第16話 鳩子さんがやってきた
文字数 2,103文字
「意外と映える?」
「映えるよ! 皿もレトロでかわいい!」
午後からが女子大生の客が二人やってきて、キャッキャとパンケーキやコーヒーに写真を撮っていた。
最近くるようになった二人組だ。語彙は見事に「映える」「かわいい」「レトロ」ばっかりだが、楽しそうで何よりだ。こうして撮った写真をSNSであげてくれれば、店の宣伝にもなる。
隣町の江田町にある女子大の学生のようで、大学生活の話題もしていた。オンライン授業も多く、こんな風にカフェでも行かないとストレスで死にそうっていう愚痴だった。コロナ渦はいい加減にして欲しいと本音もこぼしていた。その点については杏奈も共感しかない。
「店長さーん、この店はあんまり感染症対策やってないね?」
女子大生の客の一人・ミキが話しかけてきた。自己紹介されたわけではないが、名前も覚えてしまっていた。
「まあ、めんどくさいしね。一応ポーズのようにやってもいいけど、コロナ怖い人をターゲットにしてもあんまり儲からないって気づいたのよねぇ」
「なるほど。超ウケる」
もう一人の女子大生客・アスカは何がおもしろいのか爆笑していた。
「コロナは茶番で普通の風邪なんだって」
「何それ、アスカ。陰謀論じゃん!」
ミキも大笑いしていた。少々うるさいが、他の店だと「黙食」が徹底されているとも聞く。
この店でがそう言ったルールも作っていない。やっぱりお茶やお菓子を楽しむ時間は、くだらない意味の無いルールからは解放されて欲しいと杏奈は思う。
実際、杏奈もコロナになっていないし、この店がクラスターの中心地にもなっていない。冷静に考えれば無意味な感染症対策やルールばかりだと杏奈は感じる。杏奈は合理性も低い事は極力やりたくない性格だった。我ながら女子っぽさ皆無の可愛げの無い性格だと思うが、心のどこかが冷めている気もした。
「鳩子さん!」
そんな杏奈でも夕方ごろ、鳩子が店にやってきた時は、やっぱり心が乱された。
他に客がいない事がいい事にカウンター席に座った鳩子と少し話す事にした。
「大丈夫だった? ミケ子は……」
「うん、本当にしんどいので、何か暖かくて甘い飲み物でもくれる?」
杏奈はすぐに厨房にいき、ホットココアを作って鳩子に持っていった。やっぱりこういう時は、ホットココアが良い。
「まあ、嬉しい。安らぐわぁ」
鳩子はホットココアをちびちびと啜った。心なしかトレードマークのグレーヘアも萎んでいりように見えた。いつものようにセットしている様子も無い。
鳩子はミケ子の死体の第一発見者が杏奈や藤也という事は、知らなようだった。その証拠にミケ子は、自然死だと思い込んでいた。警察からそう説明されたらしい。
どういう事?
あれはどう考えても他殺体。もちろん専門家では無いからわからないが、あんな魔法陣みたいなものの上に死体があるなんて、どう考えても不自然だ。
ちょっと端が剥げているカウンター席のテーブルを見て、少し杏奈は冷静さを保つ。ここで、騒いでも良い事は一つも無いだろう。
「本当に警察がそういったの?」
「ええ。それにちゃんと面倒を見ていない飼い主の私が悪いんですって」
「そんな、そんな事言ったの? あり得ない」
話を詳しく聞くと担当の刑事は空谷らしい。やっぱりあの男は何か隠している。今更ながら現場の写真を撮らなかった事を後悔した。
そういえば高校生のとき、痴漢を捕まえて警察に突き出した事もあったが、「お前が短いスカートはいてるからだろ!」と逆に怒られた事を思い出す。
女子高生が短いスカートがはかないでいつはくわけ?っていうか男のためにスカートはいてるわけじゃないんですけど!と言い返したわけだが、飼っていた猫を失った鳩子がそんな風に言い返せるわけもない。杏奈も同じ立場だったら、きっと同じ反応だろう。
杏奈の中で警察への信頼感はガラガラと崩れていた。そういえば陰謀論SNSでは警察はカルトと関わりが深いとも書いてあったけど、あながち間違いでもない?
空谷がカルト信者で何か隠していたりする?
そこまで考えては見たが、こんあアタオカ陰謀論を鳩子に言うわけにもいかない。
「他に何か私にできる事ない?」
「そうねぇ。パウンドケーキ頂いていこうかしら」
「だったら余ってるの全部持っていちゃって。破棄するのも気が重いし」
昨日はパウンドケーキは完売だったが、今日はあまってしまった。ロスを出さずにできるのが一番良いが、そういうわけにはいかない。
杏奈はパウンドケーキを箱に詰めて袋に入れて鳩子に渡した。
「嬉しいわ」
「いいのよ。それと、何か気になる事とかない?」
別に探偵とか警察の真似事をしたいわけではないが、ミケ子を殺した犯人を突き止めたくなってしまった。余計なお節介だとは思ったが、弱っている鳩子を見ていると、警察の態度に怒りを感じる。
「そうねぇ。そういえば女子高生っぽい子にミケ子の事は気をつけてって言われた事があるんだけど」
「女子高生?」
「ええ。何か関係あるのかしら」
杏奈もわからない。
ただ、何か関係あるかもしれないと思ってメモ帳に記録しておいた。
・女子高生が鳩子さんに忠告? 何か知ってるの?
「映えるよ! 皿もレトロでかわいい!」
午後からが女子大生の客が二人やってきて、キャッキャとパンケーキやコーヒーに写真を撮っていた。
最近くるようになった二人組だ。語彙は見事に「映える」「かわいい」「レトロ」ばっかりだが、楽しそうで何よりだ。こうして撮った写真をSNSであげてくれれば、店の宣伝にもなる。
隣町の江田町にある女子大の学生のようで、大学生活の話題もしていた。オンライン授業も多く、こんな風にカフェでも行かないとストレスで死にそうっていう愚痴だった。コロナ渦はいい加減にして欲しいと本音もこぼしていた。その点については杏奈も共感しかない。
「店長さーん、この店はあんまり感染症対策やってないね?」
女子大生の客の一人・ミキが話しかけてきた。自己紹介されたわけではないが、名前も覚えてしまっていた。
「まあ、めんどくさいしね。一応ポーズのようにやってもいいけど、コロナ怖い人をターゲットにしてもあんまり儲からないって気づいたのよねぇ」
「なるほど。超ウケる」
もう一人の女子大生客・アスカは何がおもしろいのか爆笑していた。
「コロナは茶番で普通の風邪なんだって」
「何それ、アスカ。陰謀論じゃん!」
ミキも大笑いしていた。少々うるさいが、他の店だと「黙食」が徹底されているとも聞く。
この店でがそう言ったルールも作っていない。やっぱりお茶やお菓子を楽しむ時間は、くだらない意味の無いルールからは解放されて欲しいと杏奈は思う。
実際、杏奈もコロナになっていないし、この店がクラスターの中心地にもなっていない。冷静に考えれば無意味な感染症対策やルールばかりだと杏奈は感じる。杏奈は合理性も低い事は極力やりたくない性格だった。我ながら女子っぽさ皆無の可愛げの無い性格だと思うが、心のどこかが冷めている気もした。
「鳩子さん!」
そんな杏奈でも夕方ごろ、鳩子が店にやってきた時は、やっぱり心が乱された。
他に客がいない事がいい事にカウンター席に座った鳩子と少し話す事にした。
「大丈夫だった? ミケ子は……」
「うん、本当にしんどいので、何か暖かくて甘い飲み物でもくれる?」
杏奈はすぐに厨房にいき、ホットココアを作って鳩子に持っていった。やっぱりこういう時は、ホットココアが良い。
「まあ、嬉しい。安らぐわぁ」
鳩子はホットココアをちびちびと啜った。心なしかトレードマークのグレーヘアも萎んでいりように見えた。いつものようにセットしている様子も無い。
鳩子はミケ子の死体の第一発見者が杏奈や藤也という事は、知らなようだった。その証拠にミケ子は、自然死だと思い込んでいた。警察からそう説明されたらしい。
どういう事?
あれはどう考えても他殺体。もちろん専門家では無いからわからないが、あんな魔法陣みたいなものの上に死体があるなんて、どう考えても不自然だ。
ちょっと端が剥げているカウンター席のテーブルを見て、少し杏奈は冷静さを保つ。ここで、騒いでも良い事は一つも無いだろう。
「本当に警察がそういったの?」
「ええ。それにちゃんと面倒を見ていない飼い主の私が悪いんですって」
「そんな、そんな事言ったの? あり得ない」
話を詳しく聞くと担当の刑事は空谷らしい。やっぱりあの男は何か隠している。今更ながら現場の写真を撮らなかった事を後悔した。
そういえば高校生のとき、痴漢を捕まえて警察に突き出した事もあったが、「お前が短いスカートはいてるからだろ!」と逆に怒られた事を思い出す。
女子高生が短いスカートがはかないでいつはくわけ?っていうか男のためにスカートはいてるわけじゃないんですけど!と言い返したわけだが、飼っていた猫を失った鳩子がそんな風に言い返せるわけもない。杏奈も同じ立場だったら、きっと同じ反応だろう。
杏奈の中で警察への信頼感はガラガラと崩れていた。そういえば陰謀論SNSでは警察はカルトと関わりが深いとも書いてあったけど、あながち間違いでもない?
空谷がカルト信者で何か隠していたりする?
そこまで考えては見たが、こんあアタオカ陰謀論を鳩子に言うわけにもいかない。
「他に何か私にできる事ない?」
「そうねぇ。パウンドケーキ頂いていこうかしら」
「だったら余ってるの全部持っていちゃって。破棄するのも気が重いし」
昨日はパウンドケーキは完売だったが、今日はあまってしまった。ロスを出さずにできるのが一番良いが、そういうわけにはいかない。
杏奈はパウンドケーキを箱に詰めて袋に入れて鳩子に渡した。
「嬉しいわ」
「いいのよ。それと、何か気になる事とかない?」
別に探偵とか警察の真似事をしたいわけではないが、ミケ子を殺した犯人を突き止めたくなってしまった。余計なお節介だとは思ったが、弱っている鳩子を見ていると、警察の態度に怒りを感じる。
「そうねぇ。そういえば女子高生っぽい子にミケ子の事は気をつけてって言われた事があるんだけど」
「女子高生?」
「ええ。何か関係あるのかしら」
杏奈もわからない。
ただ、何か関係あるかもしれないと思ってメモ帳に記録しておいた。
・女子高生が鳩子さんに忠告? 何か知ってるの?
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