第24話 週刊誌記事

文字数 1,560文字

【ハーモニー社・営業部1課】

朝一、営業部で、真彩に関しての騒ぎが起きている。    
杉山が、持参した週刊誌を開き、デスクに置いて皆に見せているのだ。
秋元、前田、光が、その記事を見て驚いている。
前田「えっ? これって……目隠しされてるけど、社長じゃないですか?!」
杉山「あの男の餌食になったんやな……」
秋元「ビックリしました。テレビのワイドショーでもやってたみたいですよ?!」
すると、丁度、そこに真彩が、タブレットPCを持って、秘書の優衣と一緒に笑顔で歩いて来る。  
  
前田、思わず真彩を呼び止める。

前田「社長!」

前田の声が大きかったので、周りの営業部の社員達、前田に注目する。

真彩、声の主、前田を見て、
真彩「あぁ、はい……」
と、笑顔で言う。   

前田「吉村社長とデートしない様にって、あれだけ言ったのに何でですか?!」

前田、真彩に詰め寄る。

真彩「あぁ、週刊誌の記事見たんだ……」  
  
前田「会社の為に体張って、自分を犠牲にするのは止めて下さい!」

そこに、石川光も口を出す。  
光「ホントです。自分を大事にして下さい」
近くにいる社員達、何事かと、真彩に注目する。

真彩「あのね、この会社は三年連続赤字で、いつ潰れてもおかしくない状態なんです。皆んな職を失ったらどうなります?」
と、優しい口調で言う真彩。

前田「それは……仰る通りですが、それとこれとは違います」

真彩「関連会社と仲良くなって利益もたらす事が出来るのなら、私、何だって遣りますよ?!」
と言って、微笑む真彩。  
 
前田「はぁ? 何言ってるんですか?! 何だって遣るなんて……」   
真彩「どんな手段を使っても、この会社を一年で黒字にしないとダメなんです。私の任務は、皆さんと、皆さんの家族を守る事ですから」
穏やかな口調で、冷静沈着に話す真彩。

前田「でも、そんな、自分を犠牲にするなんて、おかしいですよ!」

真彩「前田さん、前に言いましたよね。私は捨て子なんです。この世に生まれて来ちゃーいけない子だったんです。だから、私なんてどうなっても良いんです。お願いですから私の行動を止めないで下さい!」

前田「どうなっても良いなんて……この世に生まれて来ちゃいけない人なんていませんよ! もっと自分を大事にして下さいよ!」
と、前田、真剣な顔で真彩に言う。

真彩、じっと前田の目を見詰める。

周りで聞いている社員達、真彩の発言に驚きを隠せない。
皆、動揺している。

真彩と前田、見詰め合い、しばらく沈黙の時間が流れる。  

そして、  
真彩「話は終わり。仕事しましょう?!」  
と言い出し、営業部からさっさと立ち去る真彩。
その後ろを優衣、黙ってついて行く。

真彩の歩く後ろ姿をじっと見ている前田、杉山、光、秋元、そして営業部の社員達。

     ×  ×  ×

一部始終を隠し撮りしていた営業部・企画課の髙橋勇也、自分のPCで、社内のあちこちに動画を拡散・送信しようとしている。
社外秘・マル秘動画として。

画面の送信ボタンにマウスポインタを載せる。
そして、右人差し指を押し、送信した。

ニヤッとする勇也。
勇也「しーらない……」
と言って、微笑む勇也。

     ×  ×  ×

杉山が、大きく深呼吸を吸って、勢いよく吐き出す。

そして、
杉山「俺、外回り行って来るわ。俺、仕事、もっと頑張る。会社の為に頑張る。社長の為に頑張る!」
と、自分にハッパをかけるかの様に言う杉山。

すると、前田も、
前田「俺も。会社の為に、社長の為に、もっともっと頑張ります!」
と、自分に気合を入れる。

光「私も、出来る処から頑張る!」

周りにいた社員達も、それぞれに「頑張ろう!」と口にしている。

     ×  ×  ×

勇也が、断りも無く勝手に送信した社外秘・マル秘動画は、瞬く間に拡散され、あっという間に、全国の社員達が見る事となる。
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