第11話 城壁のある街(騎士爵屋敷)

文字数 1,432文字

 城壁が都市をぐるりと取り巻いており、その前には空堀が掘られている。道から跳ね橋を渡ると大きな門があった。門番の大きな兵士が数名いて入るものをチェックしている。馬上の女騎士は兜を脱ぐと門番に会釈をしてそのまま門をくぐる。一緒の俺もノーチェックだ。馬を並足で石畳の道を進ませる。

 小さな家が立ち並び、しばらく行くと急に道が開けて大きな広場に出た。
尖塔がある教会のような石造りの立派な建物と、左右には古めかしい公共のものらしい大きい二階建が数軒並んでいる。それぞれの軒には分厚い木の看板が下がっており、剣と弓矢のマークのもの、杖と壺が描かれているもの、天秤と荷車の意匠のものがあった。エレインが冒険者ギルド、魔術師ギルド、商業ギルドだと教えてくれた。中央には噴水があり、その周りには野菜などの市が立っているようだ。

 一本通りを挟んで、宿と食事の絵看板を下げている大きい建物が2軒。それぞれ奥に中庭があり、馬屋があるようだ。並びには武具店、魔道具店、食品店などがあった。この街の商店通りだろう。

 さらに一本通りを挟むと大きな庭付きの屋敷が並んでいる。ひと際大きな屋敷は領主のものだ。エレインの屋敷は然程大きくはなかったが、それでも大きな門と前庭があり、建物の前には一応馬車寄せもある。庭の端の馬屋の中に馬を止めると二人は建物に入った。玄関は吹き抜けになっており、階段が2階に続いている。大きな暖炉がある部屋に俺は招き入れられた。

 エレインの両親と妹が入ってきた。

 父親のダニエル・リビングストン騎士爵が口を開く

「この度は、娘の危ないところを助けてもらい、真に感謝の至り。」

 騎士爵は短い金髪の30代半ば、少し陽に焼けた美男で180cm超えの長身であった。かなり鍛えているのか筋肉質だ。      

 「一人では魔の森には立ち入らないようにと言っているのだが、診療院から頼まれた薬草をどうしてもということで無理したようだ。聞けば、狼の魔物を瞬殺されたようで、ケータ殿はどちらで剣を学ばれたのかな?」

 「狼の魔物は数だけで個体は強くはなかったので。俺は遠い国の出身で、その地に伝わる武術を祖父から受け継ぎました。」

 俺は、別世界から来たとは言わず、言葉を濁して説明、状況がわかるまでは用心が必要だ。

 騎士爵は小声で呟いている。

「・・・それはそれは。灰色狼は魔物のウルフェン、一匹でも普通の騎士は手こずるほど、その群れを倒したとはかなりの腕前だな。」

 隣に座った夫人は小柄だが金髪ロングがよく似合う色白美女。娘と似て彫りが深く絵画に出てくるような容姿だ。

 夫人は優しい声で

 「とにかく、お疲れでしょうから、夕食を一緒に召し上がってください。泊まる部屋もご用意いたします。」

 妹も小柄だが、金髪ミディアムが似合いの色白美少女。醤油顔だが、とても愛くるしい。可愛い声で、

 「お姉様を助けてくださった方ですから、どうかご遠慮なく、おくつろぎください」
 
 俺は、家庭的な雰囲気に馴染まず、今回は遠慮することにした、

 「お心遣いだけ受け取らせてもらう。それより宿屋を教えて頂きたい。」

 騎士爵が残念そうに

 「了解した。ただ、お礼をしたいのでそれは別の機会にさせて頂く。」

 エレインもなぜだか少し寂しそうに。

 「それでは、私が案内しましょう。宿屋は2軒あるが、食事で有名な方をご紹介する、また馬で行けば直ぐの場所です。」

 俺は、再びエレインと馬に乗り、宿屋”黄金の卵亭”に行くことになった。


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