第29話 パンドラの箱
文字数 3,737文字
【ハーモニー社・社長室】
朝、自分のデスクで、就業時間より随分早い時間から、PCでLINEスタンプを作っている真彩。
優衣は、真彩が作ったキャラクターを早く見たくて、出社していた。
朝、自分のデスクで、就業時間より随分早い時間から、PCでLINEスタンプを作っている真彩。
優衣は、真彩が作ったキャラクターを早く見たくて、出社していた。
優衣「良いですねー……」
真彩、スタンプが完成して満足気な顔をする。
真彩「よし。これで良いとしますかー」
優衣「うんうん、良いと思います」
すると、
優衣「あのー、ところで、スティーブとはどうなったんですか???」
と、探る様に聞く優衣。
真彩「あぁ、Route72 で飲んで、その後、ウチに泊まった」
優衣「えぇー?……」
優衣(心の声)「という事は???」
真彩、優衣の心の声が聞こえる。
真彩、スタンプが完成して満足気な顔をする。
真彩「よし。これで良いとしますかー」
優衣「うんうん、良いと思います」
すると、
優衣「あのー、ところで、スティーブとはどうなったんですか???」
と、探る様に聞く優衣。
真彩「あぁ、Route72 で飲んで、その後、ウチに泊まった」
優衣「えぇー?……」
優衣(心の声)「という事は???」
真彩、優衣の心の声が聞こえる。
真彩「だって、スティーブ、めちゃ元気で、凄い求めて来るんだもん‥‥‥」
優衣「はぁ‥‥‥あの、ちゃんと避妊したんでしょうね?」
真彩「あぁ、それはぬかりありません。出来ちゃったら偉い事だもんね‥‥‥あぁ、でも、スティーブとの子だったら、間違いなく可愛いハーフの子が生まれるなぁー、それも良いか‥‥‥なーんてね」
優衣「全くー‥‥‥あぁ、でも、それも有りかも? 間違いなく可愛い子が生まれますね」
真彩「おいおい!」
優衣が納得したのが意外だったので、突っ込み入れた真彩。
真彩「何かね、スティーブとは、この世でもう二度と会えない気がして……」
優衣「えっ? 予知したんだ……」
真彩「うん……」
優衣「えぇ?……」
真彩「……知らんけど……」
と言って微笑む真彩。
優衣「えっ、でも、社長の予知って、外れた事ないですからね……」
真彩「……」
優衣「でも、運命って変えられないのかな?」
真彩「変えれるよ?!」
優衣「はぁ‥‥‥あの、ちゃんと避妊したんでしょうね?」
真彩「あぁ、それはぬかりありません。出来ちゃったら偉い事だもんね‥‥‥あぁ、でも、スティーブとの子だったら、間違いなく可愛いハーフの子が生まれるなぁー、それも良いか‥‥‥なーんてね」
優衣「全くー‥‥‥あぁ、でも、それも有りかも? 間違いなく可愛い子が生まれますね」
真彩「おいおい!」
優衣が納得したのが意外だったので、突っ込み入れた真彩。
真彩「何かね、スティーブとは、この世でもう二度と会えない気がして……」
優衣「えっ? 予知したんだ……」
真彩「うん……」
優衣「えぇ?……」
真彩「……知らんけど……」
と言って微笑む真彩。
優衣「えっ、でも、社長の予知って、外れた事ないですからね……」
真彩「……」
優衣「でも、運命って変えられないのかな?」
真彩「変えれるよ?!」
優衣「あぁ、でもスティーブは手遅れって事ですよね?……」
真彩「あぁ……うん。スティーブの家の因縁、結構キツイからね……半端ないんだよね……」
優衣「そうなんだ……」
真彩「うん。だからもう最後だと思って、スティーブの喜ぶ事、してあげたの」
優衣「えっ、喜ぶ事?‥‥‥」
真彩「男なんて、セックスで快楽与えたら、掌で転がせるからね。セックスは女の最大の武器だよ」
優衣「武器? いや、言葉にすると、その考えって、どうなんだろうね? 武器に使うなんて‥‥‥」
真彩「女って、男からすると快楽の道具に過ぎないから‥‥‥」
優衣「えっ? どうしたマーちゃん‥‥‥今、憑依されてる? マーちゃんの口からそんな言葉を聞くなんて‥‥‥大丈夫???」
真彩「えっ? 私、どうかしてる???」
優衣「うん。おかしいよ。間違いなく‥‥‥マーちゃんじゃない……」
真彩、思わず頭を振り、両手で頭を揉む。
真彩「あぁ、そう言えば、一昨日、大学時代の友達と喋ってて、その影響か???」
優衣「どんな事、喋ったの???」
真彩「口外しない?」
優衣「勿論」
真彩「友達のお姉さんの事なんだけど、そのお姉さん、関東で結構、名の知れたバンドのボーカルやってて、バンドのリーダーと恋人関係にあったんだよね」
優衣「へーぇ」
真彩「で、そのリーダー、友達のお姉さんにプロポーズしたんよ」
優衣「わぁ、良いですね……」
真彩「でも、そのお姉さん、プロポーズを断ったんだって。まだ結婚は早いからって‥‥‥」
優衣「あらっ……」
真彩「そしたら、それから関係がぎくしゃくして、結局、別れる事になって、別れたら、そのお姉さん、バンドに居づらくなって、バンド、辞めたんだって‥‥‥」
優衣「あぁ、やっぱりバンド内の恋愛って、他の人達にも影響するからなぁー‥‥‥」
真彩、優衣の言葉に苦笑いする。
真彩「それでね、新しい女の子をボーカルに迎えて、一年も経たない内に、その女の子と元カレが結婚したんだってさぁー」
優衣「うわっ‥‥‥酷っ‥‥‥」
真彩「ねぇー、酷いと思うでしょ?」
優衣「うん。あんまりだわ‥‥‥結局、そのお姉さんは、恋人とボーカルの地位を失って、二重苦だね。で、元カレは、新しい彼女とゴールインして、バンド活動も続けられて、幸せなんて‥‥‥これって、男が得して女は大損じゃないの?!」
真彩「だからその話聞いて、メチャ腹立ってさー、あぁ、その時の感情、まだ引き摺ってた訳か‥‥‥有難う。以後、気を付けます」
優衣「そのお姉さん、大丈夫かなぁ?‥‥‥可哀想‥‥‥」
真彩「んん?」
優衣「めちゃ、腹立ってます。そのお姉さんが気の毒過ぎて‥‥‥」
真彩「でもさっ、真逆の人も沢山いるよね。男を利用してのし上る女」
優衣「えぇ?」
真彩「芸能界って、特にそうジャン」
優衣「あぁ‥‥‥」
真彩「ほら、プロデューサーと寝て、仕事取った人、いるジャン!」
優衣「あぁ、彼女ね‥‥‥可愛い顔して、したたかだよね‥‥‥」
真彩「女優さん、アイドルでも、売れる為に上の人に媚びうって肉体関係持って売れてる人、結構山いるし‥‥‥」
優衣「あぁ、芸能界は特に多いでしょうね‥‥‥私も聞いた事あるし、現に知ってるし‥‥‥でも、芸能界じゃなくても、女の武器を使って生きてる人、世の中に結構要るからねぇー」
真彩「実際、ママの友達も、大手企業勤めだけど、上のお偉いさんと関係もって、今、課長して、高給取りだって言ってた。それに、テレビ関係の仕事してるママの友達も、旦那さんと子どもがいるにも拘わらず、自分がのし上がる為に身体使ったって言ってた」
優衣「実際にあるんだね‥‥‥」
真彩「でもまぁー、そういう野望のある女の場合は、逆に男を利用してのし上るって、凄いなぁって思う。容姿が良いと、易々とやってのけれるよね」
優衣「いやいや、容姿、そんなに良くなくても、甘え上手だとか、男心を掴む人って、もてるからさぁー‥‥‥あと、しれっとあざとい女も……」
真彩「でも、お互いにウィンウィンなら良いんじゃないかな?‥‥‥って安易に思ったりするけど、モラル的にはダメだよね。仏教的には勿論、ダメだし‥‥‥」
優衣「そりゃそうでしょ。だって、相手に家族がいたら不貞行為だもん‥‥‥周りを不幸にするからね……」
真彩「ですね。でも、人間、切羽詰まると何をしでかすか分からないからね‥‥‥周りが見えなくなっちゃうから……」
優衣「まぁ、貴女もね‥‥‥猪突猛進だから‥‥‥」
真彩「あぁ、それを止めてくれるのは貴女ですから、宜しくね!」
と言って、優衣に微笑む真彩。
優衣「ホントにもうー。だったら、ちゃんと私の言う事、聞きなさい!」
真彩「はーい」
と、不貞腐れた様な返事をする真彩。
真彩「あぁ、スティーブの事と、今話した事、内緒ね! と言っても、あいつに見られたけどね……ママに知られたらまた、『何やってんの?!』って怒られるし……」
優衣「えぇー……悠ちゃん、お店に居たの?」
真彩「うん……営業部の二人も居た」
優衣「あっちゃー……」
真彩「でも、良いの。見られても……」
優衣「あーあ、開き直ってる……」
真彩、苦笑い。
優衣「でも、一応、スティーブとの事は秘密という事で処理しますね」
真彩「……」
優衣「しかしねー、私の頭の中の社長の秘密の箱がもうパンパン状態で、これ以上増えると破裂しそうですよ」
真彩「秘書さん、上手いこと言うね」
真彩、PC操作している手を止め、優衣の顔を見て笑顔で拍手する。
優衣、呆れ顔。
真彩「秘書さんの頭の中、大変だね。私のパンドラの箱の容量、凄いと思うから… …」
優衣「ホントですわ。いっその事、クラウド利用して、そっちに保存して、私の脳の海馬のデータを一括削除して、空にしたい位ですよ」
真彩「あぁ、そうなるとハッカーに簡単に見られちゃうね、きっと。それは困るなぁ……」
優衣「(笑)そんな事しませんよ! 安心して下さい」
真彩「秘書さんにはあんまり隠し事したくないから話してたんだけど、負担になってたんだね。もう、言わない様にするね……」
すると、優衣、慌てて、
優衣「いやいや大丈夫だから。社長の事は何でも知っておきたいから……」
と、真彩の目を見て言う。
真彩「えぇー、パンドラの箱、容量オーバーで爆発したら偉い事になりますよ?」
優衣「大丈夫。また別のパンドラの箱作るから。ほら、お腹一杯でも別腹ってあるでしょ? 別脳に入れるから!」
必死になって言う優衣に、可笑しくなって笑う真彩。
真彩「素晴らしい発想! 有難う……」
【高槻レオマンション・806号室】
真彩、経机の前に座り、袈裟を着け、読経している。
真彩「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色……」
最後まで読経し、しばらく目を瞑り、祈っている。
そして、祈りから覚め、目が開く。
真彩「あぁ……うん。スティーブの家の因縁、結構キツイからね……半端ないんだよね……」
優衣「そうなんだ……」
真彩「うん。だからもう最後だと思って、スティーブの喜ぶ事、してあげたの」
優衣「えっ、喜ぶ事?‥‥‥」
真彩「男なんて、セックスで快楽与えたら、掌で転がせるからね。セックスは女の最大の武器だよ」
優衣「武器? いや、言葉にすると、その考えって、どうなんだろうね? 武器に使うなんて‥‥‥」
真彩「女って、男からすると快楽の道具に過ぎないから‥‥‥」
優衣「えっ? どうしたマーちゃん‥‥‥今、憑依されてる? マーちゃんの口からそんな言葉を聞くなんて‥‥‥大丈夫???」
真彩「えっ? 私、どうかしてる???」
優衣「うん。おかしいよ。間違いなく‥‥‥マーちゃんじゃない……」
真彩、思わず頭を振り、両手で頭を揉む。
真彩「あぁ、そう言えば、一昨日、大学時代の友達と喋ってて、その影響か???」
優衣「どんな事、喋ったの???」
真彩「口外しない?」
優衣「勿論」
真彩「友達のお姉さんの事なんだけど、そのお姉さん、関東で結構、名の知れたバンドのボーカルやってて、バンドのリーダーと恋人関係にあったんだよね」
優衣「へーぇ」
真彩「で、そのリーダー、友達のお姉さんにプロポーズしたんよ」
優衣「わぁ、良いですね……」
真彩「でも、そのお姉さん、プロポーズを断ったんだって。まだ結婚は早いからって‥‥‥」
優衣「あらっ……」
真彩「そしたら、それから関係がぎくしゃくして、結局、別れる事になって、別れたら、そのお姉さん、バンドに居づらくなって、バンド、辞めたんだって‥‥‥」
優衣「あぁ、やっぱりバンド内の恋愛って、他の人達にも影響するからなぁー‥‥‥」
真彩、優衣の言葉に苦笑いする。
真彩「それでね、新しい女の子をボーカルに迎えて、一年も経たない内に、その女の子と元カレが結婚したんだってさぁー」
優衣「うわっ‥‥‥酷っ‥‥‥」
真彩「ねぇー、酷いと思うでしょ?」
優衣「うん。あんまりだわ‥‥‥結局、そのお姉さんは、恋人とボーカルの地位を失って、二重苦だね。で、元カレは、新しい彼女とゴールインして、バンド活動も続けられて、幸せなんて‥‥‥これって、男が得して女は大損じゃないの?!」
真彩「だからその話聞いて、メチャ腹立ってさー、あぁ、その時の感情、まだ引き摺ってた訳か‥‥‥有難う。以後、気を付けます」
優衣「そのお姉さん、大丈夫かなぁ?‥‥‥可哀想‥‥‥」
真彩「んん?」
優衣「めちゃ、腹立ってます。そのお姉さんが気の毒過ぎて‥‥‥」
真彩「でもさっ、真逆の人も沢山いるよね。男を利用してのし上る女」
優衣「えぇ?」
真彩「芸能界って、特にそうジャン」
優衣「あぁ‥‥‥」
真彩「ほら、プロデューサーと寝て、仕事取った人、いるジャン!」
優衣「あぁ、彼女ね‥‥‥可愛い顔して、したたかだよね‥‥‥」
真彩「女優さん、アイドルでも、売れる為に上の人に媚びうって肉体関係持って売れてる人、結構山いるし‥‥‥」
優衣「あぁ、芸能界は特に多いでしょうね‥‥‥私も聞いた事あるし、現に知ってるし‥‥‥でも、芸能界じゃなくても、女の武器を使って生きてる人、世の中に結構要るからねぇー」
真彩「実際、ママの友達も、大手企業勤めだけど、上のお偉いさんと関係もって、今、課長して、高給取りだって言ってた。それに、テレビ関係の仕事してるママの友達も、旦那さんと子どもがいるにも拘わらず、自分がのし上がる為に身体使ったって言ってた」
優衣「実際にあるんだね‥‥‥」
真彩「でもまぁー、そういう野望のある女の場合は、逆に男を利用してのし上るって、凄いなぁって思う。容姿が良いと、易々とやってのけれるよね」
優衣「いやいや、容姿、そんなに良くなくても、甘え上手だとか、男心を掴む人って、もてるからさぁー‥‥‥あと、しれっとあざとい女も……」
真彩「でも、お互いにウィンウィンなら良いんじゃないかな?‥‥‥って安易に思ったりするけど、モラル的にはダメだよね。仏教的には勿論、ダメだし‥‥‥」
優衣「そりゃそうでしょ。だって、相手に家族がいたら不貞行為だもん‥‥‥周りを不幸にするからね……」
真彩「ですね。でも、人間、切羽詰まると何をしでかすか分からないからね‥‥‥周りが見えなくなっちゃうから……」
優衣「まぁ、貴女もね‥‥‥猪突猛進だから‥‥‥」
真彩「あぁ、それを止めてくれるのは貴女ですから、宜しくね!」
と言って、優衣に微笑む真彩。
優衣「ホントにもうー。だったら、ちゃんと私の言う事、聞きなさい!」
真彩「はーい」
と、不貞腐れた様な返事をする真彩。
真彩「あぁ、スティーブの事と、今話した事、内緒ね! と言っても、あいつに見られたけどね……ママに知られたらまた、『何やってんの?!』って怒られるし……」
優衣「えぇー……悠ちゃん、お店に居たの?」
真彩「うん……営業部の二人も居た」
優衣「あっちゃー……」
真彩「でも、良いの。見られても……」
優衣「あーあ、開き直ってる……」
真彩、苦笑い。
優衣「でも、一応、スティーブとの事は秘密という事で処理しますね」
真彩「……」
優衣「しかしねー、私の頭の中の社長の秘密の箱がもうパンパン状態で、これ以上増えると破裂しそうですよ」
真彩「秘書さん、上手いこと言うね」
真彩、PC操作している手を止め、優衣の顔を見て笑顔で拍手する。
優衣、呆れ顔。
真彩「秘書さんの頭の中、大変だね。私のパンドラの箱の容量、凄いと思うから… …」
優衣「ホントですわ。いっその事、クラウド利用して、そっちに保存して、私の脳の海馬のデータを一括削除して、空にしたい位ですよ」
真彩「あぁ、そうなるとハッカーに簡単に見られちゃうね、きっと。それは困るなぁ……」
優衣「(笑)そんな事しませんよ! 安心して下さい」
真彩「秘書さんにはあんまり隠し事したくないから話してたんだけど、負担になってたんだね。もう、言わない様にするね……」
すると、優衣、慌てて、
優衣「いやいや大丈夫だから。社長の事は何でも知っておきたいから……」
と、真彩の目を見て言う。
真彩「えぇー、パンドラの箱、容量オーバーで爆発したら偉い事になりますよ?」
優衣「大丈夫。また別のパンドラの箱作るから。ほら、お腹一杯でも別腹ってあるでしょ? 別脳に入れるから!」
必死になって言う優衣に、可笑しくなって笑う真彩。
真彩「素晴らしい発想! 有難う……」
【高槻レオマンション・806号室】
真彩、経机の前に座り、袈裟を着け、読経している。
真彩「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色……」
最後まで読経し、しばらく目を瞑り、祈っている。
そして、祈りから覚め、目が開く。
真彩の目から涙が零れ、頬を伝わる。
真彩(心の声)「スティーブ、救けてあげれなくてゴメン……私の事、愛してくれて有難うね……」
真彩(心の声)「スティーブ、救けてあげれなくてゴメン……私の事、愛してくれて有難うね……」
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