第35話 怪しい女
文字数 2,055文字
坂口梨子が負傷した事件から数日たった。
当初は梨子が犯人を証言する事に期待していた杏奈達だったが、彼女は傷を負ったショックで記憶を無くしていた。一時は娘のマユカの顔も忘れているぐらいだったという。犯人を証言させるのは絶望的な状況だった。
もっとも梨子の身体の傷は奇跡的にすぐよくなり、命には別状は無いという。まだ入院中だったが、身体は着々と治っているので、杏奈達もほっとしていた。
藤也は、ミャーと新しく伝道の企画を立てながら忙しそうだった。どうやら絵や映像などを使って子供や一般の人に伝道するイベントを考えtらいるらしかった。ミャーも藤也に協力している為、事件の事は調べられない状況が続いていた。
杏奈もそれで良いと思っているところだった。望みは薄いが梨子が証言してくれる可能性もある。
警察は全く動かないが、とりあえず事件もなく静かに数日が流れていた。
マユカは相変わらず不登校児のようだったが、カフェに呼び出し時々勉強を教えたりもしていた。母親の梨子はあんな事になって大変そうだったが、キリスト教にも興味を持ったようで昼間は教会でミャーや藤也の手伝いもしていた。そんなマユカは意外と楽しそうだった。やっぱりミャーと一緒にいてアニマルセラピー効果のようなものもあるのかもしれない。
そんなある日、新しい客がやってきた。閉店間近でパウンドケーキも全部売れてしまい、満足しているところだった。
派手な感じな客だった。アラサーぐらいだが、茶髪で巻き髪。爪もバッチリと尖っていてカラフルだった。
どこかで見た事ある顔だと思った。ミケ子が殺されるちょと前、コンビニでぶつかった態度の悪い女だと思い出した。
女はキョロキョロと店内を見合わしたあと、カウンター席にどっっかりと座った。他の客はもいいないので、女の存在が妙にくっきりとして見える。
「アイスティーいただける?」
「かしこまりました」
杏奈は、グラスにアイスティーを注ぎ、女の前に置く。
「あなた、何か困った事あるでしょう」
「は? 別に無いですけど」
梨子の件や町の猫がいなくなった事は問題といえば問題だが、一応今のところ無事だ。他に困っている事は今のところない。
ミケ子を失って塞ぎ込んでいる鳩子は心配だが、美絵と母は旅行に誘い、昨日から北海道旅行中だった。それで心が晴れると良いだろう。鳩子の事は母と美絵に任せていた。
長谷川もナァが戻ってきて嬉しそう。マユカもちょっと元気が出てきた。
強いて言えば杏奈の婚活状況が困っている事だが。最近はなぜか三郎から連絡を貰うようになり、LINEでやりとりしていた。話題は猫の事ばかりだが、こうして連絡していると三郎の事は見直してきたところだった。
「私、この町で占い師をしているの。桜庭香澄っていうの」
「へぇ……」
藤也の影響や長谷川の一件でスピリチュアルに良い印象を持てなくなっていた杏奈は、ちょっと身構える。
「この町で三毛猫が死んだ事件の噂も聞いてけど、だいたい犯人わかってたのよ」
「へぇ……」
香澄は、少し顎を吊り上げアイスティーを啜る。
「誰が犯人だと思ってたんですか?」
「おそらく銃価信者の仕業ね。わかってたのよ」
「ふーん」
どうやら香澄は自分のパワーを自慢したくてたまらないようだった。ただ、これぐらいの事はミャーや藤也も言っていたので、不思議なパワーで推理したようには見えなかった。冷静な杏奈は少し冷めてくる。
「店長さん、気をつけて。犯人はすぐそばにいるわ」
「もっと具体的に言ってくれません? 犯人の属性とか年齢とか」
「聞いたわ。銃価信者の一人が襲われたんですってね。犯人は、そばにいるわ」
要領を得ない会話に杏奈はイライラとしてくるが、ここは店だ。とりあえず感じよく接して置く。いざとなれば出禁にしよう。
「あと、あなた。変な霊がくっついているから気をつけてねぇ」
「別に何にもないですけどね」
「動物霊が見える。猫を怒らせたりした事ない?」
「心あたりないですね。うちは猫を大事に飼ってますし」
杏奈はため息をつき、香澄に帰るように言った。もう閉店の時間だった。
「じゃあ、何かあったら私のお店に連絡してきてね!」
冷めた態度に杏奈に香澄も諦めたのか、名刺を一枚置いて返っていった。名刺には香澄の占いをやってる場所の住所が載っていた。意外と藤也の教会に近かった。
「変な女ねぇ」
杏奈は一応名刺を捨てずとって置く事にしたが、気味の悪さは感じた。こうして名刺を置いていったという事は、たぶん営業活動の一種と思われる。
こうやって店を営業していると変な客もごくたまに来る。基本的に杏奈のカフェの客は良い人達だが、完全に客を選ぶのはちょっと難しい事なのかもしれない。
店を閉めると、ミャーを迎えに行く為に藤也の教会に向かった。
あんな風に占い師に変な事を言われると、梨子の事件も早く解決して欲しいと思う。
もう夕暮れで空は黒くなり始めていた。
今もところ新しく事件は起きていないし、梨子も無事だが、少し嫌な予感がしてきた。
当初は梨子が犯人を証言する事に期待していた杏奈達だったが、彼女は傷を負ったショックで記憶を無くしていた。一時は娘のマユカの顔も忘れているぐらいだったという。犯人を証言させるのは絶望的な状況だった。
もっとも梨子の身体の傷は奇跡的にすぐよくなり、命には別状は無いという。まだ入院中だったが、身体は着々と治っているので、杏奈達もほっとしていた。
藤也は、ミャーと新しく伝道の企画を立てながら忙しそうだった。どうやら絵や映像などを使って子供や一般の人に伝道するイベントを考えtらいるらしかった。ミャーも藤也に協力している為、事件の事は調べられない状況が続いていた。
杏奈もそれで良いと思っているところだった。望みは薄いが梨子が証言してくれる可能性もある。
警察は全く動かないが、とりあえず事件もなく静かに数日が流れていた。
マユカは相変わらず不登校児のようだったが、カフェに呼び出し時々勉強を教えたりもしていた。母親の梨子はあんな事になって大変そうだったが、キリスト教にも興味を持ったようで昼間は教会でミャーや藤也の手伝いもしていた。そんなマユカは意外と楽しそうだった。やっぱりミャーと一緒にいてアニマルセラピー効果のようなものもあるのかもしれない。
そんなある日、新しい客がやってきた。閉店間近でパウンドケーキも全部売れてしまい、満足しているところだった。
派手な感じな客だった。アラサーぐらいだが、茶髪で巻き髪。爪もバッチリと尖っていてカラフルだった。
どこかで見た事ある顔だと思った。ミケ子が殺されるちょと前、コンビニでぶつかった態度の悪い女だと思い出した。
女はキョロキョロと店内を見合わしたあと、カウンター席にどっっかりと座った。他の客はもいいないので、女の存在が妙にくっきりとして見える。
「アイスティーいただける?」
「かしこまりました」
杏奈は、グラスにアイスティーを注ぎ、女の前に置く。
「あなた、何か困った事あるでしょう」
「は? 別に無いですけど」
梨子の件や町の猫がいなくなった事は問題といえば問題だが、一応今のところ無事だ。他に困っている事は今のところない。
ミケ子を失って塞ぎ込んでいる鳩子は心配だが、美絵と母は旅行に誘い、昨日から北海道旅行中だった。それで心が晴れると良いだろう。鳩子の事は母と美絵に任せていた。
長谷川もナァが戻ってきて嬉しそう。マユカもちょっと元気が出てきた。
強いて言えば杏奈の婚活状況が困っている事だが。最近はなぜか三郎から連絡を貰うようになり、LINEでやりとりしていた。話題は猫の事ばかりだが、こうして連絡していると三郎の事は見直してきたところだった。
「私、この町で占い師をしているの。桜庭香澄っていうの」
「へぇ……」
藤也の影響や長谷川の一件でスピリチュアルに良い印象を持てなくなっていた杏奈は、ちょっと身構える。
「この町で三毛猫が死んだ事件の噂も聞いてけど、だいたい犯人わかってたのよ」
「へぇ……」
香澄は、少し顎を吊り上げアイスティーを啜る。
「誰が犯人だと思ってたんですか?」
「おそらく銃価信者の仕業ね。わかってたのよ」
「ふーん」
どうやら香澄は自分のパワーを自慢したくてたまらないようだった。ただ、これぐらいの事はミャーや藤也も言っていたので、不思議なパワーで推理したようには見えなかった。冷静な杏奈は少し冷めてくる。
「店長さん、気をつけて。犯人はすぐそばにいるわ」
「もっと具体的に言ってくれません? 犯人の属性とか年齢とか」
「聞いたわ。銃価信者の一人が襲われたんですってね。犯人は、そばにいるわ」
要領を得ない会話に杏奈はイライラとしてくるが、ここは店だ。とりあえず感じよく接して置く。いざとなれば出禁にしよう。
「あと、あなた。変な霊がくっついているから気をつけてねぇ」
「別に何にもないですけどね」
「動物霊が見える。猫を怒らせたりした事ない?」
「心あたりないですね。うちは猫を大事に飼ってますし」
杏奈はため息をつき、香澄に帰るように言った。もう閉店の時間だった。
「じゃあ、何かあったら私のお店に連絡してきてね!」
冷めた態度に杏奈に香澄も諦めたのか、名刺を一枚置いて返っていった。名刺には香澄の占いをやってる場所の住所が載っていた。意外と藤也の教会に近かった。
「変な女ねぇ」
杏奈は一応名刺を捨てずとって置く事にしたが、気味の悪さは感じた。こうして名刺を置いていったという事は、たぶん営業活動の一種と思われる。
こうやって店を営業していると変な客もごくたまに来る。基本的に杏奈のカフェの客は良い人達だが、完全に客を選ぶのはちょっと難しい事なのかもしれない。
店を閉めると、ミャーを迎えに行く為に藤也の教会に向かった。
あんな風に占い師に変な事を言われると、梨子の事件も早く解決して欲しいと思う。
もう夕暮れで空は黒くなり始めていた。
今もところ新しく事件は起きていないし、梨子も無事だが、少し嫌な予感がしてきた。
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