第81話 怖い予知

文字数 1,674文字

【高槻レオマンション・806号室・リビング】

朝早く、真彩はリビングで、仕事に出掛ける準備をしている。

そこに、悠斗が、起きて来る。
   
悠斗、欠伸をしながら、
悠斗「おはよう。今日、早いんだね……」
と、真彩に言う。

すると真彩、
真彩「おはよう。昨日どこに泊まったの?」 
と、微笑みながら悠斗に聞く。
 
悠斗「えっ? 泊まって無いよ?! 終電乗りそこなったからタクシーで帰って来たよ?!」

真彩「そう……」
と言うと、真彩、リビングから玄関に行く。

悠斗「えっ?……」

真彩が言った言葉に、何か引っかかり、疑問に思う悠斗。

すると真彩、
真彩「行ってきます!」
と言って、玄関に向かう。



【玄関】

真彩、悠斗の顔を見ずに、ドアを開けて、家を出ようとしている。
   
悠斗「あぁ、行ってらっしゃい! 気を付けて!」

真彩、玄関ドアを閉め、鍵を掛ける。
悠斗(心の声)「えっ? 行って来ますのキスは? あれっ? 真彩ちゃん何か怒ってる?」
【ハーモニー社・社長室】

朝、社長室では、営業部企画課・課長の松田が、神妙な面持ちで、真彩に異動願いを差し出す。

真彩、デスク越しに紙媒体の異動願を受け取り、背筋が伸びる。
松田「ご心配お掛けして申し訳ありませんでした。石川さんと話し合いました。きちんと謝罪しました」
そう言うと、松田、真彩に深く頭を下げる。

真彩「石川さん、大丈夫でしたか?」

すると、松田、顔を上げ、
松田「はい。何とか……慰謝料、受け取ってくれて、和解しました」
と真彩に報告する。

真彩「そうですか。辛かったですね……でも仕方ないですよね……」
と、神妙な顔で言う真彩。

松田「……はい……」
松田、口を噤む。

真彩、溜め息。
真彩「はぁ……私も辛いです。好きな人との別れは、本当に辛いですもんね」
松田「……」

真彩「東京への異動は、早い方が良いですね……」

すると、松田、真彩の顔を見る。

松田「すいません。ご迷惑をお掛けして……」
   
松田、また、真彩に深く頭を下げる。

真彩「奥さんに感謝して、これからはご家族を大事にして下さいね!」

松田「はい。有難うございます……」
   
松田、また深く真彩に頭を下げる。

     ×  ×  ×

昼過ぎ、社長室の応接ソファに座り、コーヒーを飲みながら話している真彩と優衣。
優衣「まっ、何とか穏便に解決出来て、良かったですね」
真彩「ですね。でも、好きな人との別れは辛いですね……」
優衣「ですね……」

優衣「あぁ、そう言えば……」

真彩「んん?」

優衣「この前話してた、シカゴのお友達、どうなったんですか?」
   
優衣の言葉に首を傾げる真彩。

真彩「うん? どの友達の事?」

優衣「ほら、予知できる女のお友達。自分が近い内に交通事故に遭うって予知した人」

真彩「あぁ、ジェシカね……」

優衣「ジェシカさんって言うんだ……」

真彩「事故に遭いたくないから、家から極力出ない様にしてたんよ。でも、歯医者さんのチェッアップの予約してたから、慎重に慎重を重ねて恐る恐る歩いて、絶対に道路側歩かない様にして、何事もなく、無事に歯医者さんに行ったんだって……」

優衣「あぁ、それは良かった……」

真彩「で、帰りも慎重に辺りを見回しながら、車に気を付けて歩いたらしいんだけど、信号が青になったから渡ろうとした時、パトカーに追われてる車が赤信号なのに猛スピードで来て、咄嗟に逃げたけど、扱けて、足の靭帯やられて、松葉杖生活だって言ってた……」

優衣「ひぇー怖っ!」
   
優衣、肩をすくめて怖がる。
真彩「だからね、下手に予知出来るって、怖いもんだよ?!」
優衣「わぁ、やっぱり私、凡人で良かった……」

真彩「凡人ねー……ホントは優衣ちゃんの方が、私なんかより霊能力あるはずなんですがね? 血筋で言うと……」

優衣「いやいや、無い無い、無いよ!」

真彩「そうかなぁ……大阿闍梨様の血を引く直系の孫なのに?」
優衣「だぁってー、私、霊とか怖いもん」
真彩「あらら……」

優衣「だから、何度も言うけど、小さい頃からちゃんと修行してるマーちゃんは、本当に凄いと思う。尊敬してる」

真彩「ふーん……」
と言って、口を噤めて、優衣を見る真彩。
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