を包んだ。アプサラスの体が見る間に青白い透明なイルカに変わった。前の世界で、昔のオフィスアプリの画面に突如出てきたイルカ(たしか○イルくんだっけ)、ウインドウズの相当古いバージョンを使っていた俺をかなりイラつかせたものと少し似ていた。

 念話らしい声が頭に響いた。

「私は水の大精霊ウンディーネの親眷。しかしこれからは(あるじ)にも仕えることにもなる。水のあるところでは常に主とお会いすることになるでしょう。」

 驚いたことに、アプサラスは俺に使役されて透明イルカになったようだ。いつもは亜空間に漂っているが、俺が水の近辺に行くと顕在化することも念話で伝えてきた。

 彼女も名前をつけて欲しいと言ってきたので、フィンと名付けた(フリッパー(昭和世代の代表的海外ドラマだった)ではない)。

 フェンリルのブランカに乗って街へ戻ると、冒険者ギルドでセイレーンを買取に出した。めずらしい魔物だと買取担当のトーマスが驚いていた。残念ながら魔石のみの買取である。

 セイレーン (ランクB) 個数1 計 3金貨 (30万円相当)
 魔石: 3金貨

 さすがに疲れを覚えたので、ドロシーとバネッサも呼んで、黄金の卵亭の食堂で一杯飲むことにした。3人でビールとワインをかなり飲んでしまった。肴は収納から以前釣った魚を少し、シェフのジーノへ渡して塩焼きにしてもらった。

 その晩、宿の部屋に一人でいると、突然、フェニックスが現れた。土、風、水の大精霊たちの眷属や縁者が俺の支配下になったので、サラマンデルから遣わされたのだろうか・・・競合意識のなせるわざなのか。

 フェニックスはサラマンデルの族親であると念話で俺に伝えてから、期待の籠った目つきでじっとこちらを見つめながらなにかを待っている。そのまま静かに数分が過ぎた。

 わかったよ、使役魔法な。俺は呪文を唱えると、青い光がフェニックスを包み、それは見る間に縮んでいき、黄色い小さなオウム(雌らしい)に変わった。

 今度は人の声がした。嬉しそうな声であった。

「われは火の大精霊ザラマンデルの族親ピヨ、しかしこれからは(あるじ)にも仕えることにもなるピヨ。火の燃えるところでは主とともに歩むピヨ。」

 ​​フェニックスは通常ではオウムの姿に変わったが、人の言葉も話すのだ(語尾は少し変だけど)。名前を欲しがったので、ピリカと名付けた(ドリトル先生は愛読してたけど、ポリネシアではないのである)

 これで俺の使役するものは、4匹となった。なかなか強力なメンバーだろう。

 土/山:フェンリル・子犬(ブランカ)
 風:ジン・指輪の精(ジミー)
 水:アプサラス・透明イルカ(フィン)
 火:フェニックス・オウム(ピリカ)

 バネッサに貰った羊皮紙を再び試してみた。(何回も使えるSDGsなのだ)

 魔法: ★古代神聖魔法 4大(風・火・水・土)
     △古×神×魔法 ×用魔法 聖(×神・治×)・×体)
     ★古代神聖魔法 上級4大(風・火・水・土)・上級×)
     △古×神×魔法 ×級魔法ー ×霊・×間・大×模 
     ★使役魔法

 精霊:  風の大精霊王(シルフ):お目通し・縁者斡旋済み
      火の大精霊王(ザラマンデル):お目通し・族親斡旋済み
      水の大精霊王(ウンディーヌ):お目通し・親眷斡旋済み
      山/土の大精霊王(グノーム):お目通し・眷属斡旋済み

 使役神獣(精): ★ジン(風)・指輪の精(ジミー)  
          ★フェニックス(火)・オウム(ピリカ)
          ★アプサラス(水)・透明イルカ(フィン)
          ★フェンリル(山/土)・子犬(ブランカ)

  スキル:鑑定(P)、異文化言語(P)、収納(P)、俊敏(A)
  所有:石(37)、キャンプ用具一式(道具・調味料・酒他)魚、果実、水
     ワイバーン肉、本(錬金術大全、付与魔法大全、★使役魔法大全 
    (済)、宝物地図、魔獣図鑑、草木図鑑、海獣図鑑など多数)、
     武器(切断(武具)、ファルシオン、長剣、ハルバード、長槍、
     モーニングスター、ウオーハンマー、ダガー、長弓・矢、     
     杖(黒檀)、盾、鎧など多数)
  称号:鍛治ギルド(ブライトン)技術顧問、酒蔵(ブライトン)技術顧問
     ★ドラゴンスレイヤー
  ポイント:3,300P

   また、ギルドカードをみると残高が60金貨(600万円)を
   超していた。後払金(ワイバーン)も100金貨あるので、合計160
   金貨か、結構稼いでいるな。
  でもポイントって何になるんだろう、スキルとかと交換できるのだろうか。

 
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