第4-8話 正対と包帯
文字数 1,086文字
止めていた呼吸を再開して息遣いを荒くしながらも、エルは『黒点』を構え直した。よくは分からないが、『黒点』には導術-いや、もしかしたら導力かもしれないが-を吸収する力がある。それがこちらの差配により出来るのだと思わせられれば、こちらが一方的に導術を使える、戦闘に有利な状況となるため、彼らは撤退してくれるかも知れない。エルはそう期待し、あくまで強気に出てみるのだった。
ガガは口を半開きにして少し虚空を見た。その後すぐにダダの頭部に包帯を巻き出した。ダダが打ち付けたのは頭部ではなく、頭部に出血も見られない。何故包帯を巻き出したのかと困惑するエルにガガは冷静に告げる。
「俺の可愛い弟が見ての通りこんなひどい怪我をしたんだ。少し待っててくれ」
勿論、これはガガの本心ではない。ガガは、次にどう出るかを考えていた。
ガガらが受けた指令は、「空から降りてくる者を一人残らず殺せ。彼らは竜術を使うかも知れないので注意せよ」というものだった。その中に、「竜術を無効にする者」又は「竜術を無効にする剣」の存在は示唆されなかった。つまり、この情報は本部で持ち得ない"未確認情報"の可能性が高い。されば、この情報は"高値"で売れる。
その情報を売り終えてから、コイツを殺し、剣を奪う。さすれば、未確認情報の対価と剣を奪取した対価で、2回も臨時報酬が手に入る。問題は、情報を売りに行く間、コイツをどうやって尾行するかだが…。
ガガは、ダダの頭部を包帯で何も見えないほどグルグル巻きにしたうえで、両手を上げた。
「降参だ。俺の弟は戦闘に臨める状況じゃない。俺はコイツの世話をするから、お前はどこにでも消えるがいい」
エルは突然の事態に呆気にとられて、少しの間ガガをただ見つめてた。その間ピクリとも動かないガガを見てから、ふとナナイのことを思い出し、ナナイの気配を探したが、既にエルの把握できる距離にはいないようだった。
エルはひとまずナナイのグライダーの進行方向へと向かった。
エルが視界から消えたのを確認して、ガガはダダの頭をひっぱたいた。驚き跳ね起きたダダが、何も見えずに悶えるのを無視して、「お前はアイツを尾行しろ。俺は情報を売ってくる」と告げた。
状況を飲み込めず、パタパタと顔を覆っているものを手探るダダのことを、ガガは「何やってんだ、馬鹿」ともう一度ひっぱたいてから、包帯を短剣で切ってやった。そのとき、顔も合わせて切ってしまったが、ガガは痛がるダダに「動くなって言っただろうが」と叱るだけで、二人は準備が整うとそれぞれの役割のため別れるのだった。
もはや、二人ともジジのことなど覚えていないようだった。
ガガは口を半開きにして少し虚空を見た。その後すぐにダダの頭部に包帯を巻き出した。ダダが打ち付けたのは頭部ではなく、頭部に出血も見られない。何故包帯を巻き出したのかと困惑するエルにガガは冷静に告げる。
「俺の可愛い弟が見ての通りこんなひどい怪我をしたんだ。少し待っててくれ」
勿論、これはガガの本心ではない。ガガは、次にどう出るかを考えていた。
ガガらが受けた指令は、「空から降りてくる者を一人残らず殺せ。彼らは竜術を使うかも知れないので注意せよ」というものだった。その中に、「竜術を無効にする者」又は「竜術を無効にする剣」の存在は示唆されなかった。つまり、この情報は本部で持ち得ない"未確認情報"の可能性が高い。されば、この情報は"高値"で売れる。
その情報を売り終えてから、コイツを殺し、剣を奪う。さすれば、未確認情報の対価と剣を奪取した対価で、2回も臨時報酬が手に入る。問題は、情報を売りに行く間、コイツをどうやって尾行するかだが…。
ガガは、ダダの頭部を包帯で何も見えないほどグルグル巻きにしたうえで、両手を上げた。
「降参だ。俺の弟は戦闘に臨める状況じゃない。俺はコイツの世話をするから、お前はどこにでも消えるがいい」
エルは突然の事態に呆気にとられて、少しの間ガガをただ見つめてた。その間ピクリとも動かないガガを見てから、ふとナナイのことを思い出し、ナナイの気配を探したが、既にエルの把握できる距離にはいないようだった。
エルはひとまずナナイのグライダーの進行方向へと向かった。
エルが視界から消えたのを確認して、ガガはダダの頭をひっぱたいた。驚き跳ね起きたダダが、何も見えずに悶えるのを無視して、「お前はアイツを尾行しろ。俺は情報を売ってくる」と告げた。
状況を飲み込めず、パタパタと顔を覆っているものを手探るダダのことを、ガガは「何やってんだ、馬鹿」ともう一度ひっぱたいてから、包帯を短剣で切ってやった。そのとき、顔も合わせて切ってしまったが、ガガは痛がるダダに「動くなって言っただろうが」と叱るだけで、二人は準備が整うとそれぞれの役割のため別れるのだった。
もはや、二人ともジジのことなど覚えていないようだった。