第115話 亜希の元カレ

文字数 7,817文字

【イタリアンレストラン・ボーノ】

悠斗と真彩、仕事を定時で終らせ、イタリアンの店で一緒に夕食を摂っている。
真彩「ねぇ、何かあった? 浮かない顔してるけど」
悠斗「えっ?……あぁ……」
真彩「どうしたの? 仕事で何かトラブルあったの?」

悠斗「いや、仕事じゃなくて……」

真彩「んん? じゃー、また、可愛い女の子に迫って来られた?」
と、笑顔で冗談を言う真彩。

すると悠斗、
悠斗「違うよ!」
と、ちょっと口を尖らせて言う悠斗。

悠斗「実はさぁー、今日、駅の構内で母さん見たんだよね……」

真彩「ふーん……So what? 」

悠斗「それがさー、嬉しそうな顔して、知らない男に手振って、再会を喜んでる感じだったんだよな。母さんの、あんな無邪気で嬉しそうな顔、久々見たからさぁ……」

真彩「えっ?……ママの所に行って、『誰?』って聞けば良かったジャン」

悠斗「いや、そんな雰囲気じゃなくて……入り込む隙間が無かったんだよな。何か、二人の楽し空間を邪魔しちゃー悪いかな?……って思って……」

真彩「ふーん……誰なんだろうね?」
悠斗「俺の直感だけど、母さんの元カレじゃないかな?……って思った」
真彩「そっか……元カレと再会を喜べるって事は、嫌な別れ方してないって事だよね? ママ、元カレの事、未だ好きなのかな? それか、社交辞令?」
悠斗「いやー、社交辞令じゃないと思う。本当に乙女の様な感じだったから……」

真彩「ふーん……それは問題だなぁー。あぁ、でも、どの元カレかな?」

悠斗「えっ?……」

真彩「ママをパパに取られた時の元カレかな? あぁ、でも、その元カレじゃーないよね、きっと。その時の事、怒ってるだろうし……じゃあ、その前の元カレかな? んん? その前か?」

悠斗「えっ? 真彩、母さんが付き合ってた人の事、知ってるんだ……」

真彩「あぁ、前、教えてくれたから」
悠斗「えぇー? 女同士って、そんな事も話すんだ……」
ちょっとドン引きしてる悠斗。
真彩「あぁー、ママに直接聞いてみるよ。うん」
と言って、真彩、一人頷く。

【中村家】

真彩、週末、早めに仕事を片付け、実家に帰っている。
そして、亜希と二人、ダイニングテーブルで、向かい合って夕食を摂っている。
亜希「ご馳走様でした! たまにはテイクアウトも良いね。この海鮮丼、美味しかった。有難う」
真彩「いえいえ、たまには楽(らく)しよう!」
と言って、微笑む真彩。

亜希と真彩「ご馳走様でした!」
と言って、真正寺でいつも誦えられている、食べれる事への感謝の観念を、合掌しながら誦える亜希と真彩。

亜希「美味しい物を食べれて、感謝、感謝」

真彩も同じ様に、
真彩「食べれる事に、感謝、感謝」
と言って、微笑む。

真彩、ちょっと気を使いながら、亜希に問いかける。

真彩「ねぇ、パパ、今日も勉強会兼ねた飲み会?」

亜希「うん。今日もやっさんのお店で、いつもの仲間と飲むって言ってた」

真彩「そっか……ホント、仲良いよね、あの連中……」

すると、真彩、身を乗り出して、
真彩「ねぇ、ママ」
と言って、亜希の目を見る。

亜希「うん? 何?」
と言って、お茶を飲む亜希。
真彩「今、パパ以外に好きな人いる?」
と、唐突に亜希に尋ねる真彩。

真彩の唐突な質問に驚き、口に含んでいるお茶を、吹き出しそうになる亜希。
   
そして亜希、むせ込み、コホコホと苦しそうにする。

真彩「大丈夫?」
と言って、亜希の背中をさすりに行く真彩。
亜希「変なとこ入った……」
と言いつつ、未だコホコホしている。
真彩「ゴメン、ゴメン。気管に入っちゃったね」
亜希、しばらくして、落ち着く。

亜希「あービックリした。何を言い出すかと思ったら」
   
真彩「いや実はさぁー、悠斗が見ちゃったんだって。駅の構内でママと知らない男性が会ってるところを」

すると、
亜希「あぁ、見られちゃったか……」
と言って、笑顔の亜希。

真彩「あの、大丈夫?」

亜希「んん? 何が?」

真彩「いやー、この前、パパがコソコソと元カノと会ってたから、ママ、腹いせにそういう事したのかな?……って思ったりして」

亜希「そういう事って? 別にやましい事なんてしてないよ?!」

真彩「そうなの? あのー、その人って、元カレ?」

亜希「あぁ、うん。元カレ。でも、今も仲良いけど、単なる友達だよ?!」

真彩「そうなんだ……」

亜希「彼、ずっとカリフォルニアの方に住んでて、久しぶりに日本に帰って来たから連絡くれたの。で、一緒に食事して、お互いの近況を報告しあっただけだよ?」

真彩「ふーん。その人って、奥さんと子ども、いるの?」

亜希「あぁ、アメリカ人の人と結婚して、子ども二人いるけど、奥さん、Cancer(癌)で三年前に亡くなったって言ってた」

真彩「えぇー、未だ若かっただろうに……じゃー、今、独り身なんだ」
亜希「うん。独り身だから寂しいって言ってた」
真彩「寂しくなったから、ママに会いに来たんだ……」
亜希「あぁ……まぁ、そんな様な事、言ってた」
と言って微笑む亜希。

真彩「そうなんだ……じゃー、変な話、復縁迫られたとか?」
真彩、首を傾げて亜希の反応を見る。

亜希「あぁ、『もし、旦那さんと上手く行ってない様だったら、カリフォルニアで一緒に暮らさない?』って言われた」

真彩「えっ?……」

亜希「彼、直ぐ冗談言うから……」
と言って笑う亜希。

真彩「えっ? じゃー、ママに会う為に日本に帰って来たって事?」

亜希「まさか。用事あったついでに会いに来てくれたと思うよ?!」

真彩「……」

亜希「彼ね、もう、子ども達も大きくなったから、これからは自分の好きな様に生きるんだって言ってた。自由で良いよね」

真彩(心の声)「ママ、自由になりたいのかなぁ……ママは、沢山しがらみあるからなぁ……」

真彩「ねぇ、その元カレって、どの元カレ?」

亜希「えぇ?……」
真彩「まさか、ママをパパに奪われた時の元カレじゃないよね?」
亜希「あぁ、そうだけど」
真彩「えぇー?! その人、ママの事、恨んでないの? だって、振った訳でしょ?」

亜希「あぁー、真意は分からないけど、気の合う友達だから……」

真彩「あの、悪く考えると、昔、ママをパパに奪われたから、今度は奪い返しに来たんじゃないの?」

亜希「まさか。考え過ぎー」
と言って、笑う亜希。

真彩「でも、可能性有ると思うけど? 子どもに手が掛からなくなって、自分の人生を謳歌したい訳だからさぁー。残りの人生、好きな人と一緒に暮らしたいと思うよ?」

亜希「まぁね……真彩は鋭いね。彼、実はそういう気持ち、有るみたい。そう感じた」
真彩「やっぱり。で? ママ、何て返事したの?」
亜希「あぁ、勿論、このまま友達の関係でいたいって言ったよ?!」
と、微笑む亜希。

真彩「えぇ、でも、そんなんで相手は納得しないでしょ?!」

亜希「うーん、でも、しょうがないじゃない。ママ、パパと結婚してるんだから。独身の時みたいに、一人でフラッとカリフォルニアになんて行けないしね」

真彩「へーぇ、彼氏に会いに、フラッとカリフォルニアまで行ってたんだ……」

亜希(心の声)「あっ……口が滑った……真彩に誘導された……」
   
真彩、ニッコリ笑う。

亜希「……」

すると真彩、亜希の顔をじーっと見詰める。

亜希「んん?……何?……」
   
真彩に見詰められ、心の中を見透かされてる様で、思わず、身体をのけ反る亜希。

真彩「あのさー」

亜希「んん?……何か、怖いんですけど……」
と、真顔で言う亜希。
真彩「あのさー、最近、パパとセックスしてる?」
真彩、唐突に、真剣な顔で亜希に尋ねる。

亜希、真彩の言葉に驚く。

亜希「えぇー、何を言われるかと思ったら、そんな事?」

真彩「うん。そんな事」
亜希「そんな事、親に聞くか?」
と言って、真彩を見ながら首を傾げる亜希。

真彩「あのさー、これって大事な事だよ?!」
   
真彩の目力に圧倒される亜希。

亜希「あぁ……んーん……随分、ご無沙汰してる」

真彩「やっぱり……」

亜希「パパ、帰って来るの遅いからねぇー」
   
真彩、腕を組んで、何やら考えている。

亜希「?……」
亜希、その後、何も言えず。

すると、真彩、突然、
真彩「帰るわ!」
と言って、鞄を持ち、さっさと玄関に向かう。
亜希「えっ?……」
亜希、真彩の行動の早さに、唖然とする。



【寿司屋「ヤスヒロ」】

智之が、地元の同級生二人と共に、親友である安藤康弘(56歳)の寿司屋に来ている。

この四人は、学生時代から仲が良くて、会話が尽きる事はない。

話の内容は、時事ネタが殆どで、勉強会を兼ねている。

生ビールのジョッキが手元に来て、今から楽しい定例会の始まりだ。

皆で、「乾杯ー!」と言ってジョッキをかち合わせた時、店の扉が開き、真彩が店内に入って来る。
安藤「いらっしゃい!」
と元気な声で真彩に言う、店主の安藤。

店のスタッフも「いらっしゃい!」と、元気な声で真彩を迎え入れる。

智之、真彩の顔を見て驚く。
智之「おう、真彩」
真彩、皆に、
真彩「今晩は! いつも父がお世話になってます」
と言って、会釈する。

そして直ぐに智之の所に行き、耳元で、
真彩「パパ、ちょっと大事な話があるんだけど……」
と、真剣な顔で智之に言う真彩。

智之「えっ? 何かあったのか?」

智之、真彩が真剣な顔で言うので、ただ事ではないと察した。
真彩「うん。深刻な事態」
と、小声ではなく、わざと、いつもの普通のトーンで言う真彩。

智之「えっ?」

真彩の『深刻な事態』というワードに、智之、驚く。

智之の同級生達は、何か良く無い事が起こったと思い、
安藤「おい、今日はもう帰った方が良いんじゃないか?」
と言って、智之を帰そうとする。

他の二人も、帰った方が良いと頷いている。

智之、察して、
智之「あぁ……じゃー……皆んな、ゴメンな!」
と言うと、智之、鞄を持ち、財布から金を出そうとする。

安藤「あぁ、もう良いから、はよ帰れ! ビール、俺が飲んどくから」
と言って、真彩と一緒に帰る様に促す安藤。

智之「あぁ、じゃー、お言葉に甘えて……有難う!」

智之と真彩、皆に会釈して、店を出る。



【道路沿いの歩道・コンビニの駐車場】

歩道を、ゆっくりと歩く智之と真彩。
智之「で、深刻な事態って何なんだ?」
と、真彩に尋ねる智之。

すると、通り道にコンビニがあったので、真彩、智之の腕を引っ張り、そこの駐車場に連れて行く。

そして、智之の前に立ちはだかり、
真彩「パパ!」
と、怒った感じで言う真彩。

智之「んん? 何だ?」
驚いた顔の智之。

智之、真彩が珍しく怒っているので、何事かと驚いている。
真彩「パパは、ママがアメリカに連れて行かれても良いの?!」
智之「んん? 何言ってんの? 意味分からん……?」

真彩「カリフォルニアに住んでる元カレが、ママを連れに来たんだよ?!」

智之「えっ?」
智之、真彩の言葉に驚く。
真彩「ねぇ、ママとセックスしたのっていつ?」
智之、真彩の言葉にまた驚く。
智之「えっ?……いや、そんな事……娘に言える訳ないだろ」
真彩「仕事が忙しいのは分かるけど、友達との勉強会や懇親会も大事って分かるけど、でも、もうちょっと、ママに時間、割いてあげたら?」

智之「あぁ……」

真彩「ママ、寂しい想いしてるよ?!」

智之「えっ? そうなのか? ママもお寺の手伝いで忙しいから、毎日疲れてるだろうと思ってたから……」

真彩「あのねー、ママだって女だよ?! いくらお寺勤めして忙しいからって言ったって、一人の女だよ? パパに愛されたいって思ってるんじゃないかな?」

智之、真彩の言う事にタジタジ。

娘に説教され、また、セックスの事も指摘され、恥ずかしい気持ちで一杯の智之。
真彩「お互い、忙しさにかまけて愛情表現無くなったら、只の同居人だよ?!
智之「?……」

真彩「心が寂しい時に、優しい言葉を掛けられたり、自分の事を心配してくれたり、想ってくれる人が目の前に現れたらどうなる?」

智之「あぁ……」

真彩「コロッとそっちに心が行っちゃうよ?!」

智之「……」

真彩「自分の事なんてほったらかしの旦那よりも、ずっと自分の事を想ってくれてる優しい人と一緒に居たい……って、誰だって思うんじゃない?」

すると、智之、
智之「そいつ、ママをアメリカに連れて行こうとしてるのか?」
と、真彩に尋ねる智之。

真彩「うん。そうみたい。だから一時帰国して、ママに会いに来たみたいよ?!」

智之「いやでも、ママはそんな事する人じゃないって、真彩が一番よく解ってるんじゃないのか?」

すると、
真彩「パパ、甘い! 自分の奥さんに限って、そんな事は絶対ないって思うのは愚かだよ?!」
と言って、智之に叱咤する真彩。

智之「えぇ?……」
智之、真彩の言葉にドン引きする。

真彩「ママも、所詮、人間なんだよ?! パパは安心し過ぎ! だからママへの献身力が足りないんだよ。自分の事を愛して貰おうと思ったら、自分も相手を愛さないと!」

智之「あぁ……」
真彩「それは、心で想ってるだけじゃー伝わらないよ?! ちゃんと言葉にして、声に出して言わないと! 態度でも示さないと! スキンシップって大事だよ?!」
智之「そうか……ママには伝わってると思ってたんだけど……」
真彩「その考えが、甘いんだよ! 今、ママ、寂しい想いをしてるよ?!」

智之「そうか?」

しかし、智之が何だか煮え切らない態度なので、
真彩「あのさー、黙っておこうと思ってたんだけど、パパ、解ってないから言わせて貰うね!」
と、意味深な発言をする真彩。

智之「何だ? 結構、言われてるけど……?」

真彩、一呼吸おいて、
真彩「パパさぁー、この前、元カノとデートしてたでしょ?!」
と、言って、智之をじっと睨む真彩。

智之「えっ?……」
智之、隠していた事を真彩に言い当てられ、動揺する。

真彩「悠斗と見ちゃったんだよね。パパと元カノが、楽しそうに腕組んでホテルから出て来る所を」
智之「えっ?……いや、あれは、違うんだ。彼女が病気でもう」
と、智之が言い訳しようとすると、真彩が、
真彩「解ってる」
と言って、手の平を出し、智之の話をストップさせる。

智之「えっ?……」

真彩「でも、ママにちゃんと言わず、コソコソと隠れてデートしたから、ママ、悲しんでた」

智之「ママに知られちゃったか……悪い事は出来ないな。あぁ、いや、別に何もなかったから。ホントに。ご飯一緒に食べて、彼女の行きたかった所に連れてってあげただけだから。信じてくれ!」

真彩「……」
冷めた目で、智之を見る真彩。
智之「いや、正直に言ったら、ママは反対しないだろうけど、でも、絶対、嫌な想いすると思ってな……」
真彩「でも、そういう事、正直に、ママにちゃんと言わないとダメなんじゃない? でないと、どんどんママとの溝が深まって、広がって、愛情なんか消えて無くなって、氷の世界になっちゃうよ?」

智之「氷の世界?」
真彩「女はね、裏切られたって分かったら、サーッって、直ぐに愛情、冷めちゃうから!」
智之「そうなのか?」
と言って、神妙な顔の智之。

真彩「ママの元カレさんね、奥さんを三年前に亡くしてるんだって。で、今、フリーだから、ママに会い来る為に一時帰国したらしいよ。残りの人生を、ママと一緒に暮らしたいって言われたみたい」
  
智之「えぇー?!……そうなのか?」

真彩「ママと元カレ、相思相愛だったのを、パパが邪魔して、ママを奪ったんでしょ? パパはこの前、会ってた元カノさんと付き合ってたにも拘らず」
智之「あぁ……パパの一目惚れでなぁー。ママしか眼中に入らなくなって、いけない事だと分かってて、猛アタックして奪った……」
真彩の言葉の誘導に、まんまと引っ掛かっている智之。


素直に真彩の話を聞き、素直に質問に答えている智之。

智之、まるで暗示にかかっているかの様。

真彩「略奪してこれかぁー……パパって自己中だよね。ママ、可哀想……」

すると、智之、
智之「あれっ?……真彩、何か、いつもの真彩じゃないな。また憑依されてるのか?」
と、言い出す。

すると、
真彩「されてません! 私は、パパに怒ってるだけです!」
と言って、頬っぺたを膨らます真彩。

真彩「本来、人のものを略奪したら、今度は自分が略奪される番になるっていうのが、因果応報の理なんだよ?! 世間で略奪婚した人達の末路って、そうでしょ? けど、そんな事になってないのは、ママのお蔭なんだからね! ママがお寺勤めしてるから、理性で保ってるお蔭なんだよ?!」

智之「あぁ、言いたい事は分かる……」

真彩「でも、もし、その理性を、元カレが強い愛情で丸ごと包み込んだら、ママ、カリフォルニアに行っちゃう可能性有りだよ? 所詮、人間なんだから……」
智之「あぁ……言われるとそうだな。ママに甘えてたな……」

真彩「ママっていう素晴らしい人が、こんな足りない自分の奥さんで居てくれるっていう感謝が、パパには無いでしょ?」

智之「いや、感謝はしてるつもりだけど……」

真彩「感謝が足りないよ! ママが傍にいてくれるのが当たり前じゃないんだよ?! ママが突然、居なくなって、後悔するのはパパだよ?」

智之「……はい……」

真彩「それに、ママの事、好きな男性は沢山、居るんだよ? パパは気付いてないだろうけど」

智之「えっ? そうなのか?」

真彩、大きく頷く。
真彩「ママ、何人にも言い寄られてたのを知ってるもん。ママ、人気者だよ?!」
智之「あぁ、忘れてた。そうだった……」

真彩「ママを奪われない様にね! ママの、元カレになびいてる心、取り戻さないと! 今なら間に合うよ?!」

智之「あぁ……うん、分かった」

真彩「じゃー、直ぐにママの心を引き戻せる方法、教えてあげようか?」
智之「えっ?……あぁ、はい、是非、教えて下さい。姫!」
と言って、真顔で、真彩に教えを乞う智之。

真彩「家に帰ったら、ママと一緒にお風呂に入る!」

智之「えっ?……」

真彩「ママがもし、もうお風呂に入ったって言ったら、『悪いけど背中流してくれないかな?』とか言って、甘える様にお願いする」

智之「はい」

真彩「で、バスタブで一緒にお湯に浸かりながら、ママの凝った肩を揉んであげるの。多分、右肩が凄く凝ってるはずだから」

智之「はい」
真彩「そして、お風呂から上がったら、ママの身体、拭いてあげて、そのまま手繋いでベッドに誘って、セックスする!」
智之「……」
智之、恥ずかしくて返事出来ず。

真彩「ママの喜ぶ事を、参ったって言われる位してあげるの。そしたら、自分の事をこんなに愛してくれてるんだ……って、身体で実感して、喜びを得るから。そうなったら、ママの心はパパに引き寄せられるから!」   

そう言うと、真彩、智之の顔を覗き込む様に見る。
智之「あぁ……はい、そうします……姫」
と言って、智之、頷く。

真彩「もしパパが勃起不全のEDだったとしても、指や口を使ってママを喜ばす方法はある訳だから!」

智之「あぁ……それは大丈夫だけど……分ったよ」

真彩「分かれば良し!」
と言って微笑む真彩。
真彩「あぁ、これ、悠斗がいつもしてくれるから、実証されてるから間違いないよ!」
と、笑顔で言う真彩。

智之「えっ?」

真彩「じゃー、パパ、ここでバイバイするね! お休み!」
と言って、真彩、智之の背中をポンと軽く叩く。
智之「あぁ、お休み。気を付けて帰れよ!」
真彩「うん。ママの事、大事にしてよね! ママを喜ばせてあげてね!」
と言って、笑顔で手を振る真彩。

真彩、智之と違う道を歩いて行く。

智之、真彩の後ろ姿を呆然と見ている。

しばらく見た後、急ぎ足で家に向かう智之。
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