第38話 商業ギルドへ

文字数 1,014文字

 いろんな食品のレシピやプランを携えて、商業ギルドへ行くことにした。
 肩にはオウムのピリカ、足元には子犬のブランカ、ジミーは指輪になって指にハマっている。目の前の噴水には透明イルカのフィンが跳ねていた。でも今日は戦いではないので皆んなには外で遊んでいて貰おう。

 商業ギルドは冒険者ギルドや魔術師ギルドの並びであるが、かなり立派な石造の2階建ての建物だ。前の世界での地方の商工会議所とか証券取引所とかと規模や格式が似ている気がした。軒に吊るされている木製の看板は天秤と荷車の意匠であった。

 重厚な木製の扉を開けると、受付には少しぽっちゃりとした可愛い人族の女の子が座っていた。名札にはクラーラとある。俺は彼女に来訪の意を告げた。すると直ぐに、奥のギルド長の部屋に通してくれた。

 出てきたギルド長は渋いロマンスグレーの2枚目の人族、ブルーノと名乗った。俺は、簡単に自己紹介、冒険者と魔術師として日々を送っているが、食品のレシピや製法を研究しているものだと。ブルーノの目には変わった子供に映ったかも知れないが、冷静・沈着、慇懃な態度で話を聞いてくれた。

 俺は、遠国出身で、こちらでは普及していない発酵食品や燻製食品、香辛料などを用意するつもりがあることを仄めかした。ついては、今後その開発や販売をサポートしてくれる信頼のおける商人を紹介して欲しいと依頼したのだ。

 ブルーノは、すぐにピンときたらしい。というのも昔この世界に野菜や果物の種をもたらした人がいて、その当時は大変な騒ぎになったらしい。米や小麦、ジャガイモやトマト、オレンジなどだろう。名前が一緒だから。それを思うと、新しい食品の流通は先行者メリットが大きく、また新食品やレシピの普及によって世間の人々のメリットにもなるので、是非商業ギルドとしてもサポートさせて欲しいとのことであった。商人の担当を決めるのでと、直ぐに人を呼びにいったのだ。

 30分程で、人族のスタイルのよい金髪女性が入ってきた。メアリーと名乗った。話振りからかなり切れ者だということが直ぐにわかるが人柄も良さそうだ。俺は、新しい食品の構想を話し始めた。先は長いのだが。

 早速、メアリーから、街の真ん中でアンテナショップ開店の提案があった。
店舗の調理場でチーズや燻製、ピクルス、漬物などを作って、その場でそのまま販売するのが合理的だとのことであった。人手が今はないので少し難しいが、検討が進めば良い案に思えた。


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