第10話 夢の中で(II)

文字数 721文字

 またも転生前の世界に俺はいた。小さい頃から祖父母の家で育てられた俺には叔父と叔母がいた。母方の祖父母の子どもであり、俺が小学生の頃は既に独立して家を出ていたが、頻繁に戻ってきて俺の相手をしてくれた。

 叔父は美術関係の学校を出て海外を放浪、帰国してからは美術商として店を構え、骨董(陶器、絵画など)から現代絵画、彫刻までを扱っていた。時々昔の伝手を使って海外と輸出入をしていた。叔父は毎週に一度は俺を店に連れていき、店中の骨董や絵画に触れさせた。小さいうちから毎週の様に世界各国の古いものから新しいものまで、とにかく数多くの品を見せては、本物への審美眼、感覚を甥である俺に植えつけたのだ。数年経って、小学高学年になると自然と品の真偽と大まかな価値が頭に浮かぶようになっていた。

 一方で、叔母は海外の音楽学校を卒業してからヴァイオリンの奏者になった。しばらくソロで活動した後にプッツリと演奏活動を辞めてしまい、音楽教師となった。後進を育てる方が性に合っていると気づいたらしい。小学校に上がる前から俺には毎週彼女の厳しいレッスンが課された。

 時間は有限であり、俺には勉強の他に、武道の稽古、料理の手伝い、美術品の鑑賞に加えてのレッスン、小学生の頃はかなり忙しい思いをした。しかし中学校に上がる頃にはすっかり慣れて全てを余裕でこなすようになっていた。叔母からは難曲のツィゴイネルワイゼンなども厳しく指導されていた、でもプロになるのでもないのになぜここまでやるのかがわからないほど叔母は集中して教えてくれたのだった。あのレッスンの日々が懐かしいな・・・と思ったところで目が醒めてきた。

 女騎士と俺の乗った馬は高い城壁のある都市に近づいていた。    




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