第41話 三郎とデート
文字数 1,804文字
杏奈は三郎と待ち合わせしている人削町の駅に向かった。
地平町からはさほど離れていない町だが、駅ビルや映画館もありそこそこ栄えている町だった。
少し混みあっている駅前で三郎と落ち合った。三郎はラフなジャケット姿で、妙にリラックスした表情を見せている。
「杏奈、ちょっと疲れてない?」
「いや、別にそんなことはないわよ」
出かける前、ミャーから聞いた話を思い出すと素直に喜べなくなってきたが、とりあえず笑顔を作り、三郎に合わせて猫グッズを置いてある雑貨屋に向かった。
雑貨屋は、女性客で賑わっていた。
化粧品や文房具が主に商品として置いてあるが、全て猫がイラストがデザインされていて、杏奈も思わず「可愛い!」と漏らしてしまう。
一方、三郎は店の看板猫を見つけてデレデレち目尻を下げていた。看板猫はシャム猫で確かにシュッとしていて可愛らしかったが。
「あぁ、猫様。なんてこんなに可愛いんだ」
三郎は人目を気にせず、猫お拝むようなポーズをとって目を閉じていた。
「何、あの人」
「まるで猫が神様じゃん」
他の女性客に笑われていたが、三郎はお構いなしだった。
杏奈はだんだんと居た堪れなくなってきた。デート中なのに、明らかに猫>>>>>杏奈である。
メールやLINEのやり取りではそこそこ盛り上がりを見せたが、今の状況は何とも微妙だった。デート中という感じが全くしない。
「なんで今日誘ったわけ?」
思わず愚痴も溢れるが、三郎の耳には届かず、ずっと看板猫を写真におさめ、拝んでいた。
その後、二人で猫カフェに行ったが、三郎は相変わらずだった。
アメリカンショートヘアを追いかけ回し、店長に注意されるほどだった。
何か病的なものを感じるほどの猫好きだった。
杏奈の気持ちは冷めていくばかりで「やっぱり三郎とはないわー」と繰り返し感じていた。今朝ミャーは頑張って忠告していたわだが、こうなってしまってはあんまり意味がない状況だった。
杏奈は猫カフェの隅のテーブル席につき、死んだ目でオレンジジュースを啜っていた。テーブルや床も細かいところが清掃が行き届いていないのも同業者として、気分はよく無い。
「やぁ、杏奈。待たせたよ」
ようやくテーブル席に帰ってきた三郎を見ても、杏奈の目は死んでいた。これではモテテクニックどころではない。
藤也はメンヘラ女はモテないと言っていたが、この男はメンヘラ製造機の見えた。適度に距離を置き、女を不愉快にさせるのが絶妙に上手かった。
もし、三郎に本気だったら、自分は気分が不安定なメンヘラ女になりそうだった。
そういえば藤也は聖書では男がリーダーシップを取れと言っていたものだが、この男はリーダーシップよりも自分の事の方が好きそうだった。
なるほど、女が男っぽくなる現象は、女の責任だけでは無いと杏奈は感じていた。
「そういえば、杏奈さ。町でミケ猫が死んだ事件ってどうなったの?カルト信者は捕まったの?」
「いいえ。そんな事は全くないわ」
杏奈は梨子が襲われた事など、現在の事件の状況を手短に説明した。
「しかし、許せないね!猫様を殺すなんて!殺すんだったら障害者やホームレスを殺せばよかったんだ」
「は?」
杏奈は目が点になっていた。そして、より死んだ目になる。
どうやらこの男は猫が一番で、人間の弱者はどうでも良いと考えているようだ。さらに「三郎はないわー」と思う。妊娠出産で強制的に弱者になる女にこの男は思いやりが持てるのか疑問だ。
「いや、今のは間違いだって。猫様が好きすぎて失言しちゃったんだよ」
「あ、そう」
杏奈の気持ちは限りなく冷えていた。見かけは好青年だが、絶対女に優しくない男だと本能見たいなものが警告を発していた。
「ところで明後日、藤也さんのところの教会でイベントやるんだろ?」
「ええ。その予定だけど」
「俺も行こうかね」
「は?なんで?」
「うーん、ちょっと気になるし。クッキーも欲しいし」
「ふーん」
杏奈のテンションは限りなく下がっていたので、適当に返事をした。
藤也からアドバイスされたモテテクニックは一つも守れていないが、これ以上三郎との縁は無いな……と感じていた。
その気持ちを見透かすように三郎は再び猫の写真を撮り、アメリカンショートヘアを追いかけ回していた。
「きも……」
つい杏奈の本音が漏れた。
猫カフェにいる猫達は可愛かったが、早く家に帰ってミャーの背中を撫でたくなってしまった。
地平町からはさほど離れていない町だが、駅ビルや映画館もありそこそこ栄えている町だった。
少し混みあっている駅前で三郎と落ち合った。三郎はラフなジャケット姿で、妙にリラックスした表情を見せている。
「杏奈、ちょっと疲れてない?」
「いや、別にそんなことはないわよ」
出かける前、ミャーから聞いた話を思い出すと素直に喜べなくなってきたが、とりあえず笑顔を作り、三郎に合わせて猫グッズを置いてある雑貨屋に向かった。
雑貨屋は、女性客で賑わっていた。
化粧品や文房具が主に商品として置いてあるが、全て猫がイラストがデザインされていて、杏奈も思わず「可愛い!」と漏らしてしまう。
一方、三郎は店の看板猫を見つけてデレデレち目尻を下げていた。看板猫はシャム猫で確かにシュッとしていて可愛らしかったが。
「あぁ、猫様。なんてこんなに可愛いんだ」
三郎は人目を気にせず、猫お拝むようなポーズをとって目を閉じていた。
「何、あの人」
「まるで猫が神様じゃん」
他の女性客に笑われていたが、三郎はお構いなしだった。
杏奈はだんだんと居た堪れなくなってきた。デート中なのに、明らかに猫>>>>>杏奈である。
メールやLINEのやり取りではそこそこ盛り上がりを見せたが、今の状況は何とも微妙だった。デート中という感じが全くしない。
「なんで今日誘ったわけ?」
思わず愚痴も溢れるが、三郎の耳には届かず、ずっと看板猫を写真におさめ、拝んでいた。
その後、二人で猫カフェに行ったが、三郎は相変わらずだった。
アメリカンショートヘアを追いかけ回し、店長に注意されるほどだった。
何か病的なものを感じるほどの猫好きだった。
杏奈の気持ちは冷めていくばかりで「やっぱり三郎とはないわー」と繰り返し感じていた。今朝ミャーは頑張って忠告していたわだが、こうなってしまってはあんまり意味がない状況だった。
杏奈は猫カフェの隅のテーブル席につき、死んだ目でオレンジジュースを啜っていた。テーブルや床も細かいところが清掃が行き届いていないのも同業者として、気分はよく無い。
「やぁ、杏奈。待たせたよ」
ようやくテーブル席に帰ってきた三郎を見ても、杏奈の目は死んでいた。これではモテテクニックどころではない。
藤也はメンヘラ女はモテないと言っていたが、この男はメンヘラ製造機の見えた。適度に距離を置き、女を不愉快にさせるのが絶妙に上手かった。
もし、三郎に本気だったら、自分は気分が不安定なメンヘラ女になりそうだった。
そういえば藤也は聖書では男がリーダーシップを取れと言っていたものだが、この男はリーダーシップよりも自分の事の方が好きそうだった。
なるほど、女が男っぽくなる現象は、女の責任だけでは無いと杏奈は感じていた。
「そういえば、杏奈さ。町でミケ猫が死んだ事件ってどうなったの?カルト信者は捕まったの?」
「いいえ。そんな事は全くないわ」
杏奈は梨子が襲われた事など、現在の事件の状況を手短に説明した。
「しかし、許せないね!猫様を殺すなんて!殺すんだったら障害者やホームレスを殺せばよかったんだ」
「は?」
杏奈は目が点になっていた。そして、より死んだ目になる。
どうやらこの男は猫が一番で、人間の弱者はどうでも良いと考えているようだ。さらに「三郎はないわー」と思う。妊娠出産で強制的に弱者になる女にこの男は思いやりが持てるのか疑問だ。
「いや、今のは間違いだって。猫様が好きすぎて失言しちゃったんだよ」
「あ、そう」
杏奈の気持ちは限りなく冷えていた。見かけは好青年だが、絶対女に優しくない男だと本能見たいなものが警告を発していた。
「ところで明後日、藤也さんのところの教会でイベントやるんだろ?」
「ええ。その予定だけど」
「俺も行こうかね」
「は?なんで?」
「うーん、ちょっと気になるし。クッキーも欲しいし」
「ふーん」
杏奈のテンションは限りなく下がっていたので、適当に返事をした。
藤也からアドバイスされたモテテクニックは一つも守れていないが、これ以上三郎との縁は無いな……と感じていた。
その気持ちを見透かすように三郎は再び猫の写真を撮り、アメリカンショートヘアを追いかけ回していた。
「きも……」
つい杏奈の本音が漏れた。
猫カフェにいる猫達は可愛かったが、早く家に帰ってミャーの背中を撫でたくなってしまった。
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