第47話 どういう事?

文字数 3,331文字

【ハーモニー社・社長室】

朝、社長室では、真彩が真剣な顔で、PCに向かって入力作業をしている。
キーボードを打つのが早い真彩は、資料作りが早い。

しかし、明日の会議の資料作りに、少々、てこずっている。
早急に対処したい事が、真彩の頭の中に山ほどある。
部下達に、分かり易い言葉で伝える為の文章作りに苦労している。

隣のデスクでは、優衣がPC画面に釘付けになっている。

優衣が突然、驚いた顔をして、   
優衣「社長、大変です!」
と、言い出す。
優衣「店舗売り上げが大幅に伸びてるんですけど、有り得ない数字です。どういう事でしょう?」
真彩「えぇ? 一人当たりの客単価を上げれるメニュー開発進めただけで、そんな大幅に伸びないよね? あの、その要因調べて貰えます? 私、明日の経営会議に向けての資料作らないとダメなんで……案が有り過ぎてさぁー」
優衣「はい、直ぐに調べます!」    
と言って、優衣、PCに向かう。 

     ×    ×    ×  

数十分で、各部署に依頼していたデータが優衣の元に届く。
優衣、そのデータを見て、驚く。

優衣、真彩の顔を見る。

優衣「あのー、要因は、システム課始め、各部署に調べて貰う様に依頼したんですけど……」

真彩「どうでした?」
   
真彩、ちらっと優衣の顔を見る。

優衣「あのー、一番の要因は、簡単に言うと、全社員のSNS活用です」

真彩、思ってもみない優衣の言葉に、
真彩「はぁ?……」
となる。

真彩「全社員のSNS活用って、どういう事? 意味、分かんないんだけど……」

優衣「あぁ……実は、高橋勇也が、全社員に依頼したみたいです。会社の宣伝をSNS使って駆使する様にって……勝手に皆んなに指令したみたい……」

真彩「えぇ?……だって、皆んなが皆んなそんな事、出来ないでしょ? 年配の人なんて、スマホ、使いこなせてない人が多いのに……」

優衣「それが……私達が知らない間にスマホ教室開いて、システム課の人達や、そういう事に長けてる人達を集めて先生になって貰って、苦手な人達にインスタ、YouTube、ブログとか、色んなのを一人、最低一個以上出来る様に教えてたみたいです」

真彩「へーぇ……そう……なんだ……凄いなぁー……素晴らしいわ」

優衣「設備管理課の北川さんも、インスタ、始めてますよ! ビックリです」

真彩「えぇー? マジか?……スゴッ……」

優衣「もう、ビックリなんですけど……皆んな工夫して、宣伝してくれてます。そのお蔭で各店舗、集客力大幅アップです」

真彩「そうなの? 凄いね……」

優衣「あのー、これって、吉村社長との事で動画が拡散されたあの日からです……」

真彩「そっか……」
真彩、PCに入力中の指を止め、苦笑いする。

優衣「あぁ、それとMZC社の皆さんも協力して下さってますし、真正寺の檀家さん達が中心になって、社長の事、応援してくれてます……」

PCのデータを見ながら言う優衣。

真彩「えぇー? パパの会社の人達に、真正寺の檀家さん達も?……何て有難いの?!」

優衣「社長のお友達も凄い応援してくれてますねー……」

真彩「あぁ……誰とでも仲良くしてると得するね! 困った時は助け合える友達がいるって……有難いわ」

優衣「あぁ、勿論、無駄な経費削減も大きいですよ。それに、業務見直しは、かなり大きな益となってます」

真彩「うん……」

優衣「全店舗が色んなイベントして、大幅に利益上げてますからね……」

真彩「それは良かった……」

優衣「社長が自由にイベントやって良いって言ったから、皆んな、楽しんで手作りイベントやってますもんね。それを社員達がSNSにUPして盛り上げてるから、相乗効果ですね」
真彩「素晴らしい!」
優衣「あぁ、それに、社長目当ての人も多いです。社長のYouTubeチャンネル、面白いからって、登録者数どんどん増えてますしね……」

真彩「あぁ、髙橋勇也にまんまとはめられて、ユニバで踊らされたり、罰ゲームみたいな事やらされたりしたからなぁー。色々させられたけど、成果あった訳だ……」
優衣「ですね……」
(回想始め)

【ユニバーサル・スタジオ・ジャパン】

USJのダンサー達が躍る近くで、同じ様に笑顔で踊っている真彩。
優衣も真彩の横で、笑顔で一緒に踊っている。
その模様を、髙橋勇也、笑顔でカメラを回し、撮影している。

(回想終わり)


真彩「今度はランドで踊れって言われたけど、流石にそれは断ったよ」

優衣「ですね。東京ディズニーランドまで行って踊るなんてねー」

真彩「あぁ、でも、ロスのディズニーランドとかフロリダのディズニーワールドなら喜んで行くけどね」
と言って、微笑む真彩。

優衣「何だそれ?」

真彩「だって、何回行っても好きなんだもん。ロスとフロリダ」

優衣「あぁ、分かります。私もマーちゃん一家のバケーションに便乗させて貰った時、凄い楽しかったから‥‥‥」

真彩「うん。あの時はホント、楽しかったよね」

優衣「あっ、あと、ババ抜き大会も面白かったですね!」

真彩「あぁ、皆んなマジだったよね。只のババ抜きなのに。私を倒すのに皆んな真剣で、ホント、面白かったなぁー」

優衣「あんな遊びで大人が真剣になるなんてねー……」

真彩「ねぇー」

優衣「社長に勝てる人って……悠ちゃん位かな? あとじゃんけん大会も、社長に勝てる人っていなかったですもんね……」

真彩「あぁ、ああいうのは、その人の癖を見抜けるかどうかだから。人によってパターンあるからね。あと、この人はグーを出しそうとかチョキを出しそうって何となく分かるから……」

優衣「えっ?…‥‥という事は、私の癖も見抜いてたって事???」

真彩「勿論。優衣ちゃんは分かり易いよ。素直だから」

優衣「えぇー?……」

真彩「優衣ちゃんは大抵、始めにチョキ出して、その後パーだから……」

優衣「えぇー……そうなの? 全然、分かって無かった……」

真彩「まぁ、確率的なものかな? 優衣ちゃんはホント、分かり易くて素直な人だよ。ひねくれてる人って分かり難いから」
優衣「という事は、マーちゃんに勝つ事が出来る人は、ひねくれてる人って事か……」
真彩「(笑)……そうなるね。私自身もひねくれてるから人に勝つんだろうね」

と、自虐的な事を言って笑う真彩。


真彩と優衣、顔を見合わせ、笑う。


優衣、PC画面を見て、マウスを動かし、ネットサーフィンする。

優衣「あぁ、あと、人気ブロガーの『えだまめ』さん、バズってますけど、相変わらずウチのカフェの宣伝してくれてますし……何でだろう???」

真彩「えだまめねー。私の大好物ジャン」

優衣「あぁ、そうですね。普通、大好物って言ったら、お寿司、焼肉、フライドチキン、餃子とか言うのに、社長は、一番が枝豆、二番がカシューナッツですもんね?」

そう言って笑う優衣。

真彩「だね……」

優衣「えーっと? タイトル『恋は一方通行・僕は彼女が大好きだ!』ですって。毎日の様に高槻店で元カノへの惟いつぶやいてますね……」

真彩「えっ? 定年退職して暇を持て余してるおっちゃんじゃないの?」

優衣「あぁ、今、アーカイブの以前の投稿見てるんですけど、独身男性みたいですね。あぁ、でも、なりすましの可能性もありますけど……えーっと……<惟いを寄せてる彼女、実は元カノ。昔は相思相愛だったのに、今は無視され、まともに口を利いてくれない>……ですって……」

真彩「?……」

優衣「<今でも僕は彼女を愛しているのに>……ですって……」

真彩「早く新しい彼女作れば良いのに……」
と、えだまめの惟いを、切り捨てるかの様に言う真彩。

優衣「アーカイブ見て行くと、始めた頃は未練たらしい男ってレッテル貼られてたみたいですけど、段々、純粋なえだまめさんを応援するコメントが増えて、今、凄く注目浴びてます。皆んな、恋の行方がどうなるか気になるみたいです」

真彩「ふーん……皆んな、暇か? 恋なんて心が揺れ動いてしんどいのに。変な駆け引きしたりして、辛い想いもして、あーやだやだ。もう二度と恋なんてしたくないわ。エネルギー消耗するだけだもんね……」

優衣「あの、それって、とっくに四十路過ぎた人が言いそうな言葉なんですけど……社長は未だ若いのに……」

真彩「ですね。でも、心は四十歳過ぎてるんだ……」
と言って笑う真彩。
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