第43話 商店通りの店舗

文字数 996文字

 その屋敷は街の商店通り沿いではあるものの、かなり離れて、通りの端に建っていた。2軒の宿屋と同じような規模の重厚な木造の2階屋であった。パティオとなっている中庭には馬屋と石造の井戸、その真ん中には大きな木が中央に茂っていた。

 母屋は前の世界の公民館くらいの大きさで、入り口から左手がダイニングとリビング、右手がホールになっており舞踏会でも出来そうな広さである。

 ホールの奥にはキッチンなどの水回りもかなり大きい。2階にはメインの大きな寝室と廊下を挟んで多くの個室が並んでいた。

 俺は技術顧問となった鍛治ギルドのギルド長ディルクに頼んで、街一番の大工の棟梁ゲイル(もちろんドワーフである)を紹介してもらっていた。ディルクによると仕事の丁寧さと速さは超一流でしかも土魔法の使い手のことだった。

 早速屋敷の内覧をした俺とゲイル(なぜかバネッサとドロシーもついて来ているが・・・なにかおかしいぞ)は1階の元ホール部分を店舗に、キッチンは新たにかまどや石造のオーブン釜、石焼ピザ釜、洗い場なども含めて改装することにした。予算は50金貨(5百万円相当)ゲイルは2週間もあればと請け負ってくれた。

 あとは、特別に1階のトイレ横を増築して風呂場を作ることにした。湯船は石造りで俺とゲイルが土魔法を使えばそんなに大変ではないようだし、洗い場と脱衣所も設ける予定。これでこの世界でもリラックスする場所ができるのだ。すごくうれしい。

 こうしてあっという間に2週間が経ち、ほぼ計画通りの改装が出来上がった。店舗の方はよかった。食品の販売コーナーと客席部分はしっかり出来上がっていた。しかし問題は住居である。俺自身は2階の大寝室に住むことに決めていた。しかし前の内覧についてきたバネッサとドロシーがどうしても個室に入りたいといいだしたのである。どうもおかしいという気がしていたのだが予感は当たったようだ。
 
 君たちの家は魔術師ギルドにあるだろう、お家に帰りなさいと説得しようとしたのだが、同じパーティーとしての利便性からも同じ家屋内に住むべきだと二人の意志は強硬で逆らうことは難しかった。さんざん粘られて根負けして、結局、家賃替わりに時間があるときには店舗と調理を手伝うことを条件として受け入れざるを得なかったのである。

 でも見方を変えれば、タダで二人分の労働力(テンポラリーだけど)を確保できたということでもあるな。


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