第17話 囮大作戦!?
文字数 2,745文字
杏奈は仕事を終えると、藤也の教会に直行した。ミャーを迎えにいく為だ。
鳩子の言っていた女子高生が何か知っているのは間違いなさそうだ。ただ、女子高生なんてこの町にもたくさん住んでいる。運良くその女子高生に会えたとしても、正直に事情を話してくれるかわからない。それに犯人かどうかもわからない。
今日店に来ていた女子高生らしき客は何か知っていたりするのだろうか。少し怪しい?ただ、猫を殺した犯人にも見えないし、確証もなにもない。
警察は信用できない。空谷がカルト信者とか、カルトと警察が関わっている事は定かではないが、ミケ子を殺した犯人を捕まえられると思えない。今現在行方不明になっているナァちゃんがいる事も気になる。
別に探偵とか全く興味はない杏奈だが、このままにしておくわけには行かない。藤也とミャーに意見を聞いても良いかもしれない。
そんな事を考えつつ、教会の階段をあがり、礼拝堂に入る。
ミャーと藤也が何か騒いでもいるのが聞こえた。
『いや! 銃価の会堂に入って生贄儀式の証拠持ってくるなんて! 私が殺されるかもしれないのよ?』
「そこを何とか考えてくれよ。ミャーは一見猫なんだから、簡単に出来るだろう?」
『いや! 囮じゃん!』
「ちょっとミャー達、何を揉めているのよ」
テーブルで揉めている藤也とミャーに杏奈は割って入った。ミャーは毛を逆撫でて怒っていた。
詳しく話を聞くと、さっきまでミケ子の事件を藤也とミャーで話しあっていたらしい。
やっぱりミケ子を殺したのはカルト・銃価教会の犯行だと結論づけた藤也とミャーだった。どうやって証拠を掴もうかと考えていたところ、藤也がミャーが囮になって銃価に潜入調査すれば良いと考えた。ミャーは身の危険が及ぶ囮調査なんて絶対したくないと言い揉めているらしかった。
「ちょっと、そんな事で揉めてたの?」
杏奈は呆れてしまった。ミャーを囮に使うなんて杏奈も反対だし、カルトが関わっているというのも陰謀論だ。確実な証拠はない。
それにこうして藤也とミャーが揉めているのも心が痛む。二人で伝道や宣教をしようと燃えていたのに。
「藤也もミャーもちょっと疲れているのよ。少し休憩しましょう」
杏奈はそう提案し、宅配ピザをとる事がした。ミャーは別に食べ物は必要ないが、キャットフードを開けて出してやった。ミャーを運んだキャリリーバッグのは猫用のトイレやおもちゃの他に一応キャットフードをいれておいた。無駄な女子力が、こんな時のは役立つようだ。
ピザとポテト、チキン、コーラを食べて不機嫌になる人間は滅多にいないだろう。陰謀論好きの藤也はブツブツと添加物や宅配ピザの大企業はイルミナティと文句をつけていたが、香ばしいチーズが溶ける香りには負けたようだった。
ちなみに杏奈の全額奢りである。一銭も出す素振りのない藤也に一瞬イラッとしたが、ミャーをカルトの会堂なんかには行かせられない。これで少しは気分が治れば良いのだが。
「意外と不味くないな」
藤也は口元をピザソースだらけにして呟く。
「素直に美味しいって言ったらどうなの? 素直じゃないな」
杏奈は苦笑してしまうが、久々に食べたジャンキーなピザは、不味くはない。女子力のカケラもない料理が、メンタルには幸福感をは運んでくる。そのかわり、明日の朝は胃もたれ決定だし、酷い場合はニキビができているかもしれないが。
ミャーもエサを食べて少し落ち着いてきた。別に栄養素を摂っているわけでは無いだろうが、とりあえず食べると機嫌は良くなるようだ。そういえば高級キャットフードをあげると機嫌が良くなっていたのを思い出す。カフェ店長としても美味しいもの食べて幸せそうな藤也とミャーを見ているのはいい気分だ。別に鼻歌とかは出てこないが。
「ところで、本当にミケ子を殺した犯人は銃価に連中なの?」
「そうさ。2013年の秋にもT県のM町で猫が大量に殺されている。長年やっていたようでM町の銃価の会堂跡地には、猫の骨はいっぱい埋まっているのが発見されている」
「え、本当?」
藤也はてっきり証拠などない陰謀論を披露するのかと思ったら、これは証拠つきだった。杏奈はスマートフォンを取り出してネットで調べてみたが、藤也の言っていた事は大手ニュースサイトに掲載されていた。
ただ、実行犯の信者が逮捕されただけだったので、銃価教会の組織的犯行とはされなかったらしい。実行犯のカルト信者達もどっぷり洗脳されていたため、銃価の教祖や幹部達を悪く言えなかったらしい。まあ、このあたりは藤也の陰謀論だが、警察にも銃価の信者が大いため、本当は教祖や幹部達の犯行を末端の信者に濡れ衣を着せた可能性もあるという。
「いやね、カルトって」
『そうよ、最低。さっさと神仲直りすれば、こんな事にはならないのに!』
再びミャーは怒り始めて毛を逆撫でる。ますますこんなカルトの内部にミャーを行かせるわけにはいかない。
「藤也、ダメよ。ミャーに囮調査だなんて」
杏奈はミャーを膝の上に抱えて、釘を刺した。
「ただ、銃価の可能性もあるのかなぁ。今日、ミケ子の飼い主の鳩子さんにあったんだけど、警察からは自然死って言われたんだって」
「なんだって!」
『何ですって!』
藤也もミャーも驚いていた。しかし、すぐに笑えない事に気づいて真顔になる。
『あれはどう見ても殺しよ。自然であんなところで死ぬ?」
「しかもあの猫のそばには魔法陣があった。悪魔崇拝生贄儀式に決まってるぜ」
藤也はピザの耳にかぶりついて、イライラとしたように咀嚼していた。箱に入ったピザはすっかり空っぽだ。
杏奈が油をどっさり吸い込んだシナシナのポテトを摘む。ポテトはピザより美味しくない。それでも何となくセットで注文してしまうのは、不思議なものだ。
「そもそも悪魔生贄儀式って何なのよ?どういい事よ?」
その事については杏奈がさっぱりわからない。猫を殺してどうなるっていうのか。単なる死体になるだけじゃないか。だとしたら、スーパーぬある魚や肉でも捧げればいいじゃないか。合理的な杏奈は、そんな事をする理由がさっぱりわからない。
「だったらこの優秀な俺が、悪魔崇拝生贄儀式について説明してやるよ!」
藤也がウキウキとした声を出しながら、礼拝室の隣にある面談室からホワイトボードを転がして持ってきた。軽くスキップまでしている。藤也はご機嫌だという事は伝わってくるが。
「は?」
杏奈は目が点になるが、ミャーは嬉しそうにミーミー鳴いていた。
「杏奈よ、ようこそ。牧師が語るディープな陰謀論の世界へ」
まるでこれから舞台で劇でも始める役者のように、藤也は恭しくお辞儀をした。
まるで水を得た魚のようだった。この姿は、2ヶ月ぐらい寝不足の坂口健太郎に見えた。
鳩子の言っていた女子高生が何か知っているのは間違いなさそうだ。ただ、女子高生なんてこの町にもたくさん住んでいる。運良くその女子高生に会えたとしても、正直に事情を話してくれるかわからない。それに犯人かどうかもわからない。
今日店に来ていた女子高生らしき客は何か知っていたりするのだろうか。少し怪しい?ただ、猫を殺した犯人にも見えないし、確証もなにもない。
警察は信用できない。空谷がカルト信者とか、カルトと警察が関わっている事は定かではないが、ミケ子を殺した犯人を捕まえられると思えない。今現在行方不明になっているナァちゃんがいる事も気になる。
別に探偵とか全く興味はない杏奈だが、このままにしておくわけには行かない。藤也とミャーに意見を聞いても良いかもしれない。
そんな事を考えつつ、教会の階段をあがり、礼拝堂に入る。
ミャーと藤也が何か騒いでもいるのが聞こえた。
『いや! 銃価の会堂に入って生贄儀式の証拠持ってくるなんて! 私が殺されるかもしれないのよ?』
「そこを何とか考えてくれよ。ミャーは一見猫なんだから、簡単に出来るだろう?」
『いや! 囮じゃん!』
「ちょっとミャー達、何を揉めているのよ」
テーブルで揉めている藤也とミャーに杏奈は割って入った。ミャーは毛を逆撫でて怒っていた。
詳しく話を聞くと、さっきまでミケ子の事件を藤也とミャーで話しあっていたらしい。
やっぱりミケ子を殺したのはカルト・銃価教会の犯行だと結論づけた藤也とミャーだった。どうやって証拠を掴もうかと考えていたところ、藤也がミャーが囮になって銃価に潜入調査すれば良いと考えた。ミャーは身の危険が及ぶ囮調査なんて絶対したくないと言い揉めているらしかった。
「ちょっと、そんな事で揉めてたの?」
杏奈は呆れてしまった。ミャーを囮に使うなんて杏奈も反対だし、カルトが関わっているというのも陰謀論だ。確実な証拠はない。
それにこうして藤也とミャーが揉めているのも心が痛む。二人で伝道や宣教をしようと燃えていたのに。
「藤也もミャーもちょっと疲れているのよ。少し休憩しましょう」
杏奈はそう提案し、宅配ピザをとる事がした。ミャーは別に食べ物は必要ないが、キャットフードを開けて出してやった。ミャーを運んだキャリリーバッグのは猫用のトイレやおもちゃの他に一応キャットフードをいれておいた。無駄な女子力が、こんな時のは役立つようだ。
ピザとポテト、チキン、コーラを食べて不機嫌になる人間は滅多にいないだろう。陰謀論好きの藤也はブツブツと添加物や宅配ピザの大企業はイルミナティと文句をつけていたが、香ばしいチーズが溶ける香りには負けたようだった。
ちなみに杏奈の全額奢りである。一銭も出す素振りのない藤也に一瞬イラッとしたが、ミャーをカルトの会堂なんかには行かせられない。これで少しは気分が治れば良いのだが。
「意外と不味くないな」
藤也は口元をピザソースだらけにして呟く。
「素直に美味しいって言ったらどうなの? 素直じゃないな」
杏奈は苦笑してしまうが、久々に食べたジャンキーなピザは、不味くはない。女子力のカケラもない料理が、メンタルには幸福感をは運んでくる。そのかわり、明日の朝は胃もたれ決定だし、酷い場合はニキビができているかもしれないが。
ミャーもエサを食べて少し落ち着いてきた。別に栄養素を摂っているわけでは無いだろうが、とりあえず食べると機嫌は良くなるようだ。そういえば高級キャットフードをあげると機嫌が良くなっていたのを思い出す。カフェ店長としても美味しいもの食べて幸せそうな藤也とミャーを見ているのはいい気分だ。別に鼻歌とかは出てこないが。
「ところで、本当にミケ子を殺した犯人は銃価に連中なの?」
「そうさ。2013年の秋にもT県のM町で猫が大量に殺されている。長年やっていたようでM町の銃価の会堂跡地には、猫の骨はいっぱい埋まっているのが発見されている」
「え、本当?」
藤也はてっきり証拠などない陰謀論を披露するのかと思ったら、これは証拠つきだった。杏奈はスマートフォンを取り出してネットで調べてみたが、藤也の言っていた事は大手ニュースサイトに掲載されていた。
ただ、実行犯の信者が逮捕されただけだったので、銃価教会の組織的犯行とはされなかったらしい。実行犯のカルト信者達もどっぷり洗脳されていたため、銃価の教祖や幹部達を悪く言えなかったらしい。まあ、このあたりは藤也の陰謀論だが、警察にも銃価の信者が大いため、本当は教祖や幹部達の犯行を末端の信者に濡れ衣を着せた可能性もあるという。
「いやね、カルトって」
『そうよ、最低。さっさと神仲直りすれば、こんな事にはならないのに!』
再びミャーは怒り始めて毛を逆撫でる。ますますこんなカルトの内部にミャーを行かせるわけにはいかない。
「藤也、ダメよ。ミャーに囮調査だなんて」
杏奈はミャーを膝の上に抱えて、釘を刺した。
「ただ、銃価の可能性もあるのかなぁ。今日、ミケ子の飼い主の鳩子さんにあったんだけど、警察からは自然死って言われたんだって」
「なんだって!」
『何ですって!』
藤也もミャーも驚いていた。しかし、すぐに笑えない事に気づいて真顔になる。
『あれはどう見ても殺しよ。自然であんなところで死ぬ?」
「しかもあの猫のそばには魔法陣があった。悪魔崇拝生贄儀式に決まってるぜ」
藤也はピザの耳にかぶりついて、イライラとしたように咀嚼していた。箱に入ったピザはすっかり空っぽだ。
杏奈が油をどっさり吸い込んだシナシナのポテトを摘む。ポテトはピザより美味しくない。それでも何となくセットで注文してしまうのは、不思議なものだ。
「そもそも悪魔生贄儀式って何なのよ?どういい事よ?」
その事については杏奈がさっぱりわからない。猫を殺してどうなるっていうのか。単なる死体になるだけじゃないか。だとしたら、スーパーぬある魚や肉でも捧げればいいじゃないか。合理的な杏奈は、そんな事をする理由がさっぱりわからない。
「だったらこの優秀な俺が、悪魔崇拝生贄儀式について説明してやるよ!」
藤也がウキウキとした声を出しながら、礼拝室の隣にある面談室からホワイトボードを転がして持ってきた。軽くスキップまでしている。藤也はご機嫌だという事は伝わってくるが。
「は?」
杏奈は目が点になるが、ミャーは嬉しそうにミーミー鳴いていた。
「杏奈よ、ようこそ。牧師が語るディープな陰謀論の世界へ」
まるでこれから舞台で劇でも始める役者のように、藤也は恭しくお辞儀をした。
まるで水を得た魚のようだった。この姿は、2ヶ月ぐらい寝不足の坂口健太郎に見えた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)
(ログインが必要です)