第129話 真彩、家出する

文字数 3,802文字

【高槻レオマンション・806号室】

夜、晩御飯の用意をして悠斗を待っている真彩。

悠斗が玄関の鍵を開け、家に入って来る。

真彩、直ぐに玄関に行って、
真彩「お帰りー」  
と、笑顔で悠斗に言う。
悠斗「只今……」
と、不機嫌な感じで返事をする悠斗。

悠斗、真彩と目を合わそうとしない。

悠斗、洗面所に行き、手洗い、うがいする。
そして、自分の部屋に行き、着替えてリビングに来る。

真彩、悠斗の所に行き、挨拶のキスを求める。

真彩「kiss me」
と言って、笑顔で、挨拶のキスを求める真彩。

悠斗の顔に笑顔はなく、真顔で真彩にキスをする。

しかし、真彩、微笑む。
そして悠斗の手を取り、悠斗に話し掛ける。
真彩「もうー、何怒ってんの?」
と言って、悠斗の顔を覗き込む真彩。
悠斗「別に」
と、冷たく言う悠斗。

真彩「あのさー、私には、何でも口に出して言うんだぞ!……って言ったくせに、自分は何にも言わないって、ズルくない?」

悠斗「?……」

真彩「悠斗がそんな態度なら、もう、私も何も言わない様にするからね!」

悠斗「……」
しかし悠斗、何も言わない。

真彩(心の声)「揺さぶりかけてもダメか……」
   
悠斗と真彩、会話なく食事する。

食事が終わり、悠斗、さっさと自分の部屋に行く。
真彩(心の声)「もう、しょうがないなぁー、今日は大サービスするか……」
悠斗、自分の部屋から出て来て、一人で風呂に入る。

真彩(心の声)「お誘い無しか……」

悠斗、風呂から上がり、自分の部屋に行く。

真彩、悠斗と入れ替わる様に風呂に入る。

真彩、風呂から上がり、下着、パジャマを着ず、バスタオルを巻いたまま悠斗の部屋に行
く。



【悠斗の部屋】

ノックして、悠斗の部屋に入る真彩。

悠斗、ベッドで横になり、本を読んでいる。
   
真彩、上布団をめくり、悠斗のベッドに入って行く。

悠斗、本を閉じ、サイドテーブルに置く。

そして体を翻し、真彩と反対方向に体位を動かす悠斗。

真彩、悠斗を後ろから抱き締める。
真彩「ねぇ、何怒ってるの?」
悠斗「何も怒ってないよ」
と言うと、悠斗、頭から上布団を被る。

仕方ないので、真彩、悠斗のパジャマを脱がそうとする。

すると、
悠斗「止めろよ、もう寝るんだから!」
と、怒った感じで言う悠斗。

真彩「寝て良いよ。私が勝手にするから!」
   
悠斗の怒った表情に対し、真彩は微笑んでいる。
   
真彩、必死になって悠斗のパジャマズボンとパンツを脱がす。
真彩「もうー、協力してくれないんだから……」
悠斗「……」
真彩、目を瞑っている悠斗を仰向けにして、おでこにキスをし、頬、唇にも優しくキスをする。

そして、悠斗の上パジャマのボタンをはずし、鍛えられた胸を愛撫し始める真彩。

時間を掛けて、悠斗の下半身までゆっくり丁寧に愛撫する。

そして、悠斗の男性器を握り、悠斗が喜ぶ行為をする真彩。

真彩の行為に、悠斗の身体が時々、ピクッと動く。

悠斗、目を瞑ったまま感じ入ってる。

そして真彩、悠斗の上に被さり、悠斗を抱き締める。
真彩「悠斗、愛してるよ」
真彩、色気のある声で、悠斗の耳元で囁く。
悠斗「ホントかよ」
と、悠斗、目を開けて、不貞腐れた感じで真彩に言う。

真彩「こんなに愛してるのに? 私の愛、感じないの? 悠斗の事、こんなに愛してるのになぁー」
と、悠斗の目を見て言う真彩。

悠斗「信じらんないよ」

真彩「えぇー、酷い!」

真彩、サイドテーブルの引き出しから避妊具を取り出し、悠斗の、大きく、硬くなってる陰茎に避妊具を着け、自分の女性器の膣に挿入する真彩。

そして、真彩、腰を揺らして悠斗を興奮させる。

悠斗「うぅ……」
悠斗、感じ入り、声が漏れる。
真彩「悠斗、愛してるよ。私が愛してるのは悠斗だけだよ。本当だよ」
すると悠斗、我慢出来ずに、体位を変え、真彩を下にする。

悠斗、真彩に激しいディープキスをし、真彩の首筋を愛撫する。

そして、腰を大きく動かす悠斗。

真彩「あぁ……」
   
そして、今度は、真彩を四つん這いにさせ、後ろから攻める悠斗。

悠斗の強い突きに、真彩、圧倒される。

真彩(心の声)「悠斗、本気で怒ってるんだ……怒りの鉄塊か?」

悠斗「うぅ……」
と、声が漏れる悠斗。
   
そして、悠斗、オーガズムに達する。
   
動きが止まり、真彩の背中の上に悠斗がそのまま乗っかっている。
真彩「悠斗、ごめんね、私、悠斗が何で怒ってるのか分かったよ。悠斗を翔ちゃんと間違えちゃったんだね? だから怒ってるんでしょ?」
悠斗、身体を起こし、テッシュを何枚か取り、避妊具を外す。

そして、うつ伏せになっている真彩を見る。
悠斗「誰なんだよ、翔ちゃんって。聞きたくないけど、元カレか?」
真彩「そんなんじゃないよ」

悠斗「じゃー、今、付き合ってる奴なのか?」

真彩「翔ちゃんはいつも優しくて、絶対に怒らないし、いつも私の事、救けてくれて、大好きな存在」

悠斗「そんな男がいたんだ……俺、全然気付かなかった」
   
悠斗、神妙な顔をしている。
真彩「ふふっ……翔ちゃん、悠斗の事も大好きだよ?!」
悠斗「はぁ?」
真彩、悠斗を見る。

真彩「悠斗が小学生の時、ママと私の目の前で、自転車乗ってて、車に跳ねられて五メートル位、飛ばされたでしょ?」

悠斗「あぁ……」

真彩「あの時、コンクリートに叩きつけられたのに無傷だったのって、翔ちゃんが、悠斗を抱き留めて、そっと地面に降ろしてくれたからなんだよ?!」

悠斗「はぁ?」

真彩「翔ちゃんからしたら悠斗は弟だから」

悠斗、怪訝な顔で真彩を見る。

悠斗「何言ってんだ? 大丈夫か? 頭でも打ったんじゃないか?」
真彩「打ってないよ! 翔ちゃんは、私達のお兄ちゃんなんだよ!」
悠斗「はぁ? やっぱり真彩おかしい。憑依されてるのか?」
悠斗、眉間に皺が寄る。

しかし、真彩は微笑んでいる。

悠斗「戸籍謄本見てみろ、俺は長男だぞ。上にそんな兄はいないよ」

真彩「あのね、翔ちゃん、ママのお腹に居る時に臍の緒が首に巻きついて、死んじゃったの。だから戸籍には載ってないの」

悠斗「えっ?……ホント? そんなの初めて聞いたぞ」

真彩「子どもを亡くして辛い想いして、それをぺらぺらと話す? ママ、思い出すだけで胸が苦しくなるのに」

悠斗「……」

真彩「翔ちゃんね、私が川で溺れたり海で溺れた時、救けに来てくれたの。あと、お風呂で寝ちゃって、顔が湯船に浸かって息出来ない時、何度か救けに来てくれたの。だから、この前もてっきり翔ちゃんだと思って……」

悠斗「?……」

真彩「ゴメンね。あれ、悠斗だったんだね」

悠斗「……」
悠斗、訳が分からず、戸惑っている。
真彩「翔ちゃんって、悠斗そっくりなんだよね。一卵性双生児みたいに。だから、てっきり翔ちゃんだと思ったの。ホント、ゴメンね」
悠斗「そんなに俺に似てるの?」
真彩「うん。そっくり。瓜二つ。ママも間違う位だもん」
と言って、真彩、微笑む。

真彩「間違えてゴメンね。許して?」

悠斗「んー、何か、信じられないよ。でも、しょうがないから許す。でも……」

真彩「でも?」

悠斗「俺の顔見て『翔ちゃん大ー好き』って言うからめっちゃ腹立った。俺にあんな色気ある声で大好きって言ってくれた事ないし……」

真彩「えぇ? いつも言ってるジャン」

悠斗「俺の知らないところで翔って男と出来てたなんて……って思ったら、腹の虫が収まらなくなって……」

真彩「……」
   
しばらく沈黙が続く。
真彩「でもさー、離婚前ってこうなるんだなって、疑似体験させて貰ったね」
悠斗「えっ?……」
真彩「喋らなくなって、目を合わせなくなって、笑顔も無く、食事の時も無言で、ちょっと話し掛けたら嫌な顔して、セックスレスになって、家庭内別居して、離婚になるんだよね。この前、離婚した女性達が話してたのと一緒だわ」

悠斗「いや、何でそこまで悪い方に発展させる? 俺は、只単に真彩が他の男の名前呼んだから腹立っただけだよ」

真彩「じゃー、仲直りするつもりあった?」

悠斗「あぁ、勿論あったよ」

真彩「でも、私が事情言ってなかったら、どうだっただろうね? 私は浮気なんてしてないのに、浮気したと濡れ衣着せられて、毎日冷たくあしらわれて……」

悠斗「あぁ……」
真彩「不機嫌な態度で接するのは、精神的苦痛与える訳だから、サイレントモラハラだよ? れっきとしたモラルハラスメントだよ!」
   
真彩の言葉に、神妙な顔になる悠斗。

真彩「やっぱり、一緒に暮らすってしんどいね。ずっとこんなんだったら、お互い心が病んじゃうもんね。私、この一週間、精神的にしんどかったもん。辛かったよ」
   
真彩、悲しそうな顔をする。

悠斗「……」  
悠斗、何も言えず。
 
真彩、起き上がり、テッシュボックスからティッシュを何枚か取り、濡れた女性器を拭く。
   
そして、悠斗のベッドから降り、巻いていたバスタオルを持ち、悠斗の部屋を出る真彩。

悠斗、呆然としている。



【バスルーム】

真彩、シャワーを掛かっている。

しばらくして悠斗がやって来る。
   
真彩、バスルームから直ぐに出る。

悠斗、気まずい表情。



【玄関】

真彩、外出着を着て、スーツケースを持ち、玄関で靴を履いている。

そこに悠斗がやって来る。
悠斗「えっ、こんな夜中にどこ行くの?」
真彩「どこだって良いでしょ?! 空気悪いから出て行く。さようなら!」
と、捨て台詞を残し、ドアを開けて出て行く真彩。

悠斗「えぇ?……」

悠斗、茫然とする。
悠斗(心の声)「真彩ちゃん……ごめん……」
悠斗、後悔の念に駆られる。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色