第85話 祖母の存在

文字数 1,184文字

【高槻レオマンション・806号室】

夜遅く、真彩、玄関ドアを開け、家に入る。

黙って靴を脱ぎ、リビングに行く。
リビングには悠斗が居る。
悠斗「お帰り!」
と、優しい笑顔で真彩に言う悠斗。

真彩、ちらっと悠斗を見て、
真彩「只今……」
と、作り笑顔で言う。

真彩、鞄を置き、直ぐに洗面所に行き、手を洗い、うがいをする。

そして、リビングに戻って来て、冷蔵庫に入れてあるペットボトルのミネラルウォーターを取り出し、一口飲む。

悠斗「女子会、楽しかった?」

真彩「うん……」

真彩、悠斗の言葉に頷く。

ペットボトルのミネラルウォーターを、また冷蔵庫に入れ、冷蔵庫の扉を静かに閉める。

そして、鞄を持ち、自分の部屋に行く真彩。

悠斗「?……」
   
真彩、パジャマに着替え、歯を磨きに洗面所に行き、その後は自分の部屋に籠る。
そして、自分のベッドで朝まで寝る。

悠斗、静かに真彩を見守り、何も言わず。



【悠斗の部屋】

朝、悠斗、目を覚まし、真彩が横に寝ていない事に寂しさを覚える。

そして、リビングに行く悠斗。

ダイニングテーブルには、悠斗の為に朝食が用意してあり、埃が掛からない様に、きちんとカバーしてある。

悠斗「……」

スクランブルエッグの横にレタスが添えられ、トマト、ソーセージ、クロワッサンも一緒に、大皿に乗っている。

サイフォンコーヒーも、三杯分用意されてある。
悠斗(心の声)「真彩……顔合わせたくないんだな。でも、ちゃんと朝食、用意してくれたんだ……有難う」


【真言密教寺院・真正寺】

真正寺の庭のベンチに腰掛けて、休憩している髙橋綾子(78歳)。

綾子は、真彩の母・亜希の母親である。

故に、真彩からすると、祖母にあたる。

この祖母も代々受け継がれている霊能者だ。


真彩、この日は休日出勤せず、朝から行われていた、法要の手伝いをしていた。

真彩、綾子の姿を見かけ、直ぐに綾子の所に行く。

そして、黙ってベンチに座る真彩。
綾子「マーちゃん、お疲れ様。今日も有難うね!」
と、優しい口調で言う綾子。
真彩「ううん……」
と、首を横に振る真彩。



しばらく無言の二人。



真彩、目から涙が零れ落ち、頬に伝わる。

綾子、真彩を抱き寄せる。

綾子「辛いね……」

綾子、真彩から何も聞かずとも、真彩の心を察している。

真彩が辛い時は、いつもこうやって、綾子と一緒にベンチに座り、涙を流していた真彩。

真彩が小さい頃からずっと、心の支えとなってくれている綾子だった。

綾子「マーちゃんは、今、因縁の渦の中に巻き込まれてる状態だから、不安や恐怖心があるんだね」
真彩「……」
真彩、何も言えず。

綾子「マーちゃん。お祖母ちゃんにはね、マーちゃんと悠斗が、年取っても、仲良く支え合って、楽しく暮らしてる光景が映ってるよ」

真彩「?……」
綾子「畏れは、悪因を引き寄せちゃうよ?」
真彩「……うん……」

綾子「笑顔で善因を引き寄せないと!」
真彩「うん……」
綾子、真彩の頭を優しく撫でる。
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