第37話 商業ギルドへの道(II)

文字数 1,547文字

 定番の甘味、お菓子はどうだろう、砂糖がほとんど流通していないので、はちみつとメープルシロップしか使えない。保存のことを考えるとパンドーロがよいかもしれない。イタリアのクリスマスに食べるお菓子で常温で3ヶ月は持つので冷蔵庫がないこちらにはぴったり。昔、祖母がシーズンになるとよく焼いてくれた。

 【パンドーロ】
パンドーロには、小麦粉、卵、塩、はちみつ、水とイーストが必要だが、ビール酵母で代用する。
 ・ぬるま湯にビール酵母、小麦粉、卵黄をよくまぜて冷所で半日以上寝かせる。
 ・酵母と卵と小麦粉をさらに加えてはちみつとともによく捏ねる。
 ・小麦粉、酵母と卵黄をさらに加えて捏ねる。ひたすら。
 ・少しあたたかいところで数時間発酵させる。
 ・型(これは鍛治ギルドで作って貰う予定)にいれて、1時間弱焼く。
 ・粉砂糖を振りかける。

 ・・・かなり難度が高い。熟練の技がいるやつだこれは。あと、最後に粉砂糖を振りかけるのは代用品が見つからないということでとりあえずは先送り。

 逆に、辛味のあるカレー関係はどうだろうか。香辛料は胡椒しか出回っていないようだ。まずは、コリアンダー、パプリカ、クミン、ターメリックなどを作ろう。

【各種香辛料】
 コリアンダーは、前の世界でタイではパクチー、中国ではシャンツァイと呼ばれていたハーブの葉や実を乾燥させたもの。パプリカは赤ピーマンの果肉を乾燥させて粉末、辛いものもあるが甘みがあるものが多かった。クミンは馬芹とも言われる草の実をそのままか粉末にして使う。前の世界ではインドや中東、スペイン料理にはかなり登場する頻度が高かった。ターメリックはうこんの名前でもしられている黄色いやつで生姜の仲間。根や茎を乾燥させて粉末にする。

 祖母の店では、いつも使っていたので馴染み深いし懐かしいのだ。そういえば、収納の中の本に草木図鑑があったと思い出した。

 皮表紙の本を開くと、この世界の草木の図説、主な植生地域などがぎっしりと載っている。すごい勢いで草木の名前、特徴、植生地域が頭に入ってきた。よし覚えたぞ。自分で採取に行きたいけど時間がなければ冒険者ギルドへ依頼を出すかな。

 最後に、燻製食品。
【燻製】
燻製は木のチップで燻すだけである。しかしこちらでは、元になる加工食品(ソーセージ、ベーコンやチーズ、生ハムなど)がないのである。とりあえず焼き魚(切り身)、塩ゆで肉、鶏むね肉、各種ステーキ肉、ゆで卵など、できるところから手をつけていこう。祖母から教わったかぎりでは、要は味付けして乾燥させた食材をフライパンに金網を敷いて置き、その底で桜やヒッコリーなどの木材チップを(フライパンには蓋をして)スモークするのである(80度が熱燻(短時間)、60度で1〜2時間の温燻、20度で長時間の冷燻の3種類がある)

さて、検討結果としては、以下の通りである。

 即商品化: チーズ(フレッシュー賞味期限が短いので工夫が必要)
       →ピザを作ろう!ヨーグルト、ピクルス、漬物、燻製食品
      (保存食品)
      
 少し先に商品化:香辛料(それぞれ原料(草や実など)をギルドを通じ
       採取する)

 だいぶ先で研究が必要:味噌、醤油、チーズ(固形)、パンドーロ

 とりあえず、商業ギルドから信頼の置ける商人を紹介してもらおう。それから
 販路を固めるのだ。レシピは最初は秘匿するつもり、ある程度創業者利益があがれば、後は同業者を募って売るかな。売るのはパンドーロのような季節商品だけで、日常の食として広まる可能性のある味噌、醤油、チーズ、ヨーグルトなどは最終的には公開してしまおう。先行している分で稼げるだろうし、ブライトンの特産物としての知名度と味の評判が高まっていけば十分だろう。


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