第138話 2025年7月5日の予言

文字数 4,538文字

【ハーモニー社・社長室】

真彩、社長室でパソコン画面を見ながら、リモート会議をしている。

各店舗の店長達と楽しく喋っている真彩。

秘書である優衣は、真彩のデスクの横で話を聞きながら入力作業をしている。

バレンタインデーに向けて、店長達と最終戦略を練っている最中。

どの店長達も良いアイディアを出し合い、盛り上がっている。

茨木店店長の山下が真彩に向かって、
山下「社長、当日、ウチの店舗に来て下さいますよね?」
と笑顔で言う。

すると、豊中店店長の秋田がすかさず、
秋田「いやいや、豊中店にお願いします。是非!」
と笑顔で言う。

それと同時に他の店舗の店長達も、「いや、ウチに来て下さい」「いや、ウチにお願いします」と言い出し、収拾つかず。
真彩「あぁ、私の分身が沢山創れたら良いんだけど、一個体しかないからなぁー。全店舗、行きたいのは山山なんだけど……ゴメンね」
と言って、微笑む真彩。

すると秘書の優衣が、
優衣「社長、お時間です」
と言って、リモート会議を終わらせる様、真彩に促す。

真彩「あぁ、時間だわ。じゃー、皆んな、頑張ってね!」
と言って、ファイティングポーズをとる真彩。

店長達、各々に「ハイ!」と言って、真彩と同じファイティングポーズをとる。

そして、パソコン画面に向かってバイバイのジェスチャーをする真彩。




【ハーモニー社・食堂】

真彩と優衣、食堂の端の席でランチを食べている。
真彩「バレンタインデー、何か、また盛り上がりそうだね。皆んな色々考えて、凄いわ」
優衣「ホントだね。昨年なんて皆んな自発的に動かなかったからね。店長達は、上からの指示に従うだけだったから。あんな笑顔も無かったし」
真彩「そうなんだ。自分達のアイディア、出せなかったんだ、それはつまんないね」

優衣「うん。会社の言い成り機動戦士だったからね」

真彩「それって、上層部が褒めてあげなかったからじゃないの? 上が結果ばかり見て、努力してる行動を褒めなかったとか?」

優衣「あぁ、そうだね、褒めるって無かったなぁー。出来て当たり前って思ってる人ばっかりだったから。売上の事ばっかり言ってたもんね」
真彩「努力してる自分を褒めて貰ったら、嬉しくなって、ガンバロっていう気持ちになるのにね。そしたら自発的な行動をとる様になるけどなぁー」
優衣「あぁ……」

真彩「失敗する事もあるけど、行動に移した事を褒めてあげて、失敗を恐れずに前へ前へと行動出来る様な雰囲気があれば良かったのにね。そしたら自発的に動くのに……って思うんだけど」
優衣「社長は、皆んなをよく褒めてますもんね」
真彩「そりゃー褒めるよ。だって、自分に出来ない事をしてくれたら、凄い、流石、有難うって自然に言葉に出るジャン。会社は自分一人で成り立ってないからね。一人一人の役割があるから。頑張ってくれてる人に感謝だよ」

優衣「社長に褒められると、ちゃんと自分の事を見てくれて認めてくれてるんだって思って、自己肯定感が高くなるもんね。私もそうだから……」
真彩「成功しても失敗しても、どう考えてどういう行動をとったのかって、同じ目線で突っ込んで聞くと、皆んな自分の想いをドドッと話し出すから面白いよ。要は、皆んな、話を聞いて欲しいんよ。自分の想いを吐き出したいんよ。自分を認めて貰いたいんよ」
優衣「皆んな社長に褒められたいんだよね。社長と話すと承認欲求が満たされるんだろうね」
真彩「まっ、私も、結果より、行動を認められる方が嬉しいもんね。それに、頑張ってる自分を認めて貰うのも嬉しいけど、何よりも、頑張ってるっていう自分自身が好きなんだろうね、きっと」
と言って笑う真彩。

優衣「成程」

真彩「でも、自分で自分を褒めてあげるって大事かも。誰に褒められる事がなくても、自分は、自分の事を愛してあげる? 自己愛って必要かもね。あっ、でも、自己愛性パーソナリティ障害まで行くと怖いけどね」

優衣「あぁ、学生時代にそういう子、いたわ。自分は凄い特別な存在だって思ってたから、いざ自分を否定されると、落ち込み方が半端なかったわ。その子、鬱になりかけたから」

真彩「心の病は厄介だよね」
優衣「でも、社長は、社員達に積極的に挨拶するし、疑問に思った事は誰にでも聞くし、皆んなに相談もするし、同じ目線で話をするから、皆んな直ぐに心を打ち解けて、凄いと思う」
真彩「何? そんなに持ち上げられるとハズいジャン。何も出ないよ」
と言って微笑む真彩。

優衣「いや、ホントの事だから……」
と、真面目な顔で言う優衣。

【営業部1課】

夕方、杉山が、パソコン操作をしている前田に話し掛ける。
杉山「なぁ、俺の彼女が言ってたんやけど、来年、二〇二五年七月五日四時十八分に東日本大震災よりも何倍もでっかい、凄い大津波が来て、人類滅びるんやって。俺ら死ぬんやって」
前田「えぇ? 何で? それはどこからの情報ですか?」
杉山「ネットでそんな話題で溢れてるらしいわ」

前田「俺はそんなの信じないですけど、ちなみに大津波の原因は何なんですか? プレートですか?」

杉山「何か色んな説があるらしいけど、隕石が衝突するって可能性が大やって」

前田「へーぇ」

杉山「あと、南海トラフ地震は、もうそろそろやって来るって言われてるやろ?」

前田「あぁ、それはね……近々あるでしょうね。百年から百五十年に一回発生してるから、超巨大地震になるでしょうね」

杉山「あと、海底火山の噴火の可能性もあるって言ってた」

前田「あぁ。でも、人類が滅びるレベルなら、隕石の衝突は有り得ますよね。隕石衝突によって地球の環境、気候が変わって恐竜を絶滅させたって言われてる歴史があるから」

杉山「うん」
前田「大きな隕石でも、小惑星でも、地球に衝突したら、津波も半端ない高さになるし、あぁ、地軸も傾くだろから、人類が滅亡する可能性大ですね」
杉山「怖いな。やっぱり俺ら、皆んな、死ぬんかな?」
前田「でも、よく考えたら、恐竜は絶滅したけど、人間は生きてますね」

杉山「あぁ、そうやな、生きてるなぁ」

前田「でもまぁ、死んだら死んだでしょうがないですよ」

杉山「えっ?……何か、冷静やな。怖くないんか?」
前田「だって、先の事を怖がってもしょうがないですよ。それより、『今を一生懸命、悔いのない様に生きる!』って社長が言ってたじゃないですか」
杉山「あぁ、そういやー、『恐れるな、先を明るく見て立ち向かえ!』ってよく言うもんな」
と言って笑う杉山。
前田「そうそう、その笑顔ですよ。『笑顔は皆んなを幸せにするし、心が温かくなる。皆んなが笑顔なら、良い世の中になる。地球も喜んで、宇宙も喜ぶ』って、この前も社長、言ってたじゃないですか!」

杉山「あぁ、言ってたな」

前田「あれっ? 社長、二〇二五年七月五日の事、知ってて言ったのかな?」

杉山「あぁ、そうかもな。地球、宇宙って言うから、スケールでかいこと言うなぁーって思ったけど」

前田「きっとそうですよ」

杉山「あぁ、でもそうやな、言う通りや。悪い事ばっかり考えてたら笑顔、消えるもんな。不安な顔が連鎖して世の中もそうなるな。笑顔で明るくせんとな。そっか、彼女にもそう言ったろ。有難うな」
と言って、前田に微笑む杉山。



【カフェバー「Route72」】

夜、カフェバー「Route72」のカウンター席で、真彩と真彩の親友・佐々木紀香が、食事をしながら話をしている。
真彩「ふーん、二〇二五年七月五日ねぇー」
紀香「私の周り、この話題で賑わってるわ。やっぱり人類は滅びるんかなぁ?」
真彩「まぁ、隕石がフィリピン沖に落下するみたいだけど、それがどの程度の規模になるかは、物理学者さんでも分からないからね。でも、その時はその時だよ。この世で修行を了えてまた霊界に帰る訳だから、そんなに怖がる事ないのにね」

紀香「ちょっと前にさぁー、NASAが無人探査機使って宇宙で小惑星に衝突させて軌道変えたじゃん。それで回避出来ないかね?」
真彩「あぁ、プラネタリーディフェンスってやつか……期待したいよね」
紀香「世界の国が協力して、地球防衛軍つくって、皆んなで地球を守る体制、整えて欲しいわ」
真彩「ウルトラマン、宇宙戦艦ヤマトの世界やなぁー」

紀香「でもさぁー、私も仏教を勉強し出して、真彩の言う事が分かる様になったから怖くはないけど、そういう事を知らない人達は、きっと怖いだろうね。死んだらもう終わりって思ってるんだから」

真彩「まぁ、ネットじゃー、予言は科学的根拠は無くてガセだって言う人もいれば、本まで出してる人もいるね。でも、ホピ族の最終予言は、大きな隕石がぶつかってポールシフトが起こって、地球が逆回りになるって事だから、充分に有り得るよね。あぁ、それに、有名な物理学者さん、ちゃんと計算されて、隕石が落ちる位置も特定されてるから、間違いないかもね」

紀香「だから、地球防衛軍だよ!」

真彩「発足して欲しいよね。皆んなで協力しあったら、大災害防げるかもしれないもんね」
紀香「でもさー、もし、その日が明日だとしたら、真彩は『最後の晩餐』に何食べたい?」
真彩「えぇー、そうだなぁー……ママの手料理が食べたいな。料理自体は何でも良い。おにぎり一つだけでも良い。家族揃って、ママの料理食べて、ご霊界に皆んなでいくのが良いなぁー。紀香は?」
紀香「あぁ、お寿司とか焼肉とかって思ってたんだけどさぁ、真彩の今の言葉で変わった。やっぱりお母さんの手料理にする」
と言って微笑む紀香。

真彩「だよね」
と言って真彩も微笑む。
紀香「あぁ、じゃーさぁー、明日が最後の日ってなった時、どんな過ごし方する?」
真彩「どんな過ごし方? んーん、そうだな、家族とトランプして楽しむかな? ババ抜きは欠かせないな」
と言って笑う真彩。

紀香「そっか……真彩は流石だね。私、そんな余裕あるかなぁー?」
真彩「まっ、『神のみぞ知る』だよ。全てお任せだよ」
と言って、紀香の顔を見て微笑む真彩。

紀香「でも来年の七月五日以降は、どんな世の中になってるんやろう?」

真彩「さぁ、どんな世になるか? でも、どんな世になっても最後の最期まで諦めずに頑張らないとね」

紀香「うん。あぁ、ねぇ、旦那さんとはこんな話してるの?」

真彩「あぁ、とっくにしてたよ」

紀香「そうなんだ」
真彩「悠斗、七月四日は実家に泊まって、家族団らんのひと時を過ごそうって言ってる」
紀香「えぇー、悠斗さんもそんな事を言うって……やっぱり大災害起こって、私達、死ぬ運命なんだ……」
真彩「あぁ、違う違う。そんなこと思ってないよ。七月四日はアメリカの独立記念日だから、お祝いついでに実家に一泊して、で、この話題にかこつけて親孝行するのに良い機会だからって事だから」

紀香「そうなんだ」

真彩「パパとママ、私達が帰ると大喜びだから」
と言って微笑む真彩。
紀香「へーぇ。じゃー、もう、いっその事、実家に帰れば良いジャン」
真彩「あぁ、別に良いんだけど……」
紀香「んん? 何かあるの?」

真彩「リビングでセックス出来ないジャン。裸でウロウロ出来ないし」
と笑う真彩。

紀香「おいおい」
と、呆れ顔の紀香。
真彩「ラブラブな内は、実家に帰るの無理かも」
紀香「じゃー、一生、無理じゃない?」
真彩「あぁ……まっ、これも神のみぞ知るかな?」
と言って微笑む真彩。
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