第3-3話 有無を言わさず支配する夜の闇

文字数 962文字

森から登場した男の姿に誰もが魅入った。美しいが、人とは思えない冷たさを纏い、暗黒に染まったその男の姿に。しかし、すぐさまそんな沈黙を打ち破るように、先ほどまで対峙していたジェロが叫ぶ。

「ゴードン!て…」

手を貸せ、と言おうとしたその刹那、ゴードンの胸が血に染まった。オルナの発した氷の弾丸が虚なゴードンの胸を目にもとまらぬ速さで貫いたのだ。オルナは満足そうに口を歪めて、呆気に取られたジェロを見下す。

オルナはジェロの一言目を待っていた。敵の戦力を見定めるために。追い詰められたジェロは最も戦力となる者に呼びかけ、オルナの相手をさせるだろうと読み、敢えて発言の間を与えた。そして、この場で最も戦力となるのがゴードンと分かるや、ゴードンを始末し、それ以外の三人は人質として勘定した。

ゴードンが数人いた所で自分の敵ではない、とオルナは評価しており、それ以下の戦力の三人など虫と変わらない。しかし、ゴードンの事をオルナは気持ち悪い奴と思っていたため、いい機会だとこの機会に殺しておいた。気まぐれに殺されたゴードンの体が、地面にどさりと倒れ込んだ。


「さあ、初代国王よ。次の手はどうする?」
オルナはこのゲームを楽しんでいた。食うわけでもない小動物を狩る獅子と同じように。ただの戯れ。それ以上の価値はなく、獅子が飽きた瞬間に全員否応なく噛み殺される。それだけのことだった。

諦めかけたジェロの目にエルの姿がうつった。エルは立ち上がろうとしていた。自身の状態は正常ではなく、発汗や鼻血などを勘案してもおおよそ立ち上がれる状態にはない。だが、エルの目は死んでいなかった。限界を超えた朦朧とした意識の中でも、兄を強く睨みつけていた。ジェロは「馬鹿野郎」と鼻で笑った後、嬉しそうに話し出した。

「答え合わせといこうじゃねえか」
「ほう、時間稼ぎか?」
「ああ、くそったれ。その通りだよ」
「いいぞ、話してみろ」

オルナは木に体をもたれて、ジェロに指で話してみろと指図する。ジェロは「いけすかねえ、ガキだ」と苦笑いを浮かべながら、「千年前…」と話し出した。その話は、オルナではなく、エルに向けて語られた。どうかこの過ちを知り、そして同じ過ちを繰り返そうとする男を止めて欲しい。ジェロはエルに未来を託すために話す。


ジェロと竜、そしてリュゼの成り立ちの話が始まった。


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