第110話 無知は罪なり

文字数 2,115文字

【カフェバー「Route72」】

夜、テーブル席に、悠斗、真彩、優衣が談笑している。
   
そこに、店主の松本がドリンクをトレイに乗せ、持って来る。

真彩「有難う」
と、松本に言う真彩。
   
真彩、トレイからドリンクを取り、
真彩「はい、優衣ちゃんはカシス・オレンジ。悠斗はジン・トニック」
と言って、優衣と悠斗の目の前に置く。
松本「はい、マーちゃんと僕は、ソルティ・ドッグ 」
と言って、真彩と自分の目の前に、ソルティ・ドッグを置く松本。
優衣「じゃー、悠ちゃんとマーちゃんに乾杯ー!」
四人はグラスを持ち、そのグラスを当て合う。

悠斗と真彩「有難う!」

皆、一口飲む。

そして、グラスを置き、優衣と松本が、悠斗と真彩に拍手を送る。

優衣「叔父さんにOK貰えて、ホント良かったね! 私、叔父さんの怒ってる顔、頭に浮かんでたから、すっごい心配だったわ」

真彩「あぁ、パパ、『なに訳の分からないこと言ってんだ!』って怒ったよ」

松本「そりゃーそうでしょ。自分の息子と娘が、面と向かって兄妹結婚したいって言い出したら、誰だってビックリするよ」

真彩「だね……」
優衣「でも、よく頑張ったよね。悠ちゃんも、マーちゃんも。叔父さんに逆らったこと無かったのに……」
悠斗「いや、逆らった事が無かった訳でもないよ、俺は。親父の言う事はいつも正しかったから、逆らう余地があんまり無かったって感じかな?」
優衣「ふーん……で、叔父さん、他に何か言ったりしなかったの?」

真彩「あぁ、パパ、心配してた。誹謗中傷あると思うから、受ける覚悟あるのか?……って」

松本「あぁ、SNSが便利な反面、簡単に誹謗中傷出来る様になっちゃったからね」

優衣「人を悪く言って攻撃したら、結局は自分に返って来て、痛い目に遭うのにね。やってる連中は、そんなこと解らないんだろうね……」

悠斗「人を陥れて喜ぶ連中が、世の中はびこってるからな」

松本「でも、そういう連中って、顔出しせずに自分を安全な場所に置いて、自分が被害に遭わない様にして、人を批判するんだよね。ずるいよね。陰のいじめっ子だもん。そんな連中、相手にするのってアホらしいよ。気にしない、気にしない!」
真彩「有難う。そんな悪には負けないから」
悠斗「うん。そんな奴らに負けてたまるか!」
と言って、悠斗と真彩、微笑み合う。

優衣「でも、人の事をあーだこーだって言う連中って、実は自分の事を良く見せたいっていう承認欲求が強いんだよ?! 類は友を呼ぶから嫌だねー」

松本「承認欲求かぁー。あぁ、前、言ってたやつだよね。誰かと比べて、その人より劣っているとか、その人よりも優れてるとか比較して、自分の価値を判断するんだよね?」

優衣「うん。そう」

悠斗「でも、日本は資本主義だから、競争社会だもんな。その影響だよな」

優衣「でも、その競争によって、昭和の時代、高度成長して、豊かな社会になったからね」

真彩「でも、悲しいかな、権力ある強い者達が社会を支配して、貧富の差、広げてるよね。見えない勢力、働いてるから……」
松本「勝った負けたの世界って、僕、マーちゃんと一緒で、嫌なんですけど……」
悠斗「だけど、企業の競争によって技術力が高まったり、商品が低価格になったり、接客とかのサービスも良くなったりで、俺達、その恩恵受けてるからなぁー」

優衣「もし競争がなかったら、必死で技術開発しないだろうから、技術の発展は今みたいに無いだろうし、消費者へのサービス精神も低下するし、価格なんかも企業に有利になるよね」

松本「そっか……」
真彩「今、この状況で自分はどう生き抜くか、日々、目の前の事に一生懸命取り組んで頑張るしかないよ……って言うか、何でこんな話になった?」
と、笑う真彩。

松本「あぁ……」
優衣「でもさぁー、人の幸せを妬んでたら、自分はいつまで経っても幸せにはなれないのにね」
真彩「うん。善因善果、悪因悪果だからね。善い事をしたら善い事が返って来るけど、悪い事したら悪い事が必ず自分に返ってくるからね……」
優衣「言葉で人を傷付けたら、必ず本人も言葉で傷付けられる事象が現れるからね」

悠斗「そういう理を知らない人達って、可哀想というか、哀れだよな。将来、自分に悪い事が降り掛かって来るのに……」
真彩「そうだよ。自分が作った業が、自分の子や孫にまで流れるのにね。子や孫が不幸になっても良いの?……って言いたいわ。『無知は罪なり』だよ」
優衣「ホント、そう思う。ソクラテスさんの言う通りだよ。『無知は罪なり』、『ねたみは魂の腐敗である』だよ」
真彩と優衣、頷きあう。
松本「でも、話がズレるけど、世の中ってさー、戦争、紛争、災害だらけだけど、世界平和って無理なのかなぁ?」
真彩「うーん、難しいんじゃない? だって、元々、この世は理不尽な世の中なんだから。理不尽な世の中に私達は生まれて来て、色んな事を乗り越える修行してる訳だから」
悠斗「善と悪が混在する世の中だからなぁー」
真彩「でも、全ての人が悪の心を無くして、善の心を強くすると、世界平和も夢じゃないかも。でも、そんな世の中、現実には有り得ないけど……それでも、そうなる事を祈るわ」
悠斗「うん」
悠斗、真彩の言葉に頷く。

そして、優衣と松本も頷く。
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