第124話 結婚指輪

文字数 3,349文字

【阪急百貨店うめだ本店】

休日に梅田に行き、クリスマスの飾り付けを楽しんでいる悠斗と真彩。

阪急百貨店のショーウインドウを見て楽しんでいる。

二人共、マスクを着け、伊達メガネをし、帽子を被っている。

真彩は、この時期になると必ずここに来て、ショーウィンドウを見て楽しんでいる。
真彩「あっ、去年と同じだ……今年も『不思議の国のアリス』だわ」
悠斗「わぁ、凄いな……」
真彩「この世界観、楽しいなぁー。私、こんなの大好きなんだよね。今年も楽しませて貰えて、有難いわ」

悠斗「でも、『不思議の国のアリス』って、何で、何年経っても人気があるんだろうな? 不思議だわ」

真彩「よく言われるのが、可愛いだけじゃなくて、毒っ気ある世界だからって事らしいよ」

悠斗「毒っ気?」

真彩「うん。常識とかルールが通用しない世界だから、アリスが常識なんかにとらわれずに、興味持った事を探求していって欲しいっていう作者のルイス・キャロルさんの願いが込められてるみたい」
悠斗「ふーん。物語の中に作者の惟いを入れてる訳だ……」
真彩「まぁ、考えて作る物には人の惟いが籠ってるからね。映画、小説、曲、農作物、プロダクト、全てだよね」
悠斗「しっかし、真彩は昔から、ここ、好きだよな。目を輝かせて見てたもんな」

真彩「うん。好きだわ」

悠斗「でも、こんな大掛かりなディスプレイ、大変だろうなぁー。めちゃ凝ってるもんな……」

真彩「うん。大変だと思う。見る方は楽しいけどね。でも、やっぱ、動く仕掛けはワクワクするわ」

すると、
悠斗「あぁ、ねぇ、そこに立ってよ!」
と言って、ディスプレイの前に真彩を立たせようとする悠斗。

真彩、直ぐに悠斗に従う。
そして、ピースのポーズをする。
すると悠斗、スマホで真彩を撮影する。

悠斗「OK!」

真彩「ねぇ、インカメラで一緒に撮ろ?」
と真彩が言うと、
悠斗「そうだな」
と言って、微笑む悠斗。

悠斗、スマホを持った右手を伸ばし、真彩と共に写真に映り、撮る。
悠斗「ねぇ、そろそろ結婚指輪、指に着けない?」
真彩「あぁ、私もそう思ってた。パパの許可も得た訳だから、着けても良いかな?……って。でも、何か、戸惑いがある」
悠斗「戸惑いあるか……」

真彩「だって、非公開にしてたのを公開する感じで……」

悠斗(心の声)「まぁ、兄妹だから、公には出来ないからなぁー」

真彩「何か、『忍恋』って、頭に浮かんだ」
と言って笑う真彩。

悠斗「えぇ?」

真彩「今度の新曲、このタイトルで行こうかな?」

悠斗「もう、真彩は何でも歌詞にするんだから。でも、それ、良いね!」

悠斗と真彩、微笑み合う。

   

【大阪市・御堂筋】

夜、御堂筋通りを、手を繋いで歩く悠斗と真彩。
自然と恋人繋ぎになる。

真彩(心の声)「そう言えば、私が小さい頃は、悠斗がずっと私と手を繋いで歩いてくれてたなぁー。私が内弁慶なのに、好奇心旺盛の子だったから、あちこち見て、ちょこまかしてたからなぁー」

悠斗(心の声)「真彩が小さい時は、いっつも手を繋いで歩いてたなぁー。ホント、可愛かったなぁー」
   
青や緑の輝くイルミネーションを見ながら、楽しそうに歩いている悠斗と真彩。
悠斗「社長の仕事も、もうちょっとだね」
真彩「うん……来年の今頃は、私、何してるんだろう?」
悠斗「伯父さんは真彩に社長続けて欲しいって願ってるけど、でも、俺も母さんも、一日も早く辞めて欲しいって思ってるから。真彩の命、削ってる様に思うから」

真彩「じゃー、悠斗がご希望の専業主婦になって、一生、悠斗に養って貰おうかな?」

悠斗「おぅ、勿論だよ。俺が一生養うから、任せろ!」

真彩「ふふっ……有難う。その気持ち、嬉しいわ。でも、子どもが出来たら本当に専業主婦が良いな。学校から帰ったら、いつも『お帰り!』って言ってあげたいし、悠斗にも家に帰って来た時、余裕の笑顔で迎えたいもんね」
と言うと、真彩、悠斗を見て、微笑む。



【大阪・中之島公園】

人気の少ない薄暗い場所で、真彩と悠斗、抱き合ってキスをしている。

悠斗が、真彩のネックレスに通している指輪を取り外す。

そして、その取り外した指輪を、真彩の左薬指にはめる。

今度は、真彩が悠斗のネックレスに通している指輪を取り外す。

そして、その取り外した指輪を、悠斗に左薬指にはめる。

二人、左手を見せ合い、微笑み合う。
悠斗「真彩、愛してる」
と、真彩の目を見て言う悠斗。

すると、
真彩「悠斗、愛してる」
と、真彩も悠斗の目を見て言う。

そして、一生、共に生き、共に愛する約束のキスを交わす悠斗と真彩。

悠斗「ここでエッチしたい」
と、甘えた感じで言う悠斗。

真彩「ダメだよ、こんな公共の場で」

悠斗「したいなぁー」
と言って、口を尖らせる。

真彩「本気で言ってる?」
と、微笑んで言う真彩。

悠斗「半分本気」
と言って、悠斗、笑う。
真彩「もうー、じゃー、早く家に帰ってしよ? 悠斗がそんなこと言うから、神経が下半身を刺激してるんですけど……」
すると悠斗、真彩の身体の匂いを嗅ぐ。
悠斗「真彩のフェロモン、半端ないよ。帰ろ、帰ろ!」
と言って、悠斗、真彩の手を取り、大阪駅へと歩き出す。



【高槻レオマンション・806号室】

真彩、リビングで夜景を見ている。

真彩「今日の夜景、空気が澄んでるかして一段と綺麗だね」
  
すると悠斗、真彩をバックハグしに来る。
悠斗「綺麗だな。まるで宝石だな。生駒山から見る夜景も、六甲山から見る夜景も美しいけど、でも、真彩の輝きには負けるな」
と、悠斗が真面目に言う。
真彩「もう! 悠斗は女性を口説くのが上手だね。今迄、そうやって女性を口説いてたの? 残念ながら、私はその手には乗りませんから!」
と言って、笑いながら、振り返って悠斗の顔を見る真彩。

しかし、悠斗は真面目な顔で、
悠斗「真彩の輝きは、どこにもない輝きだからなぁー。クリスタルで、ちょっとエメラルドグリーンが掛かってて、美しいからなぁー」
と、しみじみと言う。

真彩「えぇ?」
悠斗「赤ちゃんの時から真彩は輝いてたよ。それに、俺、女性を口説いたのは、真彩だけだよ。真彩を初めて見た時に一目惚れしたんだから」
と言うと、悠斗、真彩の首筋に沿ってキスする。
真彩「えぇー?! 悠斗も見えてたの? そりゃー、小さい頃、かくれんぼしても、直ぐに悠斗に見つかる訳だ。ずるいよ、黙ってて」
悠斗「えぇ? 何度か言ったけど? 真彩が信じようとしなかっただけでしょ?」

真彩「えぇー?」

悠斗「真彩は、風の谷のナウシカ姫みたいになりたいって言ってたけど、真彩は生まれた時から既に、竹取物語のかぐや姫だったから」

真彩「?……」
悠斗「真彩は宇宙から来たんだって、会った瞬間、思った」
真彩「んなアホな」
悠斗「普通の人は、んなアホなって言うよな。でも、解る人には解るんだよ」
と言うと、悠斗、真彩の服を脱がして行く。

そして、真彩を全裸にして、真彩の裸体を眺める。
   
悠斗、両手の人差し指と親指でフレームに見立てて、写真を撮るポーズをする。

悠斗「あぁ……真彩のヌード写真、撮りたい。でも、そんな写真、存在させちゃーいけないから、我慢してるけど……」

真彩「そんなのが存在すると、嫌だし、怖いもんね。だから頭の中でシャッター押してくれる?」

悠斗「頭の中でかぁー。もうとっくに押してる。押しまくって、脳の海馬に永久保存してる」
と言うと、悠斗、真彩を抱き締める。

真彩「……」
悠斗「だから、真彩と疎遠状態の時、海馬から写真、引っ張り出して、一人で真彩とエアセックスしてた」
真彩「もうー」
と笑う真彩。
真彩「あぁ、でも、写真家の篠山紀信さんだったらヌード写真、OKしたかもね」
悠斗「えぇー?! じゃー、もし、未だ生きておられたら、撮って貰ってた可能性あったんだ」

真彩「んんー、でも、一般人が、あんな一流の人に撮って貰うのは無理だよ」

悠斗「でも、もし、それが実現するってなってたなら、俺、全力で阻止してたわ。念じて、レンズに霧掛けたり、ホワイトバランス不能にしたり、シャッター押せない様に阻止してたわ」

真彩「そっか、篠山紀信さんだけど、ダメなんだ……」
悠斗「当ったり前だろ。真彩の裸、誰にも見せたくないもん。俺だけのものだもん」
真彩「そっかぁー……悠斗だけのものだもんね、私は」
悠斗「そうだよ。真彩は俺だけのもの!」

悠斗と真彩、微笑み合う。
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