第21話  一日が暮れて

文字数 2,019文字

 今日は一日、いろんなところを回ったのでさすがに疲れた。宿に戻ると食堂にいたエンマが少し色っぽい目つきでウインクをしてきた。朝の俺のウインクにもう順応したのか、妙にコケティッシュな猫獣人である。

 夕飯はダークビールと鹿肉のステーキを頼んだ。ダークビールは黒ビールのようでこくがあって美味い。ビール自体に癖が多少あるので、一緒に食するものとしては比較的さっぱり目の鹿肉がよく合うのだ。鹿肉は厚い塊で外側がこんがり、中はミディアムレアーで柔らかい。シェフのジーノは良い腕をしているな。

 2階の部屋に上がると、エンマがたらいのお湯とタオルを持ってきてくれた。この世界、風呂はめずらしいようで、仕方がないけれど。タオルで体を拭くとさっぱりしたので、ベッドで直ぐに眠りこんだ。

 夢の中で、俺は10代の始めの頃に戻っていた。叔父は昔から美術の他に文学や映像も好きだったのでその蔵書やビデオなどが家にはたくさんあった。最初は叔父に教えられて、読みやすい冒険ものやファンタジーから本の世界に入った俺は、その後も小説、ドキュメンタリーなど貪り読んだ。すっかり本好きとなった俺は、同時に叔父の好きな昭和世代の映画やテレビ(特撮)などにもかなりハマった。一種の昭和オタクなのかもしれない。忙しい日々の合間にも俺は寸暇を惜しんで本やビデオに没頭したのだ。

 中学を卒業する際には、叔母から指導された音楽の道にも少し惹かれたのだが、結局は平凡な県立高校に進んだ。祖父から薫陶を受けている古武道や祖母との料理も続けたくて、それには近所の高校に通うのが一番効率的だったのだ。

 今度は、中学時代の二の轍は踏まないと固く誓った俺は、体育の時間はひたすらに目立たないように立ち回っていた。しかし見ているやつはいるもので、柔道の授業の際に、運悪く柔道部の部員と乱取りで当たってしまい内股を透かして転がしたところを相手に感付かれてしまった。終始とぼけ通したのだが、運悪くそいつが中学時代の俺の同級生だった柔道部員に話したところで昔の件がバレてしまった。

 正攻法では落ちないとのアドバイスまでも得たそいつは、柔道部のマネージャー2名と搦手を使ってきた。一人は大柄でスタイル抜群の美女タイプ、もう一人は小柄な可愛いアイドル系からの連日の勧誘攻撃を受け、ほとほと困りはてた俺は、普段の練習は勘弁してもらって半年に一度の県大会だけに出場することを条件として仮入部したのだった。

 元々の乱取り相手の部員と中学時代の同級生の2人は俺の実力はわかっているものの、居並ぶ先輩部員達はよく判っておらず、ふざけた奴との評判が立った。すかさず、2人は県大会への準備と称して先輩達を含めた部内試合を顧問先生に進言、聞き入れられて、俺はその試合に呼び出されることになった。抵抗したのだが、県大会の準備と言われてしまっては逆らえずに、一度だけとの約束で参加することに。そこから先は、黒帯の先輩全てを体捌きで躱し、足技で転がしたので、皆の目の色が変わったのだった。またやってしまったと後悔するも、もう遅かった。

 一年の時の夏の大会では、次鋒として出場し、団体戦で決勝まで勝ち残った。勝ち抜き戦ではなかったので決勝で敗れたのだが、その時に来ていた有力大学のコーチの目にとまってしまって大変なことになったのは後の話。懐かしいとため息をついたら、目が覚めた。こちらでは気持ちの良い朝が来ていた。

 俺は自分のステータスを確認してみることにした。こういう時のお定まりの呪文 ”ステータス・オープン”を唱えてみるが、残念ながら何にも出てこない。やっぱりゲームとは違うようだ。ふと、魔術師ギルドで貰った羊皮紙のことを思い出した。紙に血を垂らしてみると、少しだが浮かび上がってきた。でも、なんだかよくわからん・・・。

  魔法:△古×神×魔法 ×大(風・×・×・土)
     △古×神×魔法 ×用魔法 聖(×神・治×)・×体)
     △古×神×魔法 ×級4大(風・×・×・土)・上級×)
     △古×神×魔法 ×級魔法ー ×霊・×間・大×模 

  精霊:△×の大精霊王(×ンディーヌ):お目通し済
     △×の大精霊王(ザラ×ンデル):お目通し済
     △×の大精霊王(×ルフ):お目通し済
     △×の大精霊王(グ×ーム):お目通し済

  スキル:鑑定(P)、異文化言語(読み書き、P)、収納(P)、俊敏(A)
  所有:石(39)、キャンプ用具一式(道具・調味料・酒他)、魚
     本(錬金術大全、付与魔法大全、使役魔法大全、宝物地図や
       魔獣図鑑、草木図鑑、海獣図鑑など多数)、
     武器(切断(武具)、長剣、ハルバード、長槍、
     モーニングスター、ウォーハンマー、ダガー、長弓・矢、杖(黒
     檀)、盾、鎧など多数)
  称号:鍛治ギルド(ブライトン)技術顧問、酒蔵(ブライトン)技術顧問

  
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