第15話 冒険者ギルド(3)

文字数 1,645文字

 1階の奥の格闘場は、屋内としては意外に広い。床には転んでも怪我をしないようにコルクのようなチップが敷き詰められていた。壁も木製の腰板がぐるりと貼られている。

 その中央にギルド指導員のジェームズが立っていた。2m 近い巨漢で元の世界のラグビーのフォワード選手のような体をしている。その太い腕には長い木刀が握られていた。

「体術が得意らしいな。なんでもいいから武器をとれ。」

 とジェームズ。

 俺は、壁にかかっていた短い木刀を握り、ジェームズの前に立った。いきなりの斬撃が頭を襲う。反射的に躱して、数メートル後ろに下がった。

「ほう〜、わしの太刀を初見で躱すとは、なかなかだな。それでは遠慮なくいかせてもらうぞ」 とジェームズが呟く。

 それからの数分は右、左、前、上、横・・・と連続での絶え間ない攻撃が続いた。しかし祖父との稽古に比べれば、かなりスピードも緩く、また連続技も大雑把で単調なものと感じられた。

 結果、少し余裕で見切れたので、最低限の動きで木刀で受け流したり、スエーバックのように体で躱して過ごした。それがジェームズにはかなりの驚きだったようだ。

「もう良い。十分に判った。お前の体術は一流だな。どこで身につけたか判らんが、わしの太刀筋を完全に見切っておる。」

 ジェームズは木刀を下ろすと、賞賛の声を上げた。体術のテストに合格したらしい。

「ランクには直接は反映しないが、特例として依頼については3ランク上まで受けられるようにしておく。 要するにD ランクの依頼まで受諾できるからな。」

 多分、今後のことを思うとありがたい処置だろう。初心者ランクのGやF では、ペット探しや薬草摘みなどの依頼が多いようだから、 スキップしてのD ランク依頼であれば魔物や魔獣狩りもできるようだ。

 ジェームズに一礼して、格闘場を後にした。そういえば、森で倒したエミューラプトルと魔うさぎ、魔狼のウルフェンが収納に入っている。忘れていた。 カウンターで換金することにした。

 買取担当のトーマスにエミューラプトルの巨体と数羽の魔うさぎに加えて数匹のウルフェンを出したところ、かなり驚かれた。エミューラプトルはCランクの魔獣、魔うさぎはD ランク、ウルフェンは単体でC だが群であるとB ランクになるようだ。

 いずれの魔獣にも、肉、革、牙(ウルフェン)、魔石が備わっており、それぞれ価値としてはそれなりのレベルらしい。結局精算はこのようになった。 合計で28金貨(280万円相当)だ。命を賭けているのだから、相応の価値はあって当然だけどね。ギルドのカードにチャージしてもらった。

 <精算内容>

 エミューラプトル 個数1 計 5金貨 (50万円相当)
 肉: 1金貨 (半分は自分用に残し収納へ)
 革・嘴: 2金貨
 魔石: 2金貨

 魔うさぎ 個数5 計 3金貨 
 肉: 20銀貨x5
 革: 20銀貨x5
 魔石:20銀貨x5

 ウルフェン 個数5 計 20金貨 
 肉: 40銀貨 x8
 革: 80銀貨x8
 牙: 50銀貨x8
 魔石 80銀貨x8

 すると、魔物討伐の実績値がカウントされたのか、自分のバッチを見ると交換のサインが浮き出ている。受付のアンナには少し呆れられたが、その実績からいきなりF ランクへ昇格し、南洋材のチークでできたバッチと交換になった。

 チークを木だといってもバカにしてはいけない。昔からとにかく丈夫で虫害や塩害にも強い材木として船の甲板に使われたりしている高級木材である。自然な油分を少し含んでいていつまでも新鮮な状態を保てる素材なのだ。

 元の世界では床材(フローリング)としてほぼ最強に近い地位にあったものだ。 祖母の店の常連客の大工の棟梁がよく話していた。ちなみに床材は大きくは針葉樹と広葉樹で別れていて、針葉樹(杉が代表格)は柔らかくて暖かい肌触りだが傷つきやすく、広葉樹(桧、楢など)は硬いが傷つきにくく、その真ん中でいい感じなのがチークであった。少し脱線した、今はあまり関係ないか・・・。



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