第27話 耳の痛い話
文字数 2,187文字
教会から自宅に帰った杏奈は、お湯を沸かしてお茶を飲む準備をしていた。
今日はルイボスティーを飲む事にした。
昨日は意外と藤也が女子力高めなハーブティーを飲んでいて負けた気がした。藤也に負けるのはちょっと悔しいので、今日は意識高めなオーガニックのルイボスティーを淹れる。
ルイボスティーができたらリビングに持っていって、ソファに座る。すでにミャーもソファに寝そべっていて、だらけた表情を見せていた。
杏奈はメモ帳を取り出して、もう一度ミャーから坂口家での偵察について詳しく聞く。信じられない話だったので、心を落ち着かせて聞きたい。藤也はこの話を聞いたら興奮して大騒ぎし、きちんと聞けなかった。
「本当に本当に真っ白な猫がいたの?」
『いたわよ。ふわふわでかなり毛並みが良かったわね』
ミャーは猫語もわかるので、坂口の目を盗んで白猫に話しかけたらしい。
「猫語もわかるねぇ」
『猫語だけね。犬語や鳥語は知らないわ。猫語でも訛りが強い子とか、子猫はわかんないけどね。白猫の名前はナァって言ってた』
この話を聞いてどうたら長谷川の猫・ナァが生きている事がわかりホッとした。
「でも、なんでナァちゃんが坂口の家にいるの?」
『それはナァもわからないって言ってた。ナァは人間の言葉はわからないからね』
「猫は人の言葉はわからないの?」
杏奈はルイボスティーをゆっくりとすする。安いルイボスティーはちょっと薬っぽい感じもするが、これはまろやかだ。
『普通の猫は人間の言葉はわからないわよ』
「そうなんだ。まあ、そうでしょうね」
『私が特殊なのよ。でもナァに詳しく話を聞いたら、虐められたりはしていないみたい。むしろ高級キャットフードくれるって』
「ミャー、ちょっとジト目になってない? そういえばあなた、食べる必要ないのに、高級キャットフード大好きよね……」
『まあ、それはいいけど、坂口家はかなり冷え切っている見たい。特に娘は、よく家出しているとか。まあ、確かに銃価の集まりに強制参加させているみたいで可哀想ではあるわね』
そんな話を聞くと娘には同情心を持ってしまった。
杏奈がミャーから聞いた情報をメモ帳に書き留めてみたが、ミケ子殺しとどう繋がっていくのか、イマイチわからない。
坂口がミケ子殺しに関わっているのなら、なぜナァは大事に飼っているのかもわからない。ナァが無事なのはホッとしたが、事件との繋がりはかえってよくわからなくなってしまった。
「他に何かわかった事ない?」
『無いわね。坂口の家は銃価信者の溜まり場みたいで、あんまり長居も出来なかったのよ』
「そっか」
少し行き詰まってしまった。
『ま、ナァが無事だったのはいいじゃない』
「でも、この町で猫が次々と居なくなっている見たいなの。この件は何かわかる?」
『初耳よ。どういう事?』
杏奈は今日、町の住人から聞いた情報をミャーと共有した。
『そう。猫がいなくなっているのね……』
ミャーは本当に人間っぽい苦い表情を浮かべていた。
『ただ、いくら銃価でも町中の猫を捕まえるのは無理でしょ。ぜったバレるわ』
「だったら誰がやっているの?」
温かいルイボスティーを飲んでいるのに、この事件は何かバッグに恐ろしいものも居るような気がしてちょっと寒くなってくる。
『猫たちが自分から逃げてる可能性もあるわ』
「どう言う事? ミケ子が殺されて動物的カンでも働いたって事?』
『それもあると思うけど』
ここでミャーは天上を見上げた。ちょっと天を仰いでいるようにも見えた。
『前にも言ったでしょ。猫達は人の罪深さにうんざりしているのよ。もともと巻き添えを食ったわけだしね』
「その理屈はわかるけど」
人間には罪があるなんて、やっぱり一般的日本人の杏奈はピンとはこない。ただ、こんな話を聞くと猫達が無言で何かを訴えているようにも感じた。
『ぶっちゃけこの事件を解決する方法は超カンタンよ!』
やけにミャーは明るい声を出す。
『神様にごめんなさいって悔い改めて、真っ当な生き方をする。そうすれば、全部解決ね!』
「ちょ、スケールが大きすぎるよ……」
そう突っ込んではみたが、確かに「敵を愛せ」なんて言う神様を心から信じれば、社会は悪くなりようがない。犯罪も減りそうだ。
こんな事件が起きたり、いじめや詐欺みたいな悪い事もあるんだろう。やっぱり人々が欲深く自分の事ばかり考えているせいだろうか? キリスト教のいう罪のせい?
「私も損得勘定しすぎなところがあったわ……」
キリスト教のいう罪はわからないが、自分は至らないところにあるただの人間である事はわかる。
『あら、杏奈。自分の悪いところに気づいてきたのね。ノンクリスチャンの割には、よく気付けたわ』
「そうかなー」
『自分の悪いところに気づけないと成長はできないわ』
確かにそうかもしれない。英語教師として働いている時「1週間でペラペラになる英会話」「ドラマで覚える英会話」と言った学習教材にこだわっている生徒がいて、「それは商品を売るための詐欺教材だから、コツコツ英単語覚えなさい!」と注意しても頑なに聞かない生徒がいた。当然、耳に優しい教材ばかり選んだ生徒は英語の成績も全く上がらなかった。耳の痛い事を聞かずに成長は無いのかもしれない。
『だから、杏奈。神様と和解しなさい!』
ミャーはドヤ顔で胸を張って言った。この言葉もけっこう耳が痛いなと感じた。
今日はルイボスティーを飲む事にした。
昨日は意外と藤也が女子力高めなハーブティーを飲んでいて負けた気がした。藤也に負けるのはちょっと悔しいので、今日は意識高めなオーガニックのルイボスティーを淹れる。
ルイボスティーができたらリビングに持っていって、ソファに座る。すでにミャーもソファに寝そべっていて、だらけた表情を見せていた。
杏奈はメモ帳を取り出して、もう一度ミャーから坂口家での偵察について詳しく聞く。信じられない話だったので、心を落ち着かせて聞きたい。藤也はこの話を聞いたら興奮して大騒ぎし、きちんと聞けなかった。
「本当に本当に真っ白な猫がいたの?」
『いたわよ。ふわふわでかなり毛並みが良かったわね』
ミャーは猫語もわかるので、坂口の目を盗んで白猫に話しかけたらしい。
「猫語もわかるねぇ」
『猫語だけね。犬語や鳥語は知らないわ。猫語でも訛りが強い子とか、子猫はわかんないけどね。白猫の名前はナァって言ってた』
この話を聞いてどうたら長谷川の猫・ナァが生きている事がわかりホッとした。
「でも、なんでナァちゃんが坂口の家にいるの?」
『それはナァもわからないって言ってた。ナァは人間の言葉はわからないからね』
「猫は人の言葉はわからないの?」
杏奈はルイボスティーをゆっくりとすする。安いルイボスティーはちょっと薬っぽい感じもするが、これはまろやかだ。
『普通の猫は人間の言葉はわからないわよ』
「そうなんだ。まあ、そうでしょうね」
『私が特殊なのよ。でもナァに詳しく話を聞いたら、虐められたりはしていないみたい。むしろ高級キャットフードくれるって』
「ミャー、ちょっとジト目になってない? そういえばあなた、食べる必要ないのに、高級キャットフード大好きよね……」
『まあ、それはいいけど、坂口家はかなり冷え切っている見たい。特に娘は、よく家出しているとか。まあ、確かに銃価の集まりに強制参加させているみたいで可哀想ではあるわね』
そんな話を聞くと娘には同情心を持ってしまった。
杏奈がミャーから聞いた情報をメモ帳に書き留めてみたが、ミケ子殺しとどう繋がっていくのか、イマイチわからない。
坂口がミケ子殺しに関わっているのなら、なぜナァは大事に飼っているのかもわからない。ナァが無事なのはホッとしたが、事件との繋がりはかえってよくわからなくなってしまった。
「他に何かわかった事ない?」
『無いわね。坂口の家は銃価信者の溜まり場みたいで、あんまり長居も出来なかったのよ』
「そっか」
少し行き詰まってしまった。
『ま、ナァが無事だったのはいいじゃない』
「でも、この町で猫が次々と居なくなっている見たいなの。この件は何かわかる?」
『初耳よ。どういう事?』
杏奈は今日、町の住人から聞いた情報をミャーと共有した。
『そう。猫がいなくなっているのね……』
ミャーは本当に人間っぽい苦い表情を浮かべていた。
『ただ、いくら銃価でも町中の猫を捕まえるのは無理でしょ。ぜったバレるわ』
「だったら誰がやっているの?」
温かいルイボスティーを飲んでいるのに、この事件は何かバッグに恐ろしいものも居るような気がしてちょっと寒くなってくる。
『猫たちが自分から逃げてる可能性もあるわ』
「どう言う事? ミケ子が殺されて動物的カンでも働いたって事?』
『それもあると思うけど』
ここでミャーは天上を見上げた。ちょっと天を仰いでいるようにも見えた。
『前にも言ったでしょ。猫達は人の罪深さにうんざりしているのよ。もともと巻き添えを食ったわけだしね』
「その理屈はわかるけど」
人間には罪があるなんて、やっぱり一般的日本人の杏奈はピンとはこない。ただ、こんな話を聞くと猫達が無言で何かを訴えているようにも感じた。
『ぶっちゃけこの事件を解決する方法は超カンタンよ!』
やけにミャーは明るい声を出す。
『神様にごめんなさいって悔い改めて、真っ当な生き方をする。そうすれば、全部解決ね!』
「ちょ、スケールが大きすぎるよ……」
そう突っ込んではみたが、確かに「敵を愛せ」なんて言う神様を心から信じれば、社会は悪くなりようがない。犯罪も減りそうだ。
こんな事件が起きたり、いじめや詐欺みたいな悪い事もあるんだろう。やっぱり人々が欲深く自分の事ばかり考えているせいだろうか? キリスト教のいう罪のせい?
「私も損得勘定しすぎなところがあったわ……」
キリスト教のいう罪はわからないが、自分は至らないところにあるただの人間である事はわかる。
『あら、杏奈。自分の悪いところに気づいてきたのね。ノンクリスチャンの割には、よく気付けたわ』
「そうかなー」
『自分の悪いところに気づけないと成長はできないわ』
確かにそうかもしれない。英語教師として働いている時「1週間でペラペラになる英会話」「ドラマで覚える英会話」と言った学習教材にこだわっている生徒がいて、「それは商品を売るための詐欺教材だから、コツコツ英単語覚えなさい!」と注意しても頑なに聞かない生徒がいた。当然、耳に優しい教材ばかり選んだ生徒は英語の成績も全く上がらなかった。耳の痛い事を聞かずに成長は無いのかもしれない。
『だから、杏奈。神様と和解しなさい!』
ミャーはドヤ顔で胸を張って言った。この言葉もけっこう耳が痛いなと感じた。
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