第4-7話 『黒点』の真価

文字数 438文字

エルは焼かれる身の痛みを感じながらも、意識を保っていた。それは不思議な光景だった。エル自身、何が起こっているか分からなかったのだから。

魔導石から発する業火は、『黒点』に吸い込まれ、エルの側には『黒点』を起点にして放射状に焼かれていない空間が発生していた。勿論それは、"ガダ二兄弟"からは見えなかった。


何も知らずに火球を眺める長兄ガガは、ニタリとその口を不敵に歪めると、次兄ダダの元に降りて、その身を抱きしめた。

「痛かったろう!でも、大丈夫だ。奴はこの通り死んだ」

ダダは意識朦朧としながらも、コクリと笑顔で頷いた。魔導石が効果を失い、火球が収束していくと、その球体からあぶれ、表皮が黒炭と化した木々が残火を燻らせながら姿を現す。そして、その中心に--。


「なぜ、お前が生きているんだア!」

ガガは感情のままに怒声を発した。エルは肩で息をしながら、その目を見開いた。自分の後方にはさっきと変わらぬ木々が生い茂り、暗闇を残す一方で、左右は残火を残した木々が葉を焼かれ、星空を見せていた。
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