第12話

文字数 911文字

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 前半終了が近づいた。スコアに動きはなかった。バルサもよく攻めてはいたが、モンドラゴンたちの好守に阻まれていた。
 神白は、依然として不思議な感覚に支配されていた。スタンスは、味方の攻撃時はディフェンスラインのわずかに後ろに移ってパス回しに参加、守備時もゴールから遠い位置、暁たちの十mほど後方に待機というものだった。
(俺の今のスタイルに名前を付けるなら「偽キーパー」ってところか。リスクの大きさはわかってる。だけどそれ以上にメリットはある! 俺が敵を引きつければ、パスコースが一つ空くんだ!)
 不安もあったが、ねじ伏せて堂々と振舞っていた。上手くいっているからか、監督、チームメイトからは異論は出ていなかった。
 ロスタイムに差し掛かった。敵がゆっくりとボールを回し、モンドラゴンがコート中央でボールを持った。
 バルサ8番が詰め寄った。モンドラゴン、右足で小さく跨ぎ左に出した。動きは速く、8番は従いていけない。
 プレッシャーを躱し、モンドラゴンはオルフィノに出した。だがアリウムは密着マークしている。
 オルフィノ、後ろを向いたままリフティングを開始。刹那、神白の頭にスパークが走った。すぐに身体の向きを変え、ゴールにダッシュを始める。
 ドンッ! 低い音が背後から聞こえた。神白は振り返らずに駆け続ける。
 視界をボールが縦断した。(それが水たまりに落ちるんだろ! わかってるっての!)神白の予想通り、ボールは水たまりに落下。急激に加速しゴールへと転がり行く。
(間に合う!)神白は強く信じて走る。そして頭から跳び込んだ。
 神白はボールを片手で止めた。ゴールラインぎりぎりだった。
「あっちゃー、防がれちゃったか。良いアイデアだと思ったんだけどな」
 オルフィノの声が耳に届いた。天真爛漫で無邪気な声色だった。
(モンドラゴンのプレーでインスピレーションを得たって訳かよ。恐ろしいほどのサッカー・センスだな。だけど、さっきのプレーで何かを掴んだ! お前の一人舞台もここまでだ、オルフィノ!)
 神白が勇ましく心中で叫ぶと、高らかにホイッスルが鳴った。バルサ、一点ビハインドで前半終了。
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